#4-5
放課後、今日は部内のチーム戦や個人戦に出る部員たちの練習に付き合うことになった。僕と美月はデュオ戦に出場するため、デュオに関する特訓ばかりしていたけど、他の形の試合を見ることで何か新たな気づきが得られるかもしれないと感じていた。
「瀬戸、ちょっとこっちで個人戦の相手してくれよ」
チーム戦を終えた先輩が、僕に声をかけてきた。普段ならデュオでの練習ばかりしていたから、こうやって他の部員たちと個別に練習するのは久しぶりだ。
「もちろんです、お願いします!」
僕は元気よく答え、先輩と対戦を始めることにした。相手は経験豊富な上に、戦術が上手いので、気を抜くとすぐにやられてしまう。そんな中で、個人戦ではひとつひとつの判断がいかに重要かが再確認できた。誰かに頼ることなく自分で考え、自分で行動することの難しさと面白さがある。
「やっぱり、個人戦って考えることが多いなぁ…」
先輩との試合を終えて、一息ついたときに美月が近づいてきた。
「どうだった?個人戦もやっぱり楽しい?」
「うん、楽しい。でも、デュオとは全然違うね。全て自分で決めなきゃいけないし、その分自由度も高いけど、その分プレッシャーも大きい」
「それだよね、個人戦って本当に自由だから、どれだけ相手の出方を読めるかが鍵になるよね。私もチーム戦やってて、それすごく感じた!」
美月も今日はチーム戦のメンバーと一緒に練習していたらしい。僕たちは、お互いの練習の経験を共有しながら、デュオに活かせることはないかと考え始めた。
帰り道、部活を終えて校門を出ると、秋の涼しい風が心地よかった。僕と美月は、今日の練習で感じたことを話し合いながら歩いていた。
「瀬戸くん、今日の個人戦から何か気づいたことある?」
美月が歩きながら、僕の顔を見て尋ねた。僕は少し考えてから答える。
「うん、個人戦では自分の動きが全てだから、どれだけ早く相手の動きを予測して対応できるかが重要だよね。でも、デュオ戦だとそういう予測を二人で共有できれば、もっと効率的に動けるかもしれない」
「そうそう!だから、デュオ戦では個人での判断に加えて、どれだけお互いの考えをシンクロさせられるかが重要になってくるってことだよね」
美月が嬉しそうに頷きながら言う。僕もその通りだと思った。個人戦とデュオ戦は同じゲームだけど、全く違う視点が必要だ。個人戦のスピーディーな判断力に加えて、デュオではさらに連携力が求められる。これが、僕たちがまだ足りていない部分だと感じた。
「じゃあ、僕たちももっと相手の動きを読むだけじゃなくて、お互いの考えを共有できるような戦術を作らないといけないね」
「そう!それで、私が思ったんだけど、例えば…」
美月は急に足を止めて、僕の前に立ちはだかった。目がキラキラと輝いている。彼女の中で、すでに何か新しいアイデアが浮かんでいるのだろう。
「例えば?」
僕が少し期待を込めて尋ねると、美月は自信満々に答えた。
「私が前線で敵を引き付けて、瀬戸くんが後ろからサポートするのは変わらないけど、もっと私が大胆に動くことで、敵を混乱させて、瀬戸くんの動きに気付かせないようにするの!」
「なるほど…つまり、美月が目立ちすぎることで僕が影に隠れるってこと?」
「そうそう!私が目立てば目立つほど、瀬戸くんは自由に動けるっていう作戦よ!」
「なんか、それって僕がサポート役に徹する感じだよね…」
「まあ、そういうことかな。でも、私が大胆に動けば動くほど、瀬戸くんが仕掛けるチャンスも増えるんだから!」
美月の作戦は、少し無茶にも思えるけど、理にかなっている。彼女の派手な動きで敵を混乱させ、その隙に僕が後ろから冷静に攻撃する。確かに、これがうまくいけば、僕たちのデュオは今まで以上に強力になるかもしれない。
「よし、それじゃあこの作戦を試してみよう!」
「うん!デュオ戦では、私たちふたりが一つのチームなんだから、お互いにサポートし合って勝つしかない!」
僕たちは、次の練習でこの新しい戦術を試すことを決めた。今日はただの帰り道だったけれど、二人で話し合ったことで、デュオとしての戦術がさらに煮詰まった気がする。これからの練習が楽しみだ。
「ねえ、瀬戸くん」
美月がふと立ち止まって、僕に向かって微笑んだ。
「これからも、もっともっと息を合わせていこうね。絶対に、全国大会に行くんだから!」
その言葉に僕も頷き返し、心の中で次の大きな挑戦に向けて燃え上がる決意を固めた。




