#3-10
「瀬戸くん、今日はゲームじゃないよ!親睦イベントだよ!」
美月がにこにこしながら言った瞬間、僕は一瞬耳を疑った。親睦イベント? ゲーム部なのに、ゲームしないってこと? 驚いている僕をよそに、部員たちはすでに準備万端で盛り上がっていた。
「瀬戸、今日は戦いじゃないからリラックスしろよ!」
松本くんがニヤリと笑い、石井先輩も
「今日は部内の絆を深めるための日だからね!」と優しく笑っている。
「で、具体的に何するの?」
僕は不安を隠しきれずに聞いた。
「カラオケとファミレスだよ!青春といえばこれしかないでしょ!」
美月がウキウキと説明する。
(おいおい、カラオケって……ゲーム部なのに音楽関係なのかよ)と内心でツッコミを入れつつも、ここまで盛り上がっている部員たちを前に断るわけにもいかない。
カラオケボックスに到着すると、早速部員たちは曲を選び始めた。誰もが遠慮することなくマイクを手にし、思い思いの曲を熱唱する。松本くんの選曲は、まさかのアニソン攻めだった。
「この曲は神曲だから!聞き逃すなよ!」
叫びながら、彼は魂を込めて歌い始めた。しかし、その高音部分がまるで窓ガラスを割るかのような声量で、僕は思わず耳を押さえる。
「松本くん、音程がすごいことになってるけど……」
僕が苦笑しながら突っ込むと、美月がクスクス笑いながら
「でも、松本くんの情熱がすごいよね!」
と同意してくれる。
続いて、石井先輩が選んだのは、しっとりとしたバラード曲だった。普段のゲームでの冷静さからは想像もつかないくらい、感情を込めて歌う彼の姿に、部員全員が思わず拍手を送る。
「石井先輩、やっぱり何やってもクールだなぁ……」
僕が感心していると、美月がマイクを握った。
「次は私の番!見ててね、瀬戸くん!」
美月はアップテンポなアイドルソングを選び、ノリノリで踊りながら歌い始める。普段のゲーム中の彼女とはまったく違う一面に、僕は思わず笑ってしまった。
「おお、美月、すごいな!」
僕が美月を褒めると、彼女は満面の笑みで
「ありがと!青春でしょ?」
と返してきた。
「いや、青春っていうよりアイドルかも……」と心の中で思いつつ、僕も少しずつカラオケの雰囲気に慣れていった。
その後、カラオケを堪能した僕たちは、ファミレスへと向かった。ファミレスのメニューを手に取ると、みんなが一斉に好きなものを頼み始めた。僕も負けじと、大きなハンバーグセットを注文。
「ファミレスってなんか部活の打ち上げって感じでいいよね!」
美月が言うと、他の部員たちも「そうだな、こういうのが青春だよな!」と盛り上がった。
料理が運ばれてくると、誰もが待ちきれずに食べ始め、会話も弾んだ。普段のゲーム中は、みんな真剣な顔つきでカードを出し合っているけど、こういう場ではなんだか別人のようにリラックスしている。
「瀬戸くん、今日はどうだった?」美月が僕に声をかけた。
「うん、なんだか不思議な感じ。ゲームしなくても、みんなとこうやって楽しめるんだなって」
僕が答えると、美月はニコッと笑った。
「そうだよ!部活ってゲームだけじゃなくて、こうやって一緒に楽しむことも大事なんだよ」
他の部員たちも「そうだよな、部活って仲間との時間が一番大事だよな!」と頷きながら、それぞれの料理を楽しんでいた。
松本くんがハンバーグをガツガツ食べながら、「次はバスケとか行くのもありじゃね?」と提案してきた。ゲーム部なのに、バスケってどういうこと? と思いつつ、意外と悪くないかもと思っている自分がいた。
食事を終えると、ファミレスのテーブルには笑顔と満足感が溢れていた。カラオケでの騒ぎもあり、腹がよじれるほど笑ったこともあって、みんなすっかり打ち解けている。
「今日は楽しかったなあ。こんな感じでまた集まろうよ!」
美月が提案すると、全員が大きく頷いた。
「そうだな、次はもっと大きなイベントやってもいいかもしれないな」
石井先輩が静かに言ったが、その言葉に全員が期待に満ちた顔をする。
僕も、なんだかんだでこの親睦イベントを心から楽しんでいた。部活って、ただゲームをするだけじゃない。こうやって仲間と過ごす時間も含めて、すごく特別なものなんだって、改めて実感した。
帰り道、美月がふとつぶやいた。
「ねぇ、瀬戸くん、今日楽しかった?」
「うん、すごく楽しかったよ。なんか、もっとみんなと一緒にいたいって思った」
僕の答えに、美月は満足そうに微笑んだ。
「それならよかった!これからももっと一緒に楽しもうね!」
その言葉に、僕も心の中で頷いた。青春はゲームだけじゃない。こうやって仲間と過ごす時間も、かけがえのないものなんだと気づいた日だった。
(そして、次はバスケ……いや、やっぱりゲームがいいかもな)




