#3-9
「瀬戸くん、どんな作戦考えついたの?」
部室に入った瞬間、美月がいつものように楽しそうに声をかけてくる。これまでの戦いで、美月や他の部員たちのアドバイスを受けてきた僕も、少しずつ成長してきた。だけど、今日は違う。僕は昨晩考えに考え抜いて、ついに自分だけの戦術を編み出したんだ。
「ふふ、今日は特別だよ。僕の新たな作戦、『瀬戸スペシャル』を披露する!」
そう言うと、美月は興味津々な顔で目を輝かせたが、他の部員たちは一瞬、顔を見合わせてニヤリと笑った。
「『瀬戸スペシャル』……? なんだか聞いただけで厨二病っぽいけど、大丈夫?」
「まあ、名前のインパクトは置いておいて、内容で驚かせるからさ!」
僕の「瀬戸スペシャル」は、これまでの戦いで学んだ様々な要素を取り入れた、オリジナルの作戦だ。松本くんの「ミスリード戦法」や、石井先輩の「奇襲作戦」など、他の部員たちの独特な戦術を少しずつ参考にしながら、自分なりにアレンジを加えたものだった。
作戦の核心は、まず序盤で相手を油断させることだ。最初はあえて弱いカードを使い、相手に「簡単に勝てそうだ」と思わせる。そこからが瀬戸スペシャルの真骨頂だ。相手が油断したところで、強力なカードを連続で出し、一気に形勢逆転を狙うのだ。
「最初に相手に優位を持たせるのがポイントなんだ。それで相手が油断して、最後の一手で一気に叩き込む。これが『瀬戸スペシャル』!」
僕が自信満々に説明すると、他の部員たちは興味深そうに聞いてくれたが、名前に関してはやっぱり失笑が漏れていた。
「いや、名前がな……ちょっと痛くない?」
「でも、内容は良さそうだよね。とりあえず試してみよう!」
実際のゲームが始まった。僕の相手は美月。彼女は普段から大胆な作戦を好むが、今回は瀬戸スペシャルの餌食になってもらうつもりだ。
序盤は予定通り、あえて弱めのカードを出して、相手に余裕を感じさせる。美月は最初から強気で攻めてきたが、僕はあえて受け身に徹した。
「瀬戸くん、本当に大丈夫? いくらなんでも弱いカードばかり出しすぎじゃない?」
「まあ、見てなよ」
美月は少し怪訝な顔をしていたが、そのまま攻め続けた。彼女の攻撃は次々と決まり、僕のライフポイントはどんどん減っていく。部員たちは「瀬戸くん、大丈夫か?」と心配そうな顔をしていたが、僕は焦らなかった。これは全て計画通りだ。
そして、ついにチャンスが訪れた。相手が全力で攻め切ったその瞬間、僕は一気に反撃に出る。
「ここからが『瀬戸スペシャル』だ!」
僕はこれまで隠していた強力なカードを連続で出し、逆転の一手を打つ。美月は驚いたように目を見開き、「え、嘘でしょ!」と叫んだ。最初の油断が響いて、美月は防御の準備をしていなかったのだ。
「これが僕の真骨頂だよ!」
相手のライフポイントはみるみる減り、ついに美月のカードがすべて無力化され、僕の勝利が決まった。
「やった! 『瀬戸スペシャル』、大成功だ!」
ゲームが終わると、部員たちは僕の作戦に驚きを隠せない様子だった。
「まさか、あの弱そうな序盤からこんな大逆転をするとは……」
「瀬戸くん、本当に成長したね! 驚いたよ!」
松本くんも石井先輩も、口々に僕の成長を認めてくれた。僕自身、初めて自分の戦術が効果を発揮したことに、心の中でガッツポーズをしていた。
しかし、そんな僕の喜びもつかの間、誰かがボソッと呟いた。
「でも……『瀬戸スペシャル』って名前だけは、ちょっと厨二っぽいよね?」
その一言を皮切りに、部室内は笑い声で包まれた。美月も「ふふっ、瀬戸くん、作戦はすごいけど、名前もうちょっと考えた方がいいかもね」とクスクス笑いながら言ってきた。
「う、うるさいな! いいんだよ、作戦が決まれば!」
僕はちょっと照れくさくなりながらも、笑いに包まれる部室の空気に安心していた。これも部員たちとの絆が深まった証拠だ。
「それじゃ、次の戦いではもっとかっこいい名前をつけてくれよ!」
石井先輩が冗談めかして言うと、僕は「うん、次はもっとかっこいいの考えるよ」と答えた。
でも、心の中ではこう思っていた。
(やっぱり『瀬戸スペシャル』が一番しっくりくるんだよなあ……)




