表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後サバイバルゲーム  作者: 柊れい
戦略の第一歩
16/49

#3-3


「次は誰と対戦する?」


美月に誘われ、僕は今日も部室に足を運んでいた。これまで美月との対戦が中心だったけれど、最近は他の部員とも対戦する機会が増え始めていた。彼らのことを今まであまり意識していなかったが、ゲームを通じて少しずつ距離が縮まりつつある。


「瀬戸くん、今日は山本さんと対戦してみようか?」


美月が笑顔でそう言うと、僕は部室の隅にいる山本さんに目を向けた。彼はいつも静かにゲームをしている、少し物静かな男子だ。あまり会話をしたことはないが、彼のプレイスタイルには独特の冷静さがあり、他の部員からも一目置かれているようだった。


「山本さん、お願いします」


そう声をかけると、山本さんは少し驚いたような表情を見せたが、すぐに笑みを浮かべてうなずいた。


「よろしく。瀬戸くん、どんな戦術を使うのか楽しみだ」


山本さんの声は静かで、どこか落ち着いた雰囲気があった。僕は少し緊張しながらも、彼との対戦に挑んだ。



ゲームが進むにつれ、僕は山本さんのプレイスタイルに驚かされることになる。彼は無駄な動きを一切せず、着実に資源を集め、必要なときに一気に攻勢をかけてくる。その冷静さと計算された動きに、僕は圧倒されそうになった。


「これが山本さんのやり方か……」


僕はつぶやきながら、どうにか自分なりの対策を考えようとする。しかし、彼の動きは予測しにくく、次々と手を打ってくる。美月から教わった戦術を活用してみるものの、山本さんの巧みなプレイに太刀打ちできなかった。


「さすがだな……」


ゲームが終わり、僕は素直に敗北を認めた。けれど、これまでのように単に負けるだけではなく、山本さんのプレイスタイルに感銘を受けた部分も多かった。


「瀬戸くん、なかなかいいプレイだったよ。特に序盤の資源管理は上手かった」


山本さんが静かに僕を褒めてくれた。今まであまり話したことがなかった彼との会話が、自然と生まれた瞬間だった。


「ありがとうございます。でも、やっぱりまだまだですね」


僕は少し照れながら答えた。山本さんとの対戦を通じて、自分の成長を感じる一方で、まだまだ学ぶべきことがたくさんあることも実感していた。



次の対戦相手は、高橋さん。彼はいつも賑やかで、ゲーム中も軽口を叩いて部員たちを笑わせている。そんな彼との対戦は、山本さんとの冷静な戦いとはまったく違ったものだった。


「瀬戸くん、気楽に行こうぜ!」


高橋さんはゲームの最中も終始リラックスしていて、何度も冗談を言いながら駒を動かしていた。しかし、彼のプレイには油断ならない部分があった。見た目には適当に動いているように見えるものの、その裏ではしっかりとした戦略が組み立てられているのだ。


「まさか、こんな軽い感じで勝てるとは……」


僕は内心驚きながらも、彼のユーモラスなプレイスタイルに引き込まれていた。ゲームを楽しむという意味では、高橋さんほど自由で気楽に取り組んでいる人はいないだろう。そんな彼と対戦することで、僕も少し肩の力を抜いて楽しむことができた。



ゲームを通じて、他の部員たちとの会話も自然と増えていった。これまであまり話す機会がなかった部員たちも、ゲームに夢中になると徐々に打ち解けてくれる。


「瀬戸くん、最近少しずつ上手くなってきたね」


ある日、部室で対戦相手がいないとき、他の部員が僕にそう話しかけてきた。今まではほとんど会話をしなかった彼とのやり取りが、なんだか嬉しかった。


「ありがとうございます。まだまだですけど、少しずつ慣れてきました」


僕は笑顔でそう答えた。部活動を始めた頃は、美月とのやり取りだけで精一杯だったが、今では他の部員とも自然に会話ができるようになっていた。ゲームを通じて人と繋がるという感覚が、僕にとって新鮮で楽しいものになり始めていた。



そして、何よりも驚いたのは、部員たちの個性的なプレイスタイルだ。山本さんの冷静で計算された動きや、高橋さんのユーモア溢れる戦術。それぞれが自分なりの楽しみ方を持っていて、ゲームへの情熱が感じられる。


「みんな、ほんとにゲームが好きなんだな……」


僕は心の中でそう思いながら、自分も少しずつゲームを楽しめるようになってきた自分に気づいた。勝つことだけが目的ではなく、ゲームそのものを楽しむことの大切さを感じ始めていた。


「次は誰と対戦する?」


美月が再び僕に声をかける。彼女の明るい笑顔を見ながら、僕は次の対戦に向けて心を整えた。


「誰とでも、楽しめればいいかな」


そう答えた僕の言葉には、少しずつ自信が混じり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ