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放課後サバイバルゲーム  作者: 柊れい
連戦連敗の日々
13/49

#2-10


「ここは……このカードを引いてみるか」


僕は自分の手元にあるカードをじっと見つめ、慎重に選びながら駒を動かした。美月からのアドバイスのおかげで、ほんの少しだけルールが頭に入ってきた。サバイバルゲームでは、資源の管理や駒の動かし方が勝負の分かれ目になる。美月に何度も言われたことを思い出しつつ、少しでも理にかなった選択をしようと心がけた。


だが、結局、僕はまたもや敗北した。


「惜しかったね、瀬戸くん。でも、その調子だよ!」


美月は相変わらず明るい笑顔で僕を励ましてくれる。いつものように彼女のその言葉を聞くと、少しはやる気が湧いてくる。しかし、まだまだ勝利は遠い。ほんの少しだけゲームの流れが見えるようになってきた気がするけれど、それでも勝つためには何が必要なのかが掴みきれない。


「……どうしてこんなに負け続けるんだろう」


僕は心の中でため息をついた。負けるたびに、自分の弱さが痛感される。勝ちたい気持ちはある。だけど、その気持ちが実際の結果に結びつかない。悔しさが募る一方で、まだどこかで「どうせ勝てない」という諦めが顔をのぞかせる。


それでも、少しだけ違うのは、美月のアドバイスが僕を無理に引っ張り上げようとしているわけではないことに気づき始めたことだ。彼女は単に僕に楽しんでほしいんだ。勝つことにこだわっているわけではなく、ゲームそのものを楽しむことの大切さを伝えようとしているんだ、と。



「ねえ、瀬戸くん。次の手は、ちょっと考えてみたらどう?」


美月が優しくアドバイスをくれる。これまではそのアドバイスが、プレッシャーにしか感じられなかったけれど、今は少し違う。彼女は本当に楽しんでゲームをしていて、その楽しさを僕にも共有したいだけなんだと思うと、彼女の言葉が少しだけ軽く感じられた。


「そうだな、考えてみるよ」


僕は自分でも驚くほど自然に返事をした。もちろん、勝つことは大事だけど、それ以上に、まずは楽しむことが先決なんじゃないか。美月が言いたいのは、そういうことなんだろう。勝利を目指すのはもちろんだけど、それ以上にプロセスを楽しむこと。そのことが少しだけ理解できてきた気がする。



次のゲームが始まった。今回も、僕はこれまでと同じサバイバルゲームに挑む。ルールを完全に把握しているわけではないが、少しずつ覚えてきたおかげで、無駄な動きは少なくなった。ゲームの序盤では、何を優先して動かすべきかが少し見えるようになってきた。


「この資源は後で使うために残しておくべきだよな……」


僕は自分なりに考え、資源を温存することに決めた。以前なら、無駄に消費していたところだ。少しでも戦略的に動こうとしている自分がいることに気づき、内心で少し驚いた。


だが、ゲームが進むにつれて、他のプレイヤーたちの動きが予想以上に速く、僕のペースは乱される。次々と繰り出される戦略に圧倒され、またしても僕は窮地に立たされていく。


「くそ……」


悔しさがこみ上げる。それでも、ただ適当に駒を動かすのではなく、少しでも考えて行動しようとする。美月は僕の隣で微笑みながら、「その調子!」と声をかけてくる。


正直なところ、勝つイメージはまだまったく湧かない。何度やっても同じように負け続けてきた僕にとって、勝利なんて遠い未来の話だ。それでも、今は以前よりも少しだけゲームを楽しめるようになっていることに気づいた。



ゲームが終わり、結果はまたしても敗北だった。けれども、今回はこれまでとは少し違った感覚が残った。勝てなかったことに対する悔しさはあるものの、なんというか、少しは自分なりにゲームを楽しめたような気がする。


「どうだった、瀬戸くん?」


美月が微笑みながら尋ねてくる。彼女の期待に応えられなかったことには変わりないが、僕の中には少しだけ達成感があった。


「まぁ、負けたけど、少しはマシになったかな」


僕は苦笑いしながら答えた。以前の僕なら、こんなふうに素直に答えることもできなかっただろう。だけど、今は少し違う。負け続けることに対するイライラはあるけれど、ゲームそのものを楽しむという感覚が少しだけわかり始めた。


「それでいいんだよ、瀬戸くん。ゲームは勝ち負けだけじゃないからね」


美月のその言葉に、僕は初めて本当の意味でうなずけた。彼女がずっと伝えようとしていたのは、このことなんだ。勝つことももちろん重要だけど、それ以上にゲームそのものを楽しむこと。その感覚を少しでも感じ取れるようになった僕は、次のゲームでは初めて、自分なりの戦略を試してみることに決めた。


「次は……ちょっと本気でやってみるよ」


そうつぶやく僕の声は、思ったよりも前向きな響きを持っていた。

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