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放課後サバイバルゲーム  作者: 柊れい
連戦連敗の日々
11/49

#2-8


「瀬戸くん!今日こそ勝てるよ!」


美月の声がいつもよりもさらに明るく響く。僕の耳には、彼女のその言葉がまるでプレッシャーの波のように押し寄せてくる。応援は嬉しいはずなのに、どうしてこうも重たく感じるんだろうか。勝ちたい、という気持ちは少しずつ芽生えてきたのに、それと比例するように、美月の期待が僕を押し潰しそうになっている。


「ありがとう、でも…」


そう返すのが精一杯だった。内心では「なぜそこまで僕を応援してくれるんだ?」という疑問が渦巻いているが、それを口に出すことはできない。美月は本気で僕を応援してくれているんだろう。でも、その気持ちに応えられない自分が、情けなく思えてくる。



「今日こそ、瀬戸くんの初勝利、見せてもらうからね!」


美月は元気いっぱいに言って、さっさとゲームの準備を進めていく。僕はその様子を見ながら、何とも言えない気持ちを抱えたまま、駒を手に取る。


これで何連敗目だろう。今では数えることすら面倒になっている。だけど、その度に美月は変わらず応援してくれて、毎回「次こそは勝てるよ!」と言ってくる。こんなに応援されているのに、一度も勝てない自分が嫌になってきた。どうして勝てないんだろう?どうして彼女の期待に応えられないんだ?



ゲームが始まると、美月は相変わらず楽しそうに僕の様子を見守っている。彼女の視線を感じるたびに、僕の手が無意識に震えた。普段なら気にならないはずの小さなプレッシャーが、今日はやけに重く感じる。心臓がドクドクと早鐘を打ち、何をすべきかが分からなくなってきた。


「さあ、次の一手はどうするの?」


美月が笑顔で問いかけてくる。彼女の無邪気な笑顔に隠れた期待が、僕の胸に刺さる。ここで何か大きなミスをしてしまったら、また負けてしまう。そう思うと、手が思うように動かない。


「……うーん、ちょっと考える」


なんとか返事をしたものの、頭の中は真っ白だ。駒をどこに動かせばいいのか、どんな戦略を立てればいいのか、まったく思い浮かばない。いつもなら、適当に動かしてしまうところだけど、今日は違う。負け続けることに少しイライラが募り始めている。



「焦らなくていいよ、ゆっくり考えて」


美月が優しく声をかけてくれる。その言葉はきっと僕を励ますためのものなんだろうけど、今は逆効果だ。焦らないようにと言われれば言われるほど、なぜか焦ってしまう。彼女の期待に応えたい、でもその期待が重たすぎて、どう動けばいいのか分からない。


「分かってるけど…」


そう呟くが、心の中は混乱していた。どうして美月はこんなに僕を応援してくれるんだろう?ただのクラスメイトにしては、少し過剰じゃないか?僕が負け続けているのが可哀想に見えるのか、それとも単純に楽しんでいるだけなのか。どちらにしても、彼女の期待が僕の心を揺さぶり続けている。



ゲームは終盤に差し掛かっていた。僕の資源はもう限界に近い。美月の駒は順調に進んでいて、僕にはどうしようもない状況だ。それでも、美月は「あと少しだよ!」と励まし続けている。


「どうしてそんなに楽しそうなんだ?」


僕はふと、心の中でそんなことを呟いた。美月はいつも楽しそうにゲームをしている。負けても勝っても、彼女は変わらずに笑っている。それが逆に、僕には不思議で仕方がなかった。負け続ける僕を見て、どうしてこんなに楽しめるんだろう?



「瀬戸くん、次の手、もうちょっと考えれば勝てるかもよ」


美月がまたしても軽やかに言ってくる。その声が、今では僕にとってはプレッシャーでしかない。勝ちたいとは思っているけれど、どうやってその一歩を踏み出せばいいのか分からない。彼女の期待に応えたいのに、それができない自分が情けない。


「……もう無理だよ」


そう、つい口に出してしまった。美月は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの笑顔を取り戻す。


「そんなことないよ!次は絶対に勝てるから、頑張って!」


その明るい声が、逆に僕の心をさらに追い詰める。なんでこんなに応援してくれるんだ?僕はただ、普通にゲームを楽しみたいだけなのに。だけど、その普通すらできていない自分に、どんどん落胆していく。



ゲームが終わり、またしても僕は敗北した。これで何連敗目か、もう数える気にもならない。美月は相変わらず「次があるよ」と励ましてくれるけど、その言葉に答える気力はなかった。勝ちたいと思う気持ちと、美月の期待に応えられない焦燥感が、僕の中でぐるぐると渦を巻いている。


「次…か」


僕は駒を片付けながら、ぼんやりと呟いた。次は勝てるかもしれない。そんな希望がある一方で、次も負けてしまうかもしれないという不安もある。美月の応援に応えられる日が、本当に来るのだろうか?その疑問が、僕の心の中で大きく膨らんでいく。


「次は勝てるさ」


そう自分に言い聞かせたが、その言葉はどこか虚ろに響いていた。

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