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放課後サバイバルゲーム  作者: 柊れい
連戦連敗の日々
10/49

#2-7


「そろそろ始めようか!」


いつものように美月が楽しそうに声をかけてくる。僕は、これまでと同じように駒を見つめ、無造作に手を伸ばすところだったが、今日だけは何かが違った。これまでの僕はただ流されて、特訓だなんだと参加させられていたけど、今日は少し違う気持ちが芽生えていた。


「勝ちたい」


それが頭に浮かんだのは、ほんの一瞬のことだった。美月の言葉が脳裏をよぎる。「もう少し考えれば勝てるかも」とか「大丈夫だよ、焦らずに」なんて、彼女はいつも軽やかに言ってくれるけど、その言葉の裏に何かが隠れている気がした。


「どうしたの?今日の瀬戸くん、なんだか違うね」


美月が僕を不思議そうに見ていた。自分でも気づいていなかったけど、確かにいつもの僕とは少し違うかもしれない。今までなら、ルールも理解できずに適当に動かして、結果的に負けるだけだった。だけど、今日の僕は「勝ちたい」と思っている。初めて、心からそう感じた。



「どうすれば勝てるんだろう…」


僕は駒を手に取りながら考えた。戦略を立てるためには、まず相手の動きを読む必要があるのだろう。美月はどう動くのか、どんな戦略を立てているのか。それを理解できれば、もしかしたら僕にもチャンスがあるかもしれない。


美月はいつも楽しそうにゲームをやっているが、ただの遊びで終わらせているわけではない。彼女は頭を使って、確実に勝利への道を進んでいる。そんな彼女の後ろ姿を見ながら、僕は改めて考える。



「まずは、資源管理だよね」


資源の使い方が、このゲームの鍵になることはわかっている。だが、どうやってそれを効果的に活用するのかは、いまだに全く分かっていない。いつも資源を無駄遣いして、ゲームの終盤には何も残らない状況が続いていた。


美月がヒントをくれた。


「資源は最初にどれだけ確保するかが大事なんだよ。最初から無駄遣いしないで、後半に使うために少しずつ貯めていくんだ」


なるほど、とは思うが、それをどう実行すればいいのかが問題だ。僕はいつも焦って資源を使いすぎてしまう。結果的に後半には何も残らず、あとは負けるのを待つだけになってしまうのだ。


「でも、どうやって勝てばいいのか…」


心の中で呟く。今まで、ただの遊びだと思っていたゲームに対して、初めて本気で向き合っている自分がいることに気づいた。勝ちたいと思うのは、単なる意地なのかもしれない。でも、それがどこか心地よく感じる。



ゲームが始まると、僕は慎重に駒を動かし、資源を管理するように心がけた。美月の言葉を思い出しながら、何度も考えを巡らせる。焦ってはいけない。資源を無駄にしないように、少しずつ進めていく。


「瀬戸くん、今日はいつもより慎重だね」


美月が微笑んで言った。彼女の声が、今はそれほど重圧に感じない。むしろ、彼女の期待に応えたいという気持ちが強くなっている。いつも無理やり連れ出されていた僕だけど、今日は違う。自分の意思でここにいる。自分の意思で勝ちにいこうとしている。



だが、気持ちだけではどうにもならない瞬間がやってきた。終盤になって、僕の持っていた資源がやはり足りなくなりそうな気配が見えてきた。冷や汗が滲む。


「どうすれば…」


もう少し考えれば、勝てるかもしれない。そんなことを何度も思い浮かべながら、焦りが募る。相手の動きが読めない。戦略が定まらない。どうしたらこの状況を打開できるのか。



「瀬戸くん、焦らずにね」


美月が優しく声をかけてくれる。その言葉は、今では少しだけ勇気をくれるものになっていた。僕は一息つき、駒をじっと見つめた。


「もう少し考えてみよう」


そう自分に言い聞かせ、僕は最後の一手を慎重に選ぶことにした。勝ちたいという気持ちが、初めて本気で沸き上がっている。負け続けた日々の中で、勝つことの楽しさをまだ知らない僕だったけど、今日は違う。少しだけ光が見えた気がする。



ゲームが終わると、結果はまたしても敗北だった。でも、今日は何かが違う。


「惜しかったね!」


美月はいつものように明るく励ましてくれるが、今日はそれが心に響いた。負けたことが悔しいけど、もう少しで勝てそうな手応えがあったのだ。


「次は、もう少しうまくやれる気がする…」


僕はそう自分に言い聞かせた。勝ちたい、という気持ちが強くなる一方で、まだそれを実現するための道は遠い。でも、今日の負けは、少しだけ前進した証のように感じられた。


「よし、次も頑張ろう!」


僕は駒を片付けながら、次のゲームに向けて気持ちを整えた。勝ち負けだけじゃなく、楽しむことも大事だと、少しずつ思えるようになってきたからだ。

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