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第三話 腹黒冒険者ギルドマスター!

ベゴーニャとアーネ・ゾーマの婚約を祝う祝賀会には、ギルド関係者を中心に三十人を超える数の人達が集まった。

其の中にはズレク冒険者ギルドマスター・エリカ、ズレク守備隊隊長メダルド、ズレク商業ギルドサブマスター・コランタン等々、領都ズレクを代表する名士達も参加してベゴーニャを祝福した。

参加者一同を驚かせたのはバルドストン辺境領領主の第四夫人ボドー・バルドストンと、第七子のフィー・バルドストン令嬢が突然姿を見せベゴーニャに祝福の言葉を贈った事だった。


「初めてお目に掛かります、ベゴーニャ。突然の来訪、お許しくださいね。私はバルドストン辺境伯第四夫人のボドーと言います。後ろに控えるのが娘のフィーです。アーネ・ゾーマ嬢との婚約、おめでとうございます」

「・・・あ、あのぉ・・・・、御丁寧にありがとうございます・・・・・・・」

「ベゴーニャ!、ボドー様とフィー様を中へ御案内しろ!」

「ひゃい!!」


上級貴族の二人を玄関先に立たせたまま対応するのは拙いと判断した、ギルマス・エリカの怒鳴り声に促され慌てて二人を招き入れるベゴーニャ。

結婚しても不特定多数と関係を持つのが当たり前のバルドストン辺境伯や、三人の夫人達の乱れた関係を十年来見て来たボドーからすると、筋を通して生きて来たベゴーニャを心の底から尊敬していた。

母親ボドーの教育と躾を受けて育った娘フィーも、六人の兄や姉とは真逆の生き方をして来た。

ダンス、マナー、一般教養、剣術、弓術、護身術、魔導学、数学等々の習得に励み、召喚勇者が持ち込んだアラビア数字とゼロの概念の普及に大きな役割を果たす。

クアドラ王国を代表する才女の出現に目を光らす商業ギルドサブマスター・コランタンと、褐色肌を持つ獣人族出身のボドーを視姦しながら口角を吊り上げるギルマス・エリカ。


「(ベゴーニャも終の相手を見つけた事だから、私もレズハーレムでも創るか。ボドーは前々から味見したいと狙っていた獲物だ、バルドストンのような肥溜めに居て良い女では無い。贅を尽くすしか能の無い腐った夫人達、万能感に支配され勘違い甚だしい汚物の息子と娘達。泥船から降ろさないと・・・)」


祝賀会が開かれていた同時刻、領都ズレクに在る某高級レストランを借り切って、百人を超える屈強な男達が決起集会を開いていた。

前方に用意された主賓席には我儘な顔付の貴族青年三人が座り、其の周りを護衛の騎士と思われる十人が陣取り囲んでいた。


「我々が所有するはずだったズレクの美神・肉奴隷ベゴーニャを奪い取った、悪魔の女アーネ・ゾーマに対する報復行動を始めたいと思うのだが?」

「ヴィクター様、アーネ・ゾーマは王都ログザーク冒険者ギルド時代A3ランクに登録されていた化物です、今此の部屋に集まった全員で襲い掛かっても返り討ちにされる可能性が高いかと・・・」

「我々が手を汚す必要は無い、そうだろう?マイルズ、ラッセル(ニヤニヤ)」

「兄上、A3ランク冒険者アーネ・ゾーマと言えども、所詮は肉欲に支配される愚かな女です。禁忌の媚薬さえ撃ち込んでしまえば、私達の高貴な美味い棒を咥え放さない牝犬に成り下がりましょう(ニヤニヤ)」

「ヴィクター兄様、辺境領を守護するバルドストン騎士団の猛者達を使えば、冒険者風情に後れを取る事など有り得ません!」

「「「「「ヴィクター様主催の牝犬調教品評会に所属するバルドストン騎士団員一同、悪魔の女アーネ・ゾーマの身柄を確保して品評会に献上する事を此処に約束致します!」」」」」

「「「「「オオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」」」」」

「会員の皆、安心しろ!我がバルドストン騎士団だけで無く、シミオン盗賊団副長の一人ヒューゴも参加する事に成っている!」

「「「「「マリアージュの大森林を支配するクアドラ王国最大の犯罪者集団、シミオン盗賊団の副長ヒューゴも牝犬調教品評会に登録していたのか!」」」」」

「ヒューゴは戦闘力で言えば、団長シミオン以上の実力を持った男だ。盗賊に落ちぶれる前は、A3ランクに登録されていた怪物冒険者だからな。同じA3ランク冒険者でも男と女では、体格差と筋力差で勝負は見えている。違うかな?諸君(ニヤニヤ)」

「「「「「未来の領主ヴィクター・ヴァン・バルドストン様の言葉に、一切の間違いは存在しません!露出狂アーネ・ゾーマも我々が調教する牝犬達の、末席に加わる未来しか想像出来ません!」」」」」


場面は戻って新緑の芽吹き亭、祝賀会も終盤に差し掛かり参加者全員が歓談を楽しんでいた時、アーネが守備隊隊長メダルドに真剣な表情で話し掛ける。

話の内容は領都ズレクに向かってマリアージュの大森林を馬車で移動している時、九十人近い数の犯罪者集団に囲まれ身柄を拘束されそうに成った事。

其処で自分達の肉奴隷として死ぬまで飼ってやるから、誠心誠意自分達に奉仕しろと迫れた事。

数人の汚らしい男達が胸や下腹部を中心に身体を触って来たので、気持ち悪い感情が爆発して男達全員を其の場で皆殺しにした事。

皆殺しにした男達の頭をインベントリーに納めているので、出来れば素性を調べて教えて欲しいとアーネから頼まれる。


「室内では拙いので、表で確認しよう。数は九十かな?」

「隠れ家に居た三十名も追加で皆殺しにしたので、合計百二十に成ります」

「メダルド、余興だ!皆にも見せてやれ」

「エリカ君、気分の良いもでは・・・」

「娯楽に飢えてる連中だ。問題無い!」

「メダルド隊長、私も見たいのぉ」

「「「「「隊長、私達も見たいです。シミオン盗賊団の生首!!」」」」」

「・・・アーネ君、・・・頼む」

「了解しました。中庭に並べます」


新緑の芽吹き亭の中庭に並べられる百二十人の犯罪者の頭、其れを見て容姿の品評会を始める祝賀会の参加者達。

此の時代、犯罪者に対する公開拷問や公開死刑は超人気の娯楽で、老若女男問わず告知が有ると挙って見学に行くのが普通だった。

此の犯罪者は美形だから勿体無いとか、全体的に厳めしいおっさんが多いから残念とか、生首を前に祝賀会参加者の女性陣が盛り上がってる中、ギルマス・エリカと守備隊隊長メダルドの二人の顔だけ厳しい表情を見せていた。


「メダルド、此奴ら!」

「間違い無い、シミオン盗賊団!」


隊長メダルドのシミオン盗賊団という言葉が聞こえた途端、品評会で盛り上がっていた参加者達の動きが止まった。

マリアージュの大森林を拠点に十数年、略奪、殺人、誘拐等々を繰り返して来た、クアドラ王国内最大勢力を誇る犯罪者集団。

団長シミオンが元A2ランク冒険者、一番隊隊長ライネルがAランク冒険者、二番隊隊長ランドルがB3ランク傭兵、三番隊隊長ヒューゴがA3ランク冒険者と言った実力者で固められていたので、王都ログザークから討伐部隊が派遣されても全て返り討ちにしていた。


「アーネ君、君一人で倒したのかね?」

「一人で倒しました。身体を触られて怒りが爆発しまして」

「ハハハハ・・・(アーネ君は本当にA3ランクなのか?)」

「商業ギルドに取って最大の障害だった盗賊団を、マリアージュの大森林から一掃してくれるとは!!アーネ君の勇気有る行動に、商業ギルドを代表して礼を言う」

「お役に立てて幸いです」

「王都ログザーク冒険者ギルドで、A3ランク認定されていた猛者だからなアーネは(レダウヌ戦役の件はガルシア爺が消したから、A3ランク以前は追えない筈だ)」

「エリカさん、盗賊団の隠れ家を掃討している途中で、此の書類の束を見つけたのですが?」

「見せてみろ」


アーネから厚さ三センチを超える書類の束を受け取るギルマス・エリカ、書類に目を通していく内に段々と顔付が険しく成り最後は怒りを隠さなかった。


「アーネ、此の書類は預かるぞ!(冒険者ギルドだけで対応するのは拙い、守備隊と商業ギルドも巻き込んで攻撃先を分散させるか。相手が悪過ぎる・・・)」

「構いません、お願いします」

「メダルド、目障りな頭をアーネに運ばせるから、隊舎の方で処分してくれ!」

「賞金首の頭以外は、焼却処分で構わないな?」

「ああ、雑魚の頭に価値は無いからな。其れから明後日マリアージュの大森林に向かうぞ」

「残党狩りか?」

「シミオン盗賊団に所属してる構成員の正確な数が判らない、一応アーネの目を逃れた残党が居ると仮定して掃討作戦を行う。守備隊、冒険者ギルド合同で行いたい。其れで構わないな?」

「守備隊は構わないが、騎士団に連絡は入れないのか?」

「平民を見下す糞共は、居るだけ邪魔だ!」

「激しく同意だな。コランタン君、商業ギルドから馬車を出してくれないか?」

「馬車は構わないが、御者は勘弁してくれ」

「コランタン、商業ギルド専属の傭兵団が居るだろう、そいつ等に御者をやらせろ。代わりに冒険者ギルドは戦利品を受け取る権利を放棄する」

「商業ギルドと守備隊の山分けで良いのか?」

「其れで構わない。商業ギルド専属傭兵団は猛者揃いだ、冒険者ギルドで勝てるのは現状アーネ一人だけだ。明後日の掃討作戦、失敗は絶対に許されないからな」


シミオン盗賊団残党掃討作戦の話が出た事によって、祝賀会は御開きと成り参加者達が帰宅して行った。

アーネは隊長メダルドと守備隊隊舎に向かい、雑魚の頭を上級魔法で灰にする作業を頼まれる。

コランタンは商業ギルドに戻り馬車と傭兵団の手配、並行してシミオン盗賊団が冒険者アーネ・ゾーマによって、討伐されたニュースを領都ズレク中に流す準備を始める。

ギルマス・エリカは冒険者ギルドに戻り、C及びDランク冒険者達に強制依頼を掛ける手続きを終わらせ、新緑の芽吹き亭に戻り獲物を堕とす行動を始めていた。


百個を超える頭を灰に返したアーネは、新緑の芽吹き亭に帰宅後ベゴーニャに甘えて、翌朝まで姿を見せなかった。


アーネを取り巻くキャラクター達。

左からベゴーニャの娘ドロテア、ベゴーニャ、腹黒い冒険者ギルドマスター・エリカ、辺境伯第四夫人ボドー、ボドーの娘フィー。



挿絵(By みてみん)









































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