表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
溺愛魔王と魔王子リアムと伝説の傅  作者: セイバン・キイタ
6/23

2.トーリ、グレン

 嵐の宮の庭で。


 ぐしゃっ!!


 丸太の様に巨大な足が、弟を押し潰した。


 十メートルはあろうかという巨躯の持ち主は、全身灰色の肌で一切の毛が無い。顔に大きな黒い一つ目と、口しかない為、常に笑っているように見えた。


 背中を丸めた巨人の肩に乗るグレンは、にやりと微笑む。その背後に、大きな月が輝いている。


 巨人は嵐の宮の庭で放し飼いにされている。ここに迷い込んだ者は巨人の餌となる。


 巨人はグレンの下僕だ。頭の後ろに打ち込まれている呪が刻まれた銀色の楔が、それを表していた。巨人が足を退けると、人型の、緑色の血に染まった肉塊が現れた。弟ウォルグの変わり果てた姿。この結果に、何度でも笑いが込み上げる。


「やったな」

少し離れた所で見ていた兄のトーリは、満足気にグレンに言った。二人とも、ぱっと見の姿は人間の少年と変わらない。


 紅い目のトーリ。

 蒼い目のグレン。

 

 二人は腹違いの兄弟だ。

 魔王の城にいる子供たちは、皆、種族の違う母親から生まれている。

 トーリの母は、火焔族。

 グレンの母は、嵐狼族。

 各々一族を代表する女が、魔王ヴァルディシオンに嫁いでいた。魔王の力を得る為である。

 自分の一族の繁栄のために、彼らは一つ所にいる事になるが、放っておけば争いになる。この為、魔王の城は、子供の数毎、つまり種族毎に宮が用意されていた。それらを分かつように深い森や広い庭がある。但し全ての宮は渡り廊下で繋がっている。少し小高い山の上に立つ魔王の城は、必然的に町の様に広大になる。


 それでも魔王には、彼らの力が必要だし、同じ目的の為なら連帯もする。


 トーリとグレンは、同じ目的の為に連帯していた。

 他の兄弟を殺し、自分たちが、次の魔王になる。

 魔王になる為には、最後は父、つまり今の魔王を殺さなければならない。それは無理だ。魔王は兎に角強い。今の自分たちでは一捻りで殺られてしまう。

 だが、ほぼ同列の兄弟たちなら、殺れる。力の差がない内に、ライバルにはさっさと消えてもらう。


「そろそろ、()()()はどうだ?」

巨人から、ひらりと飛び降りて、グレンが言った。巨人は、這い蹲って潰れたウォルグを食べ始める。

 トーリは、巨人の貪り食う様子を見て、顔を歪める。

「よくそんなモン食えるな」

 巨人は、構わずガツガツ食べている。

「こいつは雑食だ。なんでも食うよ」

グレンが言った。

 

()()()を食わせるか・・」

トーリが、呟いた。

 グレンが笑った。

「ははっ。()()()まだ小せえし、食うとこねえぞ」

「労力に見合わないか?どうせ何でも食うんだろ?」

「傍の二人も厄介だ」

「そうだな。どう引き離し連れ出すか・・」


 トーリと、グレンは、ほぼ同時に過去のある出来事を脳裏に浮かべた。


 リアムの母親を魔王の逆鱗に触れない様、事故に見せかけて殺した。その時を。


 母親は死んだ。だが、母親の腹の中にいた息子は生きていた。それを知った時、まさかと思った。

 どうして助かったのか。母体が死ねば、何もできない中の子供も死ぬはずだ。なのに何故。


 魔王が、あのガキを助けたからだ。

 あの魔王は、何故、奴隷の女に子供を作らせたのか。その子供を助けたのか。

 そして、あのガキにだけ、特別に傅と乳母が付けられた。傅は、相当強いと聞いている。

 こんな贔屓が許されるのか?

 あいつが奴隷の人間の子供というだけでまず目障りだが、あいつに対する贔屓も許せない。あの魔王はいつか必ずぶち殺す。その前にあのガキだが。傍の傅と乳母をどう攻略するか。


「なあ。俺に良い考えがある」

グレンが、にやりとして言った。

 トーリは、嫌な予感しかしなかったが、黙っていた。馬鹿な方が使いやすい。まあ、やると言うのなら、やらせてみよう。

「なんだ?」

トーリは微笑んだ。

「まあ、任せろ」

グレンは、そう言って、にたりとした。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ