9:飛脚鳥②
※本作に登場する鳥知識はフィクションです。
バージェスの馬鹿に煽られて、ついつい飛脚鳥の頭の悪さを語ってしまった。
結果、バージェスだけでなく、アンジェの気まで害してしまったかもしれない。
飛脚鳥の頭の悪さにも良いところはある。
俺はアンジェの機嫌を取るために話の方向性を変えた
「飛脚鳥の頭の悪さは人間にとって都合がいいことも多いんだ」
「だから悪くないといっている!」
物わかりの悪いバージェスが大声でなにか言っているが無視して話を続ける。
「人が乗っても背中に何かが乗っていることをすぐに忘れるから暴れない。暴れてもすぐ大人しくなる。
尻を叩けば走り出し、傾ければ傾いた方向に曲がる。頭を引けば止まる。言うことを聞くのは知性ではなく、ただの本能なんだよ。」
「私の愛鳥は癖のあるやつで乗りこなすのが大変だったんだ。時間をかけて息が合うようになってきたんだが…」
アンジェのかわいい問に俺は答える。
「うん。アンジェがその癖のある鳥に合わせられるようになっただけだね。剣にも癖のあるものはあるでしょ。時間をかけて使い方に慣れることはあると思うけど、それは別に剣が使用者にあわせてるわけじゃないよね?」
「ぐっ、そうか…」
アンジェが肩を落として気落ちする。心なしかバージェスの顔も引きつっている。
「飛脚鳥は実に人間にとって都合の良い生物だよ。回復力と免疫力が高いから骨まで見える怪我を負ってもすぐ回復するし、免疫力によって感染症にかかることもない。飛脚鳥が病気で死ぬことはまずない。食用旺盛、何でも食べるし繁殖力も高い。理想的な経済動物だ。」
俺は心から飛脚鳥を称賛した
「ならば飛脚鳥の飼育にバードテイマーの天職はいらんな!?」
バージェスが何故か勝ち誇る。
「まあね。バードテイマーの天職はあったほうが便利で有利なだけだよ。でもそれはどの天職もそうだろ」
アンジェの天職・聖騎士やバージェスの天職・重騎士は戦闘で効力を発揮する天職だが、別に天職がなくても戦闘することはできるだろう。
だがバージェスの意図するところは違ったようだ。
「飛脚鳥は騎士の友だ。その繁殖・育成・管理は我々軍閥こそがふさわしい!我々こそが飛脚鳥の最大の理解者だ」
「何がいいたいの?」
「我が派閥も飛脚鳥の繁殖に着手した!」
「え?管理できるの?」
俺は思わず真顔で問う。
「着手だけではない!すでに成功したと報告を受けている!」
「だから管理できるのかって。話聞けよ」
「負け惜しみか!?貴様がその天職にあぐらをかいていられるのも今のうちだ!」
俺の話を聞かず高笑いを始めたバージェス。その背後から飛脚鳥に乗ってこちらに走り寄ってくる人影が見えた。その人物は叫んだ。
「バージェス様!大変です!飛脚鳥が増えすぎて飼育崩壊しました」
「ふぁ?」
バージェスが間抜けな声を漏らす。
「あまつさえ脱走し、大量の飛脚鳥が野に放たれました!周辺の畑が根こそぎ食い荒らされてます。このままでは飢饉です!」
バージェスは混乱して言葉が出ないようだ。
「バージェス様、増えすぎ、逃亡した飛脚鳥の討伐にご協力を」
「……」
答えあぐねるバージェスに俺は助言してやった。
「何黙ってんの?ほら、早く友を討伐してきなよ。飛脚鳥の最大の理解者さんさあ」
「貴様ああああああああ」
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