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7:湖畔

 俺とアンジェは湖畔に到着した。


 木々の隙間から日が差し込み、水面がきらきらと揺蕩う。幻想的な雰囲気がある。


「おお!きれいな場所だな」


 アンジェが感嘆の声を上げる。


 俺はすかさず言った。


「ふっ。君の方が綺麗だよ」


「……」


「なんか言えよ!恥ずかしいんだけど!」


「いや、すまん。どういうつもりかと思ってな」


「お前な!男の子の純情をなんだと思ってんだ!童貞はこういうのが不慣れなんだぞ!あーあ!俺の勇気が凹んじまったよ!この責任は取ってくれるんでしょうか!?」


「急に大きな声を出すなびっくりするだろう。さっきは悪かった!だがお前もお前だろう!本気で言うか、冗談で言うかはっきりしろ!変に恥じらうからこっちも困るんだ!」


 ぐっ。これ遠回しな言い方でキモいって言われてない?


 俺は羞恥にかられた。話題の転換を図ろうにもテンパってセリフが出てこない。なので黙って成り行きを見守る。幸いすぐにアンジェが口を開いてくれた。


「ん?おいトリガー、あれはなんだ?」


「鳥の巣だけど」


「それはわかってる。あの巣の周りのきれいなピンクの模様について聞いている」


 アンジェが指し示す先には鳥の巣があった。だがそれだけならアンジェは聞いてこない。特徴的なのはその巣の周りだ。巣を囲むように放射線状にピンクの絵の具のようなものが模様を描いているように見える。


「…怒らない?」


 ここに来るまでの道中、俺がウンチクを披露してやったらキレたからな。念の為確認する。


「こんなことで怒らん」


「さっき怒ったじゃん」


 じろりと睨まれ慌ててアンジェの質問に答える。


「鳥の糞だよ」


「…鳥の糞?」


「そう。鳥の糞。湖畔ペンギンっていう鳥の巣なんだけど、巣を汚したくないから巣から外に向かって糞をビームみたいに放出するんだ。」


「鳥の糞は白いだろう?あの模様はピンクだ」


「鳥の糞もある程度食べ物の影響を受けるよ。このへんは赤い実が多いから、その色素だね」


「そうか」


「だからアンジェは鳥の糞を綺麗って言ってたことになるね」


「一言多い!」


 俺は頭を叩かれた。


「怒らないって言ったじゃん」


「今のはお前が悪い!」


 叩かれた部位をさすっていると、鳥の巣の主が遠方に見えた。


「あれがこの巣の主湖畔ペンギンだよ。同じ種族って意味ね」


「数が結構いるな。よちよち歩きでかわいいじゃないか」


 湖畔ペンギンは泳ぐのに特化している。代わりに空が飛べず、歩くのも苦手だ。その挙動がアンジェには可愛く写ったようだ。


「お!見ろ!水面を覗き込んでいる!かわいいな!」


「ああ。天敵が居ないか確認してるんだよ。蛇とかオオトカゲとか」


 俺がそういった直後、水面を覗き込んでいた個体が群れの他の個体に湖に突き落とされた。


「突き落とされたが?」


「湖畔ペンギンは仲間を突き落として安全確認をしてるんだ。ほら、落ちたペンギンに特に何もないのを見て、次々入水していくでしょ」


「可愛い顔してなんて奴らだ!というか、なぜ水面を覗き込んだ!?」


「さあ?あいつら視力悪いから覗き込んだところであまり意味ないはずだけど。本能?まあ一匹の犠牲で群れを危険から守れるんだからいいんじゃない?」


 アンジェがなおも納得し難い顔をしているので人間社会にたとえて教えて上げる。


「騎士団と同じだよ。一人はみんなのためにってさ」


 みんな大好きだよね。ワンフォーオールってやつ。


「断じて違う」


 怒られてしまった。


「まったく!この森の生物は一体どうなってるんだ!どいつもこいつも!」


「そういう生態なんだから仕方ないじゃん。人の想像と実体が違う生物なんてこの湖畔の生物に限ったことじゃないし」


「ぐぬぬぬ」


 俺がいきり立つアンジェをたしなめる。アンジェも自身が無茶言っているのはわかっているようですぐに大人しくなる。


「お!トリガーあそこに鴨がいるぞ!小さな池とかでよく見るが、やはり湖にもいるのだな!」


 アンジェの視線の先には深緑色の鴨の群れがいる。


「ん?先程から不自然に顔を背ける鴨がいるが、あれは?」


「ん?ああ雄の求愛行動だね。雌が通るとブリッジみたいに天を仰ぐんだ」


「ふはっ、不器用な求愛行動だな!まるでどこかの誰かみたいだ」


「誰のことかな?」


「お前のことだが?」


 ニヤリと笑うアンジェの言葉に俺は天を仰いだ。

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