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34:

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。


 オウムが汚い言葉を覚えてしまっていた事件から数日経ち、そういいえば占いババアからオウムの件について報告が来ていないことについてふと、思い出した。


「ところで占いババアは何してる!?連絡を受けてないぞ!」


「テスカ様もお忙しいのだろう」


 俺の怒りの咆哮にアンジェが答えた。


「いや、あいつも自分でこの仕事してないだろ!さすがに人に任せてるはず…」


「あの方は人を信用なさらないから…、壺もご自身で露店売りしてたし」


 そういえばそうだった。青い鳥の商売を持ちかけられた時も占いババアは自ら露店に座り、詐欺まがいの幸福の壺を売っていた。


 あんな死にぞこないでも要職者だ。護衛の一人もいていいはずだが、少なくとも俺達の視界には入らなかった。


「やはり権力の中枢近くに長年いると人を信じられなくなるんだな」


「ノーコメントだ。というかそういうことを気軽に口にするな!」


 などとアンジェと会話をしていると、中断する声が屋敷の広間に響いた。


「トリガー!シタガウル!」


 カエン・バーナーだ。赤いクセ毛の長髪をたなびかせ、腕を組んで仁王立ちしている。


「またか!?今度はなんだ!?」


 前回のオウムの件からそう日も経過していない。それにもかかわらず、また問題でもあったのか。しかも俺の屋敷にわざわざ来るような内容の。


 カエンは言った。


「郊外の養鶏場の鶏が最近盗難にあっているの!」


「だからなんだ!?流石に鶏の盗難まで俺の責任ってことはないだろ!無関係だ!」


「それが、犯人は例の竜騎士とワイバーンじゃないかと言われているの!」


「あほか!?こんなところにいるか!死んでなければ国に帰ってるだろ!あと、何度も言うが俺は竜騎士を追い払ったのであって取り逃がしたんじゃないからな!俺にあの件の責任はないからな!」


「わかってるわよ。そうじゃなくて、例の竜騎士の顔を知っているのはあなた達だけだから、なにか手がかりになるかと思って」


「鶏の盗難なんてどこでも起きてるだろ。竜騎士のせいにされてる理由も、カエン司教殿がそこまで身を入れる理由もわからん」


「竜騎士なら天職持ちじゃない!」


「ん?」


「この前のあなたの言葉で思いついたの。確かに必要な聖句を唱えさせることができれば本人の意思にかかわらず生贄に捧げられるわ。聖国に入り込んだ竜騎士なんて捕縛されれば拷問も死刑も確実よ。拷問のついでに不死鳥孵化の生贄になってもらうくらい別に大した問題じゃないはずよ!」


「えぇ」


「何引いてるのよ!もとはといえばあんたが言い出したことじゃない!」


「いや実際に行動にうつされるとちょっと…」


「なんでよ!」


「まあ、あまり褒められた言葉ではないが、確かに使命のためならやむを得ないのかもしれない…私も国の命令が下れば拷問も辞さないだろうからな」


 アンジェはカエンをかばうように言った。


「アッ、アンジェリカ・シルバリエ…」


 カエンはアンジェの言葉に感じ入ったように瞳を潤ませた。


 冷静に考えれば、自分以外の生贄を用意できれば自分が生贄にされる可能性が減る。喜ばしいことだ。不死鳥テイムの王命がある以上、俺が生贄にされる可能性は低いと思う。しかし俺は不安性だ。


 生贄が確定するまでは安心できない。


 つまり、カエンの主張通り、竜騎士を捕まえて不死鳥孵化の生贄に仕立て上げるのがもっとも俺達にとって都合が良い。


 だが、カエンの話には他にも問題がある。


「話はわかったげど、鶏泥棒の正体が竜騎士とワイバーンである根拠は?そもそもそこの信憑性がなさすぎるだろう」


 果たしてカエンは答えた。


「ワイバーンらしき影を見たという目撃者が複数いるの。しかもその目撃情報は鶏泥棒の被害地と一致しているのよ」

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