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30:カエン・バーナー

「あたしの名前はカエン・バーナー。聖女といえばわかるかしら?」


 赤い長髪をファサッとなびかせて自信満々に少女は言った。


 俺は再度言った。


「誰?!」


「噂通り失礼ね!それに情報に疎い!このあたしの名を知らないなんて!」


 少女は憤慨して続けた。


「眉唾だと思っていたけど、その様子だと軍閥の流布している噂もあながち嘘じゃないのかしら」


「何その噂って?!」


「マスキュール騎士爵家による飛脚鳥の鳥害と帝国の工作員の取り逃がしについてよ!あなたのせいで不要な被害が出たとか、捕まえられた工作員を逃がしたとか…」


 話を聞くと、どうやら元マスキュール騎士爵家の諜報部門を受け入れた家が特にこの話を流布しているようだった。


「アホか!俺はその件の功労者だぞ!」


「そうだ。その件については本当にトリガーは功労者で何なら被害者…」


 アンジェが俺をかばってくれたがその言葉は遮られた。


「そんなことよりあたしのことよ!」


 カエンとか言う少女はズビシとアンジェを指さした。


「あなた、聖騎士アンジェリカ・シルバリエね!」


 聖騎士の天職を持つアンジェは有名人だ。


 そして眉目秀麗な女騎士などアンジェくらいしかいない。さらに王命を受けたバードテイマーの護衛についている女騎士となればもう確定だ。


「あなたならカエン・バーナーの名は知らなくても聖女の呼び名くらいは知っているでしょう?」


 カエンは得意気に胸を張ってアンジェに問いかけた。しかし…。


「知らない…」


「なんでよっ!」


「すまない」


 アンジェが申し訳無さそうに謝罪するが、カエンは怒りと羞恥で顔を真っ赤にしている。


 カエンは地団駄を踏みながら管理人に水を向けた。


「カーン!あなた、あたしのことこいつらに説明してあげて!」


 カーンというのは管理人の名前のようだった。


 カーンは仕方ないと方をすくめて口を開いた。


「彼女は聖火教史上最年少で司教になられたカエン・バーナー様です。彼女の見目麗しさと天職の希少さから聖女と称えられています。ついでに当鳥小屋の監査役人です」


 聖火教というのは我がフェニキア聖鳥国の国教だ。


 教皇をトップとして枢機卿、司教、司祭そして役職のない下っ端神官どもで構成された組織だが、国王が教皇を兼任しており、ほとんど国家の官僚機構とイコールだ。


 そんな聖火教の司教というのはかなりの要職で、カエンのような見るからに幼い少女がつける職位ではない。


 驚きのあまり口が滑る。


「こんなガキが?」


「ガキ言うな!」


 カエンは俺の言葉に即座に噛みつくと、さらに言い募った。


「それと、ずっと思ってたんだけど、あんたの仕事!微妙にあたしのと被ってるんだけど!」


「被ってないだろ。監査役は鳥小屋が法律の規制に則って運営されているか確認して、必要なら指導する役職だろ。俺の仕事は鳥の飼育と管理についての専門知識に基づく助言と指導だから」


「そうじゃない!」


「?」


 俺が懇切丁寧に説明してあげたにもかかわらず、カエンのお気に召さなかったようだ。なぜだと首を傾げる。


「あなたの不死鳥テイムの王命とあたしの不死鳥孵化の使命が被っているの!」


「不死鳥の孵化…?」


 不穏な言葉を思わず繰り返す。嫌な予感が脳裏をよぎる。


「不死鳥の卵を発見したの」


 果たして、カエンは爆弾を投下した。


 なんてこった。



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