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※本作に登場する鳥知識はフィクションです。

 ヤキトリに蹴り飛ばされたバージェスを放置して、俺達は国営の鳥小屋へと向かった。


 公務のためだ。


 公務の内容は国の鳥小屋を周りその運営の改善をすること。


「げっ!?トリガー・シタガウル…」


 鳥小屋に入ると管理者が俺を見咎めた。


 そんな無礼も広い器で受け流して笑顔を向ける。


「久しぶりだ。管理人。奥さんと子どもとは仲良くしてるか?」


 そう、この管理人はオウムによって弱みを握った奴だ。


 俺が余計なことを言わないでいるおかげでこいつの家庭は幸福を享受している。


 職場の人間に声をかけたところで仕事を開始する。と言っても基本は管理人の仕事の様子や鳥小屋内の環境、飼育している鳥の状態を確認するだけだ。


 暇つぶしに管理人に絡む。


『あれ?なんか嫌な顔してるぅ?」


「そりゃ嫌な顔もしますよ」


 管理人はそう言い、飼育している飛脚鳥とヤキトリに視線を向けた。


『そこの嬢ちゃん!我を見ろ!』


 ヤキトリは羽を広げて首を大きく左右に振っていた。そんなヤキトリの視線の先にはメスの飛脚鳥がいる。


「あれは何をしてるんだ?」


 ヤキトリの奇行にアンジェは眉根を寄せて言った。俺は答える。


「あれは求愛のポーズだね」


「求愛…あれが?」


 アンジェは俺の言葉に納得がいかないようで、なおヤキトリの様子を注視する。


『ヤラナイカ?』


「クォオオクォオオオ!」


「ほら!求愛だろ。それで受け入れられると…、あっ始まった」


「っ!」


 ヤキトリが座り込んだメスの飛脚鳥に後方からまたがって交尾を始めた。


 傍目にはヤキトリがメスの上でダンスを踊っているようにも見える。ヤキトリもメスも大声で鳴いて喘いで大騒ぎ。管理人も嫌な顔をしようというものだ。


 そんな中、顔を赤くして複雑な表情を浮かべるアンジェを俺は目ざとく見つけた。


「説明しようかアンジェ!あれは交尾っていうんだけどわかる?多くの鳥類と違って飛脚鳥にはちんこがあるからね!そこそこ時間がかかるんだ。ちんこのない鳥は総排泄孔同士をあわせる交尾をするんだけど、これは交接と言って行為完了に必要な時間が短いんだ。アンジェ聞いてる?アンジェ!」


「わかった!わかったからそんな詳細に説明するな!」


『我イキまーす!!!』


「クォオオクォオオオ!」


「正直仕事の邪魔です」


 管理人の言葉に流石の俺も謝罪した。


「ごめん」


 支配人に流れで謝ったものの、冷静に考えると俺に謝罪する理由はない。


 ヤキトリの仔に火を纏う力が遺伝するかどうかに強い関心が国から寄せられており、ヤキトリの交尾への協力はバードテイマーたちの責務として通達されている。


 飛脚鳥は飼育崩壊を防ぐために雌雄を分けて飼育しているが、ヤキトリと交尾した数匹を個別に隔離することはさして大変な作業でもない。


 むしろヤキトリの卵は文字通り金の卵だ。様々な研究の材料になるし、ヤキトリの卵の孵化と飼育経験はその成否の如何を問わず、バードテイマーとしての格を上げる。


 なぜ謝罪してしまったんだと後悔しつつもそれを指摘するタイミングを失いモヤモヤしながら仕事をしていると来客があった。


「邪魔するわよ」


 長い赤毛、ふわっと広がるゆるいくせ毛。ツリ目で気の強そうな赤い瞳。整った顔立ち。そして小さな体躯をもつ少女だった。


「来客中?珍しいわね」


「今視察を受けておりまして…」


「視察?聞いてないけど?」


 赤毛の少女から訝しげに視線を向けられ、数秒…。赤毛の少女はハッと目を見開いた。


「まさか…トリガー・シタガウル…」


「知り合いか?」


 アンジェの問いに俺はノータイムで答えた。


「誰?」

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