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27:青い鳥

※本作に登場する鳥知識はフィクションです。

「ひゃっはー!見つけたぞ!ルリビタキのメスだあ!」


「ルリビタキ?青くないが…」


「青いのはオスだけだ!今は繁殖期!メスを見つければたいていオスも見つかる。しかも卵か雛つきでなああ!」


 俺は占いばばあと新しく始める商売のため、青い鳥を捜索し、捕獲のため奔走していた。


 ひよこを青く塗ればいいじゃないかと最初は思ったが、ご利益がある商品として販売する手前、色落ちしてしまうカラーひよこだと少し都合が悪い。ご利益の源泉たる青色が落ちるのはかえって縁起が悪いだろう。


 なので野生のルリビタキなど元から青い鳥類をを狙って捕獲している。幸い繁殖期だったため、巣を作り、そこに卵が産み落とされ、すでに孵化しているものもある。


 卵の場合は孵化の手間はかかるが、一羽見つけてテイムすれば少ない手間で複数の青い鳥が手に入る。というかルリビタキのメスは色が青くないから卵か雛がないと商品にならない。


 とはいえオスはメスと共同で子育てするからメスを見つければオスも見つかる。


 テイムしたメスのルリビタキを追い、その巣にたどり着いた。そこには数匹のルリビタキの雛がいた。自然とテンションが上がる。


「くくく。雛のためにエサを咥えて巣に戻ってきたら、俺の商売の糧になってしまうという…オスというのは悲しい生き物だなあ!」


「どうしてそんなに楽しそうなんだ」


「え?お金が稼げるかもしれないと思うとワクワクしない?」


「…」


 どうやら俺の嗜好はアンジェの共感を得られなかったようだ。しかし、俺の高揚に水を差すには至らない。ジト目で呆れているアンジェに構わず俺はハイになって叫んだ。


「ふはははは!オスもメスもすべて俺の商売の糧となれ!」


 そんな感じで順調に思われた俺の青い鳥の調達。しかし、障害もあった…。


「くそ、またジュウイチが孵った!しかもルリビタキの卵を巣から押し出して駄目にしてる!」


「ジュウイチ?」


 アンジェが俺の悲鳴を聞いて問うてきた。


「別種の鳥だよ!」


「ルリビタキの巣になぜ?」


「托卵されたんだよ!」


「托卵…?」


 アンジェが聞き返した。


「自分の卵の世話を他の動物に託すことが托卵。今回は他所の卵を託卵されてしまったわけだけど」


 アンジェは俺の説明を聞くと嫌な顔をした。


「他所に托卵したうえで本来の卵をだめにするのか」


「野生、残酷すぎるよな」


 ルリビタキの孵化には大体2週間ほどかかる。それまで親鳥に抱卵させてるわけだがご覧の有様だ。


 ただでさえ商品になる青いルリビタキはオスでなければならないうえ、雛は生まれてから2年ほどはオスであっても青くならない。


 なのに、托卵鳥と呼ばれる鳥類に托卵される事故もある。托卵鳥の種類によっては他の卵をわざわざ外に押し出さないのもいるが、残念ながらジュウイチは他の卵を殺すタイプだった。


「しかもこいつら親を騙してエサを多めに運ばせるんだ」


「タチが悪いな」


 雛が減るとそれだけ親鳥に対するエサねだりの刺激が減り、給餌量が減る。


 そこでジュウイチの雛は翼の内側にある黄色い部分を見せ、激しく揺らす。翼の黄色い部分は雛の嘴に見え、親鳥は雛が多くいると勘違いしてエサを多く運ぶ。


 翼内部の黄色い部分には親鳥の給餌を促す作用があるのだ。


「ちくしょう。こいつのせいで罪のない幼い命が…」


「トリガー…」


 わかっている。野生に善悪などなく、ただ生存のために進化した生態に過ぎない。なので文句をいうことでもない。ただ偶然俺にはこのジュウイチの生存戦略が不都合だっただけ。だが、それでもムカつくものはムカつく。


「ちくしょうっ…!ルリビタキが減れば俺の儲けも減るだろうが!くそっ!ジュウイチ、お前はカラーひよこの刑だ」


「トリガーお前というやつは…」


 ジュウイチは明らかにカラーひよこで主流の他のひよことは見た目が違う。だが、レアな希少品ってことにすれば売れるだろ。


「ところでジュウイチの名称の由来はあるのか。変な名前な気がするが」


「ああ、鳴き声がジューイチって聞こえるからだね」


「…そうか」

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