23:経過
※本作に登場する鳥知識はフィクションです。
『めしはまだか!?』
「ご飯はもう食べただろう?」
『そうか…、めしはまだか!?』
飛脚鳥に憑依したヤキトリは知性までその影響を受けるのかとても頭が悪くなっていた。
まるで老人、つい先程餌を与えたばかりのアンジェに何度も餌の催促をしている。
困った顔でアンジェが俺に視線を向けてくる。
「ヤキトリの知性が飛脚鳥の影響を受けて下がってるみたいだね」
「くっ、飛脚鳥は本当にこんなに頭が悪いのか…」
「まあ、ただ飛脚鳥も妙なことは覚えてたりするから…」
俺がそういうや否やヤキトリが叫んだ。
『大変だ!おいヒトカスこら!』
「なっなんだ!?なにか問題が!?だっ大丈夫か!?」
「落ち着きなよアンジェ」
意外なほど取り乱すアンジェに声をかける。
「だっ、だが肉体が変わった影響があるのかも…」
アンジェは騎士で、騎士にとって飛脚鳥は強い思い入れのある動物だ。ヤキトリとは言え見た目は飛脚鳥、アヒルの時より強く感情移入しているようだった。
「それでどうした?」
人間だけで狼狽していても仕方ないのでヤキトリ本人に話を促す。
『ぺっ』
「ぺ?」
『ペニスがデカくなってる!』
「そうか…。おいアンジェ!ペニスがデカくなってるってよ!ペニスってわかるか?それがでっかくなったって!」
「わかった!わかったから連呼するな!」
アンジェは顔を赤くして声を荒げている。かわいいし、面白い。
『ちなみにそのままの意味だ。「デカくなった」は勃起の隠語ではない』
「だってよアンジェ!勃起じゃないってさ!体相応に大きくなったんだってさ!」
「わかった。わかったからっ!その…、ペッ、ペニスとか言うな!」
アンジェの言う事を受け入れたヤキトリが俺に言ってきた。
『おいっ、大きさだけじゃなくてちんこの形まで変わったんだが?』
「あるだけいいだろ!鳥なんてオスでもほとんどちんこないんだぞ」
「言い方を変えればよいというわけではないぞ!」
アンジェは目に涙をたたえて必死で声をあげているが、ヤキトリは気にせず俺に質問してきた。
『そうなのか?鳥類はほとんど陰茎を持たないのか?』
こいつちんこのボキャブラリー多いな…、などと思いつつ回答する。
「ああ。パッと思いつくのは飛脚鳥を除けばダチョウ、鴨くらいか?」
アヒルは鴨を家畜化したものだからちんこがある。アヒルのちんこは螺旋状に長い、面白い形状のやつだ。
『ふんっ!落ち着かぬが、不幸中の幸か…』
「ちなみに他の鳥は総排泄腔同士を重ねて交尾するよ。聞いてる?アンジェ!」
「聞いてない!」
「なんでだよ!これも王命だろ!ヤキトリのペニスだって大事な報告項目だろ! 」
『報告すると良い!我のペニスがデカくなったとな!』
「報告せんでいい!飛脚鳥の肉体に変化はないのだろう?ならばヤキトリが憑依したことによる飛脚鳥の変化なしと報告すればよいだろう!」
アンジェの抗議をニヤニヤしながら見る。
面倒な仕事と思っていたが、アンジェのおかげで意外と楽しい。
そんなこんなで国に報告するヤキトリの調査を進めていった。
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