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19:火を纏う鳥2

 マジかよ…


 口の悪い火のアヒル、ヤキトリを見る。


「面倒みるの?これを?俺が?嫌だ…」


『何を言う!これ以上ない栄誉だろう。下等生物にはもったいないぞ』


「黙れ」


 俺がおもわずそう吐き捨てると占いババアは不思議そうに言った。


「テイムすれば黙らせることもできるだろう?」


 占いババアの言葉はまるで天啓だった。初めてババアの言葉に感心した。俺は深く頷いた。


「なるほど!」


「気づいてなかったのか。そもそもヤキトリと引き合わせたのはお前のテイムが前提じゃぞ」


 占いババアの言葉に俺は深く納得する。


 飛脚鳥の大群を一度にテイムしてみせたこの俺だ。


 無茶振りに思える不死鳥テイムの王命すらも今や実現可能に思えてくる。


 少なくとも国のお偉いさんがたはそれを期待してこのいけ好かない不思議鳥と俺を引き合わせたのだ。


『テテテっテイムだと!?自由を縛る悪魔の力!よもや貴様!我をテイムする気か!?』


 鳥風情にも俺の力の恐ろしさはわかるらしい。


「はっ!今更気づいてももう遅い!生物としての格の違いを思い知らせてやる!頭を垂れて慈悲を請え!」


『やっやめろぉおおおお!!!』


 俺は大仰に手をヤキトリに向け、声高々に力を行使した。


『テイム!』


俺の力を受け、ヤキトリは…。


『ん?』


 ヤキトリが首をひねる。


 俺も違和感を感じ再度力を行使する。


『テイム!」


『ぬおおおお!貴様っ!またっ…、ん?』


 ヤキトリは何度か翼をはためかせ、毛づくろいし。そして言った。


『何も起きんぞ?」


「ばっ馬鹿な!?」


 テイムできない…。俺はその事実に愕然とした。


『ん?なんだ?もしやテイムできないのか?ん?』


 ヤキトリが嘴を開けて言った。実に腹の立つ物言いだが、俺は怒りよりも焦りが勝った。言い返す言葉も出てこない。


「まさか!トリガー!テイムできないというのは本当か?他に誇るもののないお前の唯一の取り柄じゃないか!」


「おいアンジェ!傷つくんだけど!?そんなふうに思ってたの?」


「アンジェだけでなく皆が思っとるわい」


「黙れババア!」


 俺は思わず叫んだ。


 俺の言葉にババアは黙ったがかわりにヤキトリが口を開く


『所詮飛行能力すら持ち得ぬ下等生物!優れたる鳥類の中でも更に特別な我をテイムすることなどできるはずもない!』


 戯言を履くヤキトリに俺は何も言い返すことができない。


「クソっ!なんでテイムできないんだ!」


 俺は悔しさに消沈する。するとアンジェが口を開き疑問を呈した。


「さっきは驚いて頭が回っていなかったが、冷静になって考えるとトリガーほど強い天職持ちが鳥をテイムできないのはおかしい。順当に考えればヤキトリをテイムするには何か特別な条件を満たす必要があるのではないか?」


「いや、今までにもテイムに特殊条件のある鳥はいた。でもその特殊条件はその鳥を見れば自然と思い浮かぶんだ。ヤキトリは全く思い浮かばない」


 俺の回答に対してアンジェは俺が思ってもみない返答をした。


「ならばヤキトリは鳥ではないのではないか?」


「なるほど!」


 盲点である。冷静に考えればこんな人語を話し、火を纏う鳥なんて存在するわけがない。


『我は鳥である』


「うるせえ!」


 ヤキトリがなんか言ってるが無視だ。こんな不思議生物の言うことなど信用できるか!


「じゃがヤキトリが鳥じゃないなら何なんじゃ?」


「それは…」


『鳥だと言っているが?』


「ふむ。まあ、確かに自分を鳥だと思い込んでいる何かの可能性は否定できんな。今はこれ以上考えても仕方ない。ワシの方で調べておこう。ヤキトリのテイムの話は一旦終わりじゃ」


 占いババアが言った。確かにもはや考えても回答は得られないだろう。占いババアは長く生きてるだけあって見識は広く、その職責に応じてアクセスできる文献も広い。ここは任せるべきだろう。俺たちは占いババアの言葉に納得し頷いた。


「それよりヤキトリの面倒をみろという命令は未だ生きている。さらに言うとこのヤキトリが発見された場所に行くよう王から追加の指示もある」


「はあ?」


 俺は思わず不満の声を漏らす。だが占いババアは俺を相手せず言葉を続ける。


「ヤキトリのテイムができなかったことは予想外だが、仕方ない。」


占いババがやれやれと腹の立つ仕草をした。アンジェが焦れて聞く。


「その…、ヤキトリが発見された場所というのは?」


 占いババアは答えた。


「不死鳥伝説発祥の地、コーカサスの岩山だ」

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