表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/51

16:報奨

※本作に登場する鳥知識はフィクションです。

 後日、マスキュール騎士爵家の取り潰しとマスキュール騎士爵本人の処刑を知った。


 結局云われなのない非難を軍閥の一部からは受けたものの大きな被害はなかった。


 マスキュール騎士爵領での飛脚鳥の大繁殖及び脱走にまつわる事件の被害による影響は大きく、国の力は大きく衰退。


 戦争は未だ優勢なものの、その趨勢にまで影響が出そうな勢いだ。


 正攻法での勝利に陰りが出てくると、オレが受けた不死鳥テイムの王命への期待が高まる。


 すると今まで戦争の功績でチヤホヤされていた軍閥への期待が陰り、俺に対する軍嫉妬が高まる悪循環だ。


「アンジェ聞いてくれ。軍閥の奴らが口々に嫌味と脅しをかけてくるんだ 」


 王城からの帰り道で俺はアンジェに愚痴を吐いた。


 国からはキチンと評価され報奨を受けたが、軍閥からの悪感情も同時に強くなった。


 マスキュール騎士爵は処罰を受ける間際、その優秀な諜報部隊を用いて俺のネガティブキャンペーンを行った。


 相手にしない者も多かったが、もとから俺が嫌いな軍閥共の俺に対するヘイトはしっかり高まっていた。


 平穏で自堕落な生活を望む身としては総じてマイナスだ。嫌な目にあった。


「気の毒とは思うが、お前もいい加減煽るのをやめろ。ニヤニヤしながらガン見していれば機嫌も損ねるだろう!ただでさえ貴族はプライドが高いんだ。自重を覚えろ」


「功労者の当然の権利だろ!」


「だからそういうところを自重しろと言っている!」


 少し心情を吐露すればこの有様だ。護衛のアンジェからしたら、護衛対象が自ら危険に身を晒しに行ってるように見えるのだろう。


 罪悪感はある。ごめんな、アンジェ。


「でも良い事もあった。連れ帰った飛脚鳥の正式な保有の許可とそれを管理するための鳥小屋を国が作ってくれるってさ!」


「お前は人格に問題はあるが、間違いなく功労者だ。」


「唐突な人格否定辛すぎ…」


「それくらいの報奨は当然だろう。これからもちゃんと働けば相応の評価がされる。今までのように面倒くさがらず労働に励め」


 などとアンジェが説教を始めてしまったが、俺は久しぶりに苦労が報われた気がして上機嫌にやり過ごした。



 数カ月後、俺はシタガウル家の領地で家臣団とともに地面を掘り返しながら毒吐いていた。


「ちくしょう!ちくしょう!」


「どうしたんだトリガー!?なにがあった!?」


 俺たちの様子を見てアンジェが驚き、駆け寄ってきた。


「国が粗悪な鳥小屋を立てやがった!床板がなかった!」


「それの何がいけないんだ?」


「飛脚鳥は穴を掘る習性があるうえに地中に卵を産むんだ!床板がないと脱走を防げないし、産卵数がわからない。飛脚鳥の数の管理ができないんだ!下手するとマスキュール騎士爵の二の舞いだ!」


 飛脚鳥の繁殖力と生命力は半端じゃない。一度に複数の卵を産むし、一度孵ればほとんどが成鳥になる。食料さえあればめったに死なない生物なのだ。


「なるほど。だから卵を探して土を掘り返しているわけか」


「確認しなかった俺も悪いが、まさか国が報奨としてこんな粗悪品を作ってよこすとは思わないだろ!」


 床板がないことに気づくのに1ヶ月かかった。床は床板があっても足を怪我しないように、また、衛生上の観点から土や藁で覆われている場合が多い。


 てっきり床材が土なのだと思っていたら、生の地面だったとうわけだ。


 卵を産んだあとはその穴を埋める習性があるため長らく気づかなかった。一羽の飛脚鳥が穴から脱走したことで発覚した。


「トリガーのテイムでどうにかならないのか?」


「テイムで卵を探せってことか?残念ながらあいつら自分の卵をどこに産んだか把握してない。それどころか産んだ事実すら忘れてる。卵探しの手伝い自体はさせているけど…」


「いや、テイムで管理すれば床板がなくても大丈夫じゃないかと…その交尾の禁止や産卵の抑制とか…」


 普段なら頬を赤らめて「交尾」などと言うアンジェに興奮していただろうが、今はそのことに反応できないくらい俺は必死だった。


「アホか!?四六時中テイムしていられるか!?俺に寝るなと?」


 天職の力は使えば消耗するし、睡眠等で意識を失えばその効力は失われるものだ。


 俺のテイムの力を持ってしても十全の飼育環境下になければ飛脚鳥を飼育することはできない。


「そうだな。すまない。無理を言った」


「くそおお!国にクレームつけてやるからな!覚えてろ!」


 俺は慟哭した。


 流石のアンジェも俺をたしなめることはなかった。

ブックマーク、評価、いいね、感想等いただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ