11:占いババア2
※本作に登場する鳥知識はフィクションです。
占いババアと取っ組み合いの喧嘩をし、俺がババアの首を締め上げたところでアンジェに止められた。
「はあはあ、死ぬかと思ったわい」
「なんで止めたんだよアンジェ。あと一歩でトドメがさせたのに」
「馬鹿か!?こんなことで犯罪者になるつもりか!?」
「今、王の相談役の殺害をこんなことと言ったかの?」
「おっ!アンジェも言うじゃん!もっと言ったれ!」
「えっ、いや、違います!これははずみと言いますか…。ええいトリガー!ニヤニヤするな!」
焦るアンジェを横目に俺は占いババアに再度向き合う。
「で?せっかく低姿勢で頼んでやったのに鼻で笑って馬鹿にしたテスカ様。取っ組み合って首絞められて死後の世界を垣間見ていかがですかぁ?不死鳥テイムの王命の真意を教えてくれる気になりましたかぁ?」
俺は可能な限り嫌味に聞こえるよう、語尾を伸ばし、下から睨めつけ質問をする。
「ぐっ、まさか老体を労ることを知らんとは…。とはいえ、実際のところお前達に教えられるようなことはない。」
「ウソつけ!不死鳥の復活を予言した占星術師が王からその話を聞かされてないわけ無いだろ!」
「自分にはどうにも出来ない領域のことには耳を塞いでおくというのが儂の処世術じゃ。王に聞かれれば答えるが、こちらからわざわざ質問したりはせん。そして今回は特に相談を受けておらん」
「このクソババア!情報もないのに思わせぶりな態度してたのか!?何が知りたいか?だ!」
「いや、待てトリガー」
またも占いババアに飛びかかろうとした俺をアンジェが止めた。
「テスカ様のお話で推測できることもある。テスカ様に王が相談しなかったということは、お前への王命は不死鳥復活そのものを脅威に思っての命令ではない可能性が高いということだ。別に大きな目的があり、不死鳥テイムはその手段の一つに過ぎない可能性が高い。」
「それは知ってるよ!ドラグニカ龍帝国との戦争を終わらせる象徴にしたいって文官に説明受けたって言ったじゃん!軍閥共が調子に乗ってやりすぎそうだから!」
「……、それが真実の可能性が高いと確認出来たな」
「まあ、そうだね。意味はあったね。うん」
俺たちがどうにか自分を納得させようとしているとまた占いババアがいらんことを言った。
「まあ、王も割と馬鹿じゃからな。軽い気持ちで無茶な命令をすることもある。あまり深く考えすぎぬことじゃ!はははは!」
占いババアの能天気な笑い声が響いた。
「はあ、まあそんなことより飛脚鳥のテイムでマウントを取ろう。俺の有能さを国に見せつけるんだ。」
占いババアと話していても有益なことはありそうにない。俺は気を取り直し、本日の目的を再確認した。
「ん?わざわざ恨みを買う真似せんでもバードテイマーのちからを示す機会はすぐに来るじゃろ?」
「なんのことだ?」
俺は嫌な予感とともに占いババアに聞き返す。
「なんだ。聞いとらんのか。軍閥の、なんと言ったかの、そうじゃマスキュール騎士爵家じゃ。そこで飛脚鳥の繁殖に手を出したんじゃが、許容範囲を超えて繁殖し脱走され、手に負えんらしいのぅ。王命で王都のバードテイマーに招集がかかることになった。お前にもすぐに声がかかるじゃろうて」
どうやらバージェスが顔色変えて帰っていった件と同じ話のようだ。王命が下されるほどの大事だったようだ。
「そうでしたか。トリガー、そういうことなら急ぎ準備をしよう。マスキュール騎士爵家の領地にはそこそこ距離がある。国のバードテイマー相手にマウントを取っている場合ではない」
アンジェが俺に言う。
俺はアンジェの言葉に返答する。
「もうマウント取るべき相手も王に招集されて不在だろうしな」
「相手が居たらこの状況下でもマウント取るのかお前は」
占いババアの苦言に俺はいよいよ叫ぶ
「うるせえ!今日はバージェスに絡まれたり、占いババアに粘着されたり散々だったんだ!そのうえ新たな王命だあ?マウントくらいいいだろうが!」
「お、おう。そうか。まあ落ち着けトリガー。仕事が増えて大変なのはわかる。愚痴くらいなら私が聞くから。落ち着け」
「はははは!本当に情けない奴じゃの!この程度のことで!せいぜいアンジェリカに愛想をつかされんようにの!」
「うるせえババア!」
そして俺とアンジェは準備を整えマスキュール騎士爵家の領地へと向かった。
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