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10:占いババア

※本作に登場する鳥知識はフィクションです。

「トリガー。飛脚鳥逃亡の後始末、手伝ってやらなくていいのか?」


 バージェスが報告を受け、慌てて帰路につくのを見送った。その間バードテイマーの天職を持つ俺はニヤニヤと口角がつり上がるのを必死で抑えていた。


 そんな俺を横目にアンジェが尋ねてきたので答える。


「いいんだよ。他の貴族家のことだし、派閥も違う。当事者が頭を下げて依頼してくれば考えるけど」


「そうは言っても困るのは国民だ。飢饉が起きない程度にはたすけてやれないか」


 アンジェの言葉に俺はジト目で言う。


「これどっちだと思う?」


「何がだ?」


「俺が解決したときに軍閥の皆様に感謝されるのと、顔潰したと恨まれるの。」


「……、どっちだろうな」


 アンジェは顔を引き攣らせた。


 俺の読みだと逆恨みされるのがオチだ。


 アンジェもそう思ってるから回答を濁したのだろう。


「な?だから静観決め込むのが正解なんだよ。巻き込まれる領民は気の毒だけど。あいつらにもバードテイマーの知り合いくらいいるだろ。そっちに依頼するはずだよ」


「それもそうか」


 アンジェが納得したようなので愚痴をこぼす。


「飛脚鳥は経済動物として優秀だけど、優秀すぎて馬鹿な人間を勘違いさせるって欠点があるね。」


 飛脚鳥の欠点というより人間の欠点か。


「国には今回の件を鑑みて飛脚鳥の繁殖は規制してほしいよ。まったく」


 実際は貴族感情やら利権やらで規制出来ないみたいだ。


 まあ、どうでもいいんだけど。


 国をディスるのって妙に気持ちいい。なんなんだろうねこの夜遊びのようなスリルと高揚感は。


 などと考えていると唐突にしわがれ声に呼び止められた。


「そこにいるのはシタガウル男爵家の小倅じゃないかえ?」


 振り向くとしわくちゃのババアがパイプを咥え、紫煙をくゆらせている。


「げっ!?占いばばあ…」


「おいトリガー。テスカ様に対して失礼だぞ」


 俺の言葉をアンジェがたしなめる。


「アンジェリカもおったか。悪いこと言わんからこいつはやめておけ。苦労するぞ」


「え?いや、あの…」


「何言ってんだ!余計なお世話だババア!」


 占星術士テスカ・トリポカ。


 占星術士という未来を知る事ができる希少な天職を持つ王の相談役だ。


 だが、過去にこの天職を私利私欲のために悪用し、国を衰退させた者が居たため、保護はされるが権限はない。


 俺が舐めた口聞いても問題ないというわけだ。


「どうじゃ不死鳥テイムの王命の進捗具合は?」


「まだ王命が下ってからそんな経ってないだろ!進捗なんざあるか!」


「なんじゃ情けないのう」


 占いババアはため息を吐く。


「無茶言うな。大体占いババアには関係ないだろ」


「関係あるわい。不死鳥の復活を予言したのはこの儂なのだから」


 驚きの発言に脊髄反射で飛びかかる。


「てめえのせいか糞ババア!」


 俺は災いの元凶に掴みかかった。


「また適当な予言を無責任に放言したんか!?クソババア!」


「適当で無責任とは何じゃ!?」


「うるせえ!いつもどうとでも取れる曖昧な占いしやがって!俺が絶対に当たる占いをしてやるよ!お前はいずれ死ぬだろう!」


「儂にそんな口きいてええんか?王に告げ口するぞ!不敬罪で殺してくれと告げ口するぞ!」


「やってみろ!不死鳥をテイムするという重要な使命を負った俺を不敬罪で殺してみろ!でもその前に、不死鳥テイムの占いは嘘でした。ごめんなさいと謝れよな!ほら謝れ!」


「儂が占ったのは不死鳥があらわれるということだけじゃ。テイムを命じたのは王の考えじゃ。儂は関与しておらん」


 その言葉に俺はフリーズする。


「え?テイムの方は王の判断なの?」


「そうじゃ」


「さっき告げ口するって言った?」


「言ったのう」


「生意気言ってすみませんでした。どうかこのことは内密にお願いします」


 俺はババアの胸ぐらから手を離し、光の速度で一歩下がって頭を深く下げる。


 おいおいおいおい!とんだトラップだぜ。こういう事があるからみんなこの権限のない占いババアに気ぃ使った対応してるのか?


「ふん。調子のいい奴じゃ。お前は馬鹿じゃが、変わり身の速さだけは一流じゃな」


 畜生むかつく!俺がぐぬぬと歯を食いしばっていると、アンジェが前に出てきた。


「テスカ様失礼しました。ですが、トリガーの状況もお考えいただきたく思います。不死鳥のテイムなどあまりに難題。王の意図はどこにあるのでしょうか。」


「ふむ聞きたいか?」


「お願いいたします」


 アンジェが言う。


 一方俺はと言えばアンジェが俺のために真剣な口調で話をしてくれていることに感動していた。


 やっぱりこの女俺の事好きなんじゃねえの?


「おい。シタがウル家の小倅!何をニヤついておる。お前も王の真意が知りたいか」


 占いババアはアンジェから視線を俺へと向けて質問してきた。


 俺は慌てて真剣な表情を取り繕い言う。


「ぜひお願いいたします」


 俺がそう言うと占いババアは間を置き、勿体つけて言った。


「だが、断る!」


「テスカ様っ!?」


「このクソババア!帰り道に気をつけろ!鳥の糞まみれにしてやる!」


 アンジェは愕然とし、俺はキレて占いババアに襲いかかる。


「がははは!馬鹿な青二才共め!低姿勢で頼めば何でも教えてもらえると思っておる!はははは!愉快愉快!」


「テスカ様…」


「このクソババア!」


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