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1:王命が下された

 フェニキア鳥聖国。不死鳥を信奉するその国の王城で一人の男の人生を揺るがす命令が王より下った。


「トリガー・シタガウル。貴殿に不死鳥テイムの王命を下す」


 俺の名前はトリガー・シタガウル。シタガウル男爵家の嫡男にしてバードテイマーの天職を持つ男!


 生まれと才能に恵まれた俺だが、そんな俺にも無理なことはある。


「はっ!おおせのままに。」


 権力には逆らえないし、不死鳥のテイムはもっと無理だろう。どこにいるのかわからないし、テイムできるかもわからない。


 不死鳥って本質的に鳥なの?精霊なの?幻獣なの?


「うむ。任せたぞ。」


 頭をたれて良い返事をしながらも、俺は内心天を仰いでいた。どうしろっちゅうねん。




「アンジェ聞いてくれよ。王様がひどいんだ。」


「おい。往来でとんでもない不敬をくちにするな。」


 生真面目な女騎士が眉根にシワを寄せて俺を叱責した。


 この女騎士はアンジェリカ・シルバリエ。聖騎士の天職を授かった俺の幼馴染で、アンジェは愛称だ。


 幼少の頃にいじめっ子から助けてもらった時からの付き合いだ。


 傷心の俺に鞭打つとはひどい奴だ。だが、怒りは湧いてこない。


 むしろ僅かに喜びすらある。


 なぜならこの女騎士は顔がいいし乳もでかいからだ。声も耳心地の良いハスキーボイス。叱責すらも心地よい。正直たまらん。


 だがアンジェに叱られる喜びよりも今は共感と慰めがほしい。


 俺は王から下された理不尽な命令について説明した。


「光栄なことじゃないか。何が不満なんだ」


 だが、アンジェの共感は得られなかった。だから俺は抗弁する。


「まず不死鳥が実在するか不明。創生神話に国を守護する聖なる鳥として記されてるにすぎないだろ。」


「まあ、それはそうだが、王とて不死鳥の居場所に心当たりがあっての命令じゃないのか?命令はテイムすることであって調査ではないのだろう?」


「いや、命令受けたあと、文官から命令の詳細説明受けたけど、不死鳥のを見つけ出すことも命令に含まれてる。」


「そ、そうか」


 俺の説明にアンジェの表情が少し曇る。


「どうも今回の命令はドラグニカ龍帝国との戦争を終わらせるための象徴にしたいみたいなんだけど…」


「重要な役目じゃないか」


「いや、我が国有利で戦争が進む中で、軍部の膨張・勇み足を抑えるために利用したいらしい。これ軍閥の皆様から手柄をくすねる野郎として目の敵にされるポジションだよね。貧乏くじだよね」


「それはそうかも知れないが……」


 アンジェの表情がどんどん曇っていく。


「それに不死鳥を仮に見つけても、俺のバードテイマーの天職の能力でテイムできるの?不死鳥って精霊や幻獣じゃないの?鳥だったとして俺の天職の熟練度は足りてるの?不死鳥に対面してテイム失敗したら俺死なない?」


「……」


「おい黙って目をそらすなよ!な?ひどいだろ!この命令は果たして光栄なことだろうか!?」


「いや、まあ確かに困難の多いお役目だと思うが」


 アンジェは気まず気だ。そんなアンジェに俺は我が意を得たりと希望を口にする。


「なっ!そうだろ!というわけで俺、逃亡したいんだけど、護衛してくれないか?」


「何が、というわけ、だ!バカを言うな!逃亡してみろ、国総出で命を狙われるぞ!私達はまだ18歳だ。何年逃亡生活を送る気だ!」


 俺の希望は儚く、一蹴されてしまった。


 アンジェの言葉にぐうの音も出ず、俺はうなだれて家に帰った。

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