第2話 死の継ぎと、出会い
ビクトリアは4つの大国で構成されている。
バゼリ(日本サーバー)、
ジオマ(ロシア・ヨーロッパサーバー)、
ナイトケ(中国サーバー)、
ザマル(アメリカサーバー)である。
それぞれのサーバー毎で国のデザインが変わっている。
1.バゼリ王国-教会
青い粒子が、人の形に集まり───教会のような場所で、俺は復活していた。
(…まぁ、運が悪かっただけだろう。)
どうやら、【ビクトリア】の治安は思いの外悪いらしい。表通りは大丈夫なようだが、少し裏路地に近づくと殺害されてしまうようだ。
(戦闘がしたいとは思っていたが、初戦闘で暗殺者が相手とはな…。)
(まぁ、普通のモンスターとの戦闘では、すんなりやられることはないだろうとは思うが。)
どうやら俺の運は落ち目みたいだ。そう思いつつ、教会から出ようとすると、長椅子に腰掛けた人が話しかけてくる。
「見ない顔だな…。」
「あんた、その装備だと初心者だろ?」
なんだこいつ
初対面の人に話しかけるなんて、勇気がある奴だな。
───あ、えと。路地裏に近づいたら、殺されたみたいで…。
「…初心者は裏路地には近づかない方がいいぞ。」
「血気盛んなプレイヤーキラーが常にうろついているからな。」
へー、そうなのか…。
「プレイヤーにキルされると所持金が半分取られる。序盤は武器買うために、金は大事に溜めとけ。」
───えっ!?マジかよ。
つい素のリアクションが出てしまった。
彼の話の通りなら、【ビクトリア】は思ったより、シビアなゲームみたいだな。
だって、プレイヤーキラーが常に徘徊できてるってことは、いわゆる【カルマ】システムがないということだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【カルマ】システム…悪事を働いた場合、牢獄に入れられたりして行動を制限されるシステム。
他のVRMMOゲームには当たり前に実装されている。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(もしかしたら、大変なゲームかもしれないぞ…。)
そう思いつつ、俺は彼に会釈をして、改めて街へ繰り出した。
2.バゼリ王国-穀倉地帯
街を出ると、ずいぶんと丈の高い小麦のような植物の群生地帯が広がっていた。
高さは4m程はあるだろうか。
「ここはバゼリ王国の穀倉地帯なんだそうだ。」
教会の時の長椅子に座っていた男が話しかけてきた。
付けられていたのだろうか。怖ッッッ
2mほどの槍を片手で持っている。怖ッッッ
(でも、ちょっとかっこいいな。俺もでかい剣を振り回してみたい…!)
彼は槍を地面へと突き刺し、明るい雰囲気で話し始めた。
「俺の名前はラマンダ、よろしく。」
───あっ、お、おれの名前はアーサーです。
自己紹介されたので、俺もビビらず、簡単に自己紹介をする。
恥ずかしながら…蚊の鳴いたような声が口から出た。
…これは、チャンスだ。
俺がこのゲームを知るためには、先輩攻略者の協力が必須。
彼の協力を得られれば、俺のレベル上げも簡単にできる筈だ。
俺は意を決して話しかけた。
───ラマンダ…さんは此処には詳しいんですか?
「βからやってるからな。」
「今は、ふらふらしてる初心者を導くのが趣味なんだ。」
おっ、好感触。
この調子でどんどん話しかけていくぞ。
ラマンダに質問を続ける。
───この世界の遊び方とか、教えていただけないでしょうか。
「遊び方、か。」
「そうだな、まず鍛えるべきだ。」
「この世界は【メインストーリー】がある。メニュー欄のクエストの項を見たか?」
見てみると、【メインストーリー】と大きくタグが付いた、【古代遺跡、ミドガルズ】というクエストが存在していた。
ありゃ、こんなのがあったのか…。
「基本はギルドの掲示板に行けば説明してもらえるんだが…お前、そういうの無視したんだろ?」
う、図星…。
───うへぇ…まったくその通りで…。
「いいさいいさ、このゲームのプレイスタイルは基本自由だ。」
「だがな、このゲームの本旨とも言える、そう言ったクエストに対面するためには、ある程度の強さが必要だ。」
確かに推奨レベル36と書いてある。
今の俺のレベルは勿論、1。これじゃ行くだけ無駄死にだろうな…。
【ビクトリア】のチュートリアルは見逃してしまったらしいから、ラマンダの協力はとてもありがたい。
───……ラマンダさんは強いんでしょうか?
「あぁ、ラマンダでいいぞ。」
───あ、おす。
「で、強いかだな…ま、そこそこね。メインストーリーも大抵はクリアしたしな。」
「うん、そんなもんだ…此処らのモンスターなら初期レベルでも狩れるだろう。フレンド申請しておくから、困ったらなんでも聞いてくれ。」
パネルをサッと操作するラマンダ。するとフレンド申請がされましたと通知が。
ラマンダからのフレンド申請を受理すると、彼は街の中に戻っていった…。