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第1話 深海の城

1.人界-深海研究所【スカジ】


 空。

 地。

 バゼリの地を抜けた先に、海。

 バゼリ、ジオマ、ザマル、ナイトケを繋ぐ海上浮遊大陸【アスガルド】の真下。

 深海研究所【スカジ】。

 そこにアーサーは連れ去られていた。


「だから、【ビクトリア】には【ランクアップ】があって、それが【女神の加護】だ。女神の機能を分割して我々の体に組み込めば職業の極致たるシステム権限が使えるようになるのも当然じゃないかね?」



───だから、何言ってんのかわからーん!!


 事は、数十分前に遡る…。



2.人界-深海研究所【スカジ】-数十分前



 アーサーを肩で抱え、暗闇のゲートから抜けてきたザスター。


「あー、やっと帰ってこれたよ。疲れたなぁ。」


 彼はアーサーを床に転がした。


───いたっ。


 ごろごろと転がる。

 …床は、木製のフローリングだった。

 部屋を見渡せば、窓などはなく、白いコンクリで作られたような角張った部屋だった。

 所々に医療機器のように見える複雑な機械が置いてある。


(この世界、人工物は本当になんか現代風だな。どこもかしこも白い壁だ…。)


 いや、まぁ、現代の人間が作ったのであれば、現代風になるのも当たり前の話ではあるのだが。


「ふぅ…。あ、君。確か人魔混合兵だったか。しばらく、実験に協力してもらうよ。」


「…そういえば"そう"だったな。私の名前はザスターだ。今後ともよろしく。」


 奴…【ザスター】は、椅子に座り、コーヒーで一服しながら、思い出したかのように自身の名前を語った。

 コーヒーカップをテーブルに置く。


「えーと、確か検体4…だったか?蝙蝠の翼は確か。君の名前はアーサーだったね。」


───……。


「沈黙は肯定と見做させてもらおうか。」


 ちなみに俺は答えなかったんじゃない。

 答えられなかったんだ。

 正直、銀鎧にもらった傷でもうすぐ死にそうだ。


───…ごほっ!…ごほっ!


「うん…?…あーそうだったか。まずは治療だね?」


 俺がボタボタと血を流し始めた頃に、ザスターはやっと俺を治療し始めた。


3.人界-深海研究所【スカジ】


 そして、俺が治療中に色々とザスターに質問した結果、今に至るというわけだ。

 聞き出せたことをここに書き連ねようと思う。


(まず、一つ目の質問。ここはどこであるのか…。)


 どうやら、ここはアスガルドというところから真下にある海にあるらしい。

 魔物のレベルも高く、レベル150ぐらいはないと生還はできないそう。


(二つ目の質問。俺は何をされるのか…。)


 俺はこれから身体の精密な検査と、さまざまな実験を行われるらしい。

 外は敵だらけだし、ついでに海の中なので、脱出しようとしても無駄だとのこと。


(三つ目の質問。ウェーカンへと見せたあの力はなんなのか…。)


 ザスターが説明するに、あの力は、女神の機能を分割して人間の体に組み込み、職業の極致たるシステム権限が使えるようにした結果だと言う。


 わからなくもないけど…わからない気もする…。


 【女神】とは何か。

 【女神の機能の分割】とは何か。

 【女神の機能を身体に埋め込む】とは、どう言うことか。

 【職業の極致がシステム権限】とはどういうことかの4つの疑問を抜かせばだが。


(まぁ"そういう"ものなんだな。)


 俺は理解は諦めて、先ずは納得することにした。


「では先ず検査を行おう。そこの台に仰向けに寝転がってくれたまえ。」


 俺は鎧を脱ぎ、インナーだけになってから台の上に寝転がった。

 おもっきしCTR検査だ…。


「よし。じゃあ解析を開始しようか。…よし、終了だ。装置から出てくれたまえ。」


 瞬きをする間もないくらいすぐに、検査とやらは終了した。


───随分とはやいな。これ。


「ザマルから融通してもらった最新式さ。普通に【ビクトリア】をやっていれば滅多に見る事はないだろう。」


 …またザマルか。

 俺がダトムから片手剣を受け取ったのもザマルだし、少し興味が出てきた。


───ザマルっていわゆる技術大国なのか?


「ん、ああ。知らなかったのかい?彼の国はね、技術者を囲う政策をいくつも打ち出してる。」


「故に技術者が集まるんだ。具体的な政策を言おうか?確か、企業の技術秘匿の為に兵を貸し出しているってのもあったし、他社の情報を盗み取った場合は有罪になってザマルから身の着のままで放逐なんてのもあったかな。」


───ありがとう。よくわかった。


「飽きない国さ。競争が絶えない。」


「次はそうだな。手術をしようか。その前に説明をしないとね。」


 トントン拍子で話が進んでいく。

 ばっさりとザスターは話の流れを断ち切り、本題を話し始めた。


「君は人魔混合兵だが、その手術の際、君はアークデーモンの翼を移植されたね?」


───ああ。


「その時、魔族のみが持つとされる【コア】も埋め込まれたんだ。移植元…【ブーン】の死と同時に消えるかと思ったが。君の身体に定着している。実験は成功だ。」


───まてまてまてまて。


───コアってなんだ?


「魔族のみが持つ、【粒子生産機関】さ。」


 知らない単語を聞いたら、知らない単語で説明されたアーサー。

 彼の頭はボロボロであった。


「…あぁ、この言い方だと誤解を孕むな。もちろんだが、人間にも【粒子生産機関】はついているよ。【魂】という形でね。」


「ついでにこの話はオフレコ…私と君との秘密で頼む。【粒子】の存在はまだ公表してない概念なんだ。」


───えーと、【粒子】ってのは?


「【粒子生産機関】が生産するものだ。主に我々の体を構成している。粒子同士が近づくとその間に魔力を形成する。魔法使いが魔力を使いすぎると指先が灰化するのは聞いたことがあるだろう?あれは魔力を失うと粒子同士の結合が解けるからなんだ。」


 一を聞いて十を知る。

 その言葉を慣用句的ではない意味で体感したアーサーであった。

 いきなり十を話すんじゃねぇと思いつつ、アーサーはザスターに何か聞くのをやめた。

 ザスターに質問するのは、藪をつつくのと同じ事であるとわかったからだ。


───だいたいわかった。


「で、本題だ。今回は君の【魂】とブーンのものだった【コア】を結合する。君は最悪の場合キャラクターデリートになるかもしれないが、誰も試してない事だ。協力してくれるね?」


───ああ。


 アーサーはザスターの話が長いので適当に聞き流した。

 その結果、キャラクターデリートの言葉は耳に入らなかったらしい。


「ありがたい。では、早速始めよう。ここに仰向けになってくれ。麻酔の注射を打たせてもらう。」


 アーサーは手術台の上に仰向けになった。


「今から手術室に移動する。その間に麻酔が効いてくるだろう。」


 ガラガラと、車輪が回る音がする。


(強くなるって、レベルアップ的なことをするんだろうと思ってたけどなぁ…。)


 アーサーはラマンダのことを思い出していた。

 彼はおそらく、このような改造手術は受けずにコツコツと強くなっていったのだろう。


(ごめんラマンダ。俺どんどん人外になっていくわ…。)


 2度目の手術。

 アーサーが辿るは生か、死か。

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