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第六話 敵弱くなってね?




 【ラベル草原】を出て一時間、ようやくストーリーモードの正規ルート【暗黒樹海】にたどり着いた。

 ここまで洞窟の中を通ってきたが、一回も魔物と会わなかった。【ラベル草原】に続く道はいつでも平和みたいだ。ここはゲームとは違った。


「ここって正規ルートだよね」


 日向子も気付いていた。流石は三年プレイしてるだけある。


「たしか、ここを左に向かえば街があったな。はぐれないでくれよ、日向子」

「オッケー、ずっと隣りにいるね」

「まぁ、いいけど」


 日向子は俺の左腕を掴んで離さなかった。

 森が深くなるに連れて腕を掴む力が強くなっていった。


「日向子。もしかして、お化けが出てきそうな場所が苦手なのか?」

「……そ、そうね。お化けは昔から無理なの」

「完璧女子になっても、そこは変わらないんだな」

「生まれつきの性格は変わらないの!」

「それもそうだな」


 日向子と喋りながら森を歩いていると、魔物の気配がした。

俺は歩みを止めた。


「か、海くん。どうしたの」

「魔物が近くにいる。多分、戦闘になる」

「えぇ……ちょっと怖いなぁ」


 この世界に来て、初めての戦闘。

 ゲーム内では俺の職業は【魔術師】だった。だから、戦闘では魔術を使っていた。

 しかし、実際に使うのは初めてだから、うまく発動しない可能性があった。ここは慎重に行こう。


「おそらく、そこの茂みに魔物がいる」


 指差した場所から予想通り、魔物が出てきた。

 出てきた魔物は、体長2m程ある狼で火をまとっていた。この魔物は【フレアウルフ】だ。第八エリアに出てくる代表的な魔物で、その魔物の平均レベルは120だ。


「とりあえず、やってみよう。どうなるか分からないが」

「が、頑張ってね!」

「おう!」


 魔術は術式を組んで発動する。魔術には階級があり、基本的には第一階位から第十階位まである。もちろん、例外もある。俺のみたいに。

 数字が大きければ大きいほど威力が強い。


 さて、どうやって術式を組むか。指に魔力を通し直接書くと時間がかかる。魔術師が絶対にやってはいけない方法だ。ここは、異世界ものの知識が使えるのか? たしか漫画とかでは、頭の中でイメージすれば出てくる、そんな感じだった気がする。


 頭の中に術式を組み想像すれば出来ると信じ、実際にやってみた。

 頭に第一階位の【ファイヤー】の術式をイメージしてみた。術式を明確にイメージして……。


ブォン!


 手元に魔法陣が出現した。その魔法陣をよく見れば、俺が知っている魔法陣と同じだった。どうやら成功したようだ。


「くらえ!【ファイヤー】」


 手元から炎が噴き出し、目の前の草木を燃やしていく。

 しかし、明らかにおかしい。最下級の第一階位では、このような高火力にはならない。

 原因はきっと、魔力の制御が出来てないので、必要量の何十倍も使っているからだろう。


「海くん。これ、ただの【ファイヤー】なの? どう考えてもおかしいよ」

「あぁ、やり過ぎたみたいだ」

「そうみたいね。ほら、さっきの魔物、丸焦げだよ」


 日向子が指差す方向には、黒焦げになったフレアウルフが横たわっていた。

 おかしい、これもおかしい。

 フレアウルフは元々、火属性に耐性を持つ魔物だ。普通は火属性の魔術では倒せない。高位魔術ならいけるかもしれないが。

 それなのに、最下級魔術で一撃なんておかしい。


 考えられる理由は二つ。

 一つは、俺の魔術が強かった。しかし、それでも火属性の耐性がある魔物に最下級魔術が効くとは思えない。となると、もう一つの方が可能性が高そうだ。

 もう一つは、魔物が弱くなった。弱体化の理由は想像もつかないが、おそらく原因はこれだろう。


 もしかしたら、この世界の敵キャラや魔物は全て弱体化されているかもしれない。

 一体どうなっていることやら……。




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