第三話 俺のゲームデータは残っていた
何故、日向子がこの場所を知っている?
確かにこのゲームは世界中でも人気があり有名だった。日向子がプレイしていてもおかしくはない。
しかし、この場所はストーリーモードの第八エリア、しかも森の奥深くの危険地帯を抜けた先にある。
ここは相当プレイしてレベルを上げないと進めない。その上、このゲームの攻略本や攻略サイトには掲載されていない。きっと、運営があえて載せていないのだろう。見つけた人はラッキーといった感じだと思う。
つまり、このゲームを相当プレイしてないと知らない場所ということ
ということは、日向子はこのゲームをプレイしていて、しかも相当していることになる。
「ひ、日向子……」
「か、海くん! ここって……」
海くんとは俺と日向子の間だけの呼び名だ。
「あぁ。俺イチオシのゲーム【NAW】だな」
「そ、そうだよね」
「ところでさ。なんで日向子は【ラベル草原】を知っているんだ」
「え! あ、えっと、それは……」
明らかに動揺していた。別に隠す必要なんて無いんだが。
日向子は照れながら……
「じ、実は、二・三年前からやっていたのよ。海くんが興味のあるゲームがどんな物なのか知りたくて……。そしたらハマってしまって……」
「二・三年前……日向子も古参勢の仲間だったのか。意外だった」
「わ、私は海くんみたいにオタクじゃないから! ガチ勢じゃないから!」
「俺はオタクじゃない!! ガチ勢と言ってくれ!」
「い〜や、私からしたらオタクよ。認めなさい、海くん」
「いや俺は……」
俺と日向子は日が完全に暮れるまで言い合った。
だけど、これはこれで楽しくていい。最後にはお互い笑いあった。
・ ・ ・
「そろそろご飯食べようか」
「そうね。食材は?」
「アイテムボックスにたくさん入っているから、それを使おうか」
俺はアイテムボックスから牛肉や野菜をとりだした。
よかった、ゲームデータが残っていて。なかったら、食料調達をしなければいけなかった。
「さぁ料理するか……って言っても、残念ながら調理スキルは持ってないんだよなぁ」
「ふふん! ここで私の出番ね。こう見えてプレイ歴三年、料理スキルを上げていたのよ」
「ほぇ〜。さすがガチぜ……」
「海くん?」
「なんでもないです」
危うく、毎度お馴染みの説教が始まるところだった。
「私の料理スキルはLv10。料理ならお茶の子さいさ……」
「どうした?」
「私の調理スキルが……ない……」
「え?」
「それだけじゃない。データが消えてる!」
それはおかしい。だって俺のゲームデータは残っているもの。
バグか? それともただ単純にデータが消えたか?
「レベルも1になってるし、職業もない」
「え、てことは今はニート……」
ゴツっ!
日向子の拳が俺の脳天に落とされた。痛みはある。HPも少し減った。本当にゲームみたいだ。
「せ、せっかくLv169まで上げていたのに……」
「お前、やっぱりガチ勢じゃん」
「ガチ勢じゃないもん!」
しかし、どういうことなんだ。
ゲーム内に入り込むし、日向子はゲームデータは消えるし、一体どうなってるんだ。