第二話 幼馴染がいた
俺は今、混乱している。
何故かと言うと、俺のイチオシゲームの中に入ってしまったからだ。
そしてここは第八エリアの【ラベル草原】。
【NAW】ストーリーモード。オフラインでもオンラインでもできるゲームモードの一つ。
第一エリアと呼ばれる区域にある【始まりの泉】から冒険は始まり、最後の第十エリアにある【暗黒領域】に住む邪神を倒すものだ。
しかし、邪神討伐は一つのエンドにしか過ぎない。他にも、自らが一国の王となる国王エンドや邪神に寝が入り魔王となる魔王エンドなどストーリー中の選択によってエンドが変わるのだ。
これがストーリーモードの面白さなのだ。運営側が半年に一回のアップデートでエンドの種類が増えたりもする。
無論、俺は運営が用意したエンド全てをマスターした。
しかし何故、第八エリア【ラベル草原】なんだ?
普通なら第一エリアからのスタートのはず。そういえば深夜、ここでセーブして終わりにしたっけ。
それなら納得はいく。
それにしても、転移先が【ラベル草原】だったのは不幸中の幸いだった。ここは第八エリア。もっといえば、終わりに近い場所。エリアが進むごとに攻略の難易度や魔物などの敵も強くなる。
言わばここは、最終区画のオアシスだ。
後半のエリアで唯一、魔物や敵が現れない不思議な草原。しかし、一般のプレイヤーではここを見つけるのは困難だろう。
なんせここは第八エリアの中で第九エリアに近い場所にある。それにここは攻略ルートからは外れている場所だ。面倒くさがってスルーし、ここの存在に気づかないプレイヤーが大半だった。
「しっかし、本当にここでよかった」
俺は草原に大の字に寝っ転がった。ここはのどかだ。永遠に続く青い空、涼しい風。今は全て忘れてとりあえず寝よう。
・ ・ ・
「ふぁぁ〜〜。よく寝た」
随分と昼寝をしてしまった。日は傾き、今にも日の光は山脈の山々に遮られる所だった。
慌てて起き上がり、辺りを見渡したら……
「な、なんで……」
俺の横でスヤスヤ寝てる女の子がいた。そう、西条日向子だ。
「なんで日向子がここに!?」
「……むにゃ……あれ、海くん? どうしたの……」
日向子も周りの風景が違うことに気づき、体を起こした。
辺りをキョロキョロしたあと、俺にギリギリ聞こえるような声で……
「ここって、【NAW】の第八エリアの【ラベル草原】じゃない……」
え? なんで知ってるの。俺は日向子のことしばらく見続けた。