第十一話 脳筋だった
遅れてすみません!!
思い出した。モルス・モーガンは脳筋だった。
ストーリーでは、パルティアのギルドの入ったらモルスがやってきて、バトルを申し込まれるイベントがあった。通常ルートで行くと、必ず戦闘になる。
もっとも、ストーリーを何度も周回してる俺からすれば慣れたイベントだが、ここ最近はモルス戦闘回避ルートが見つかり、そこばっかり通っていた。
故に、モルス戦はほとんど記憶から抜け落ちている。
通常ルートの通り、ギルド裏の訓練場で戦うことになった。
モルスは背中に大剣を背負ってきた。ゲーム通り、大剣士のようだ。
持っている大剣は黄金鉄で出来ている特注品だ。硬度も申し分なく、ストーリー上最高硬度の大剣だ。
もっとも、パルティア攻略後にある隠し遺跡には、黄金鉄よりも硬い金剛鉄の剣が手に入るが、知らない人が多すぎる故に黄金鉄が最高硬度とされている。
このモルス戦では、通常ルートで行くと黄金鉄の大剣を超える武器がないため、かなりの苦戦を強いられていた気がする。
だが、俺の手持ちには世界最高峰の武器がある。隠しルートや裏技で手に入れた武器がたくさん持ってる。
俺はアイテムボックスから白く輝く長剣を取り出した。俺が持っている武器の中で二番目に強い(多分)。一番強い武器を出すと、色々と問題がありそうだったのでやめた。
武器の名は【星剣クレイモア】。運営情報によると、超低確率で且つドロップスポットがランダムの超希少鉱石である【星屑の石】で出来ているらしい。
【星屑の石】の硬度は黄金鉄を遥かに超え、その上何らかの特殊効果がつくみたいだ。
星剣クレイモアの特殊効果は、ゲーム内だと【虚無】という効果だ。だいたい名前で想像がつくが、ゲームで使ったことがないから実際はどうなるか分からない。
俺は慣れない剣を構えた。一応は学校で剣道を教わってるから、構えくらいはできる。が、剣の腕は素人だ。
それに比べ、モルスは慣れた手付きで大剣を構えた。
「勝負はどちらかが負けを認めるまでじゃ。良いな」
「あぁ、お手柔らかに」
先に動いたのは、モルスの方だ。
大剣を大きく振りかぶり、そのまま振り下ろした。
俺は咄嗟に後ろに下がった。さっきまでいた地面が大きくえぐれていた。
このおっさん、本気かよ!
俺はすかさず、胴に向かって剣を振った。思った以上に振った速度が速かった。レベルが高いおかげなのかもしれない。
モルスも俺の速度に反応しきれなかった。腹部にザックリと傷をつけた。
「まさか、この儂に傷をつけるとは見事なり」
「お褒めに預かり光栄だな」
「お主なら、儂の本気を見せてやろうぞ」
モルスは大剣を横に構え、腰を低くした。
あの構えは、たしか……。
「儂の技を受けてみよ、若造よ。【斬撃旋】」
やはり【斬撃旋】か。モルスの得意技で、大剣に魔力を付与して斬撃を飛ばす技だ。
この技の恐ろしい所は、不可視であることだ。初見では回避が難しく、慣れてないと回避どころか相殺すら出来ない。
【NAW】ストーリーモードの中でも難関ポイントと言われる理由の一つだ。
しかし、俺には星剣クレイモアの能力もある。
早速ながら、星剣の力を見てみるとしよう。
「目覚めろ、星剣クレイモア!」
持っている星剣が黒く変色していく。
真っ黒になったその時、俺の目の前に真っ黒い球体が出現した。これが特殊能力【虚無】か。
出現したブラックホールは、徐々に周りのものを吸い込み始めた。
モルスが飛ばした【斬撃旋】もブラックホールに流され始め、そのまま吸い込まれた。
「なんじゃ、その球体は!」
「この剣の力ですよ」
モルスは何度も【斬撃旋】を飛ばすも、為す術なく吸われていった。
ブラックホール、すげぇ。
モルスは無駄だと思い、剣を振りかぶり、向かってきた。
俺は再び剣を構え、モルスの大剣を受け止めた。
モルスの一撃が重い。まさしく、力こそパワー。
俺は剣の力を込めて弾き返し、すかさず剣を叩き込む。だんだん、剣の扱いにも慣れてきた。
すると、頭の中でアナウンスが流れた。
:スキル【超越】により、モルスの【剣術S級】をトレース・強化、【剣術SS級】を獲得。スキル【超越】と統合しました:
剣術SS級。これまたとんでもない能力を獲得したな。早速、使ってみよう。
は、速い! 先程とは打って変わって、剣の腕が急激に上昇した。
わかる、相手がどんな動きをするのか。相手の動きがスローに見える。
「!! お主、急に動きが」
どんどんと、モルスを押していく。相手は自分を守るのに精一杯のようだ。
俺は大きく星剣を振りかざし、力強くおろした。
モルスは防ごうと剣の横にして受け止めた、その瞬間。
バキィィン!!
モルスの大剣は星剣の硬度に耐えきれず、真っ二つに折れた。
「……儂の負けじゃ」
「そ、そのようだな」
ようやく、モルス戦が終わった。
このおっさん、脳筋だ。
星剣クレイモア
・・・
グレード:特異級
特殊能力:虚無
攻撃力:SS
耐久性:SSS
次回は公式設計資料集です。