おねぇ男子は好きなあの娘に手作りお菓子をあげて告白したい!
「今日こそ、花嶋さんに私の手作りお菓子を渡してそして…告白するんだからぁ!」
早朝。まだ誰も来ていない教室。あたしは自身の席に座り、昨夜作ったクッキーを壊れないように胸に抱き、拳を握った。
普段ねぼすけのあたしが早起きして教室に一番乗りした理由…それは、好きな女子に、花嶋咲さんに告白するためよぉ!
環境委員の花嶋さんはクラスの誰よりも朝早く来て、花壇のお花のお世話をしているそうなの。
人の少ない早朝なら…と思って、あたし頑張って早起きして来たのよ。
─ガラリ。
「あれ?荻原君早いね。おはよう」
席に座って花嶋さんが来るのを待っていると、花嶋さんが来た。
キタアアアーー!!
花嶋さんが来たと同時に、あたしの心臓が胸の内を暴れだした。
「あっ、あのね花嶋さん!」
声を裏返しながら、あたしはガタンと勢いよく席を立った。
「ん?どうしたの荻原君」
こてんと首をかしげながら言う花嶋さん。アアンもおかわいいっ!…じゃなくて。
「あの…こっこのお菓子…」
震えながら花嶋さんにお菓子を渡そうとした時。
「お~お前ら早いな。お早う」
通りすがりの担任があたしたちに声をかけてきた。
「花嶋は花の世話か?毎日偉いな」
「いえ」
「お?いつも遅刻ギリギリの荻原も早いな。花嶋の手伝いか?」
「あ、え…はい」
「お前らほんと偉いな!よっしゃ、俺もお前らと一緒に花の世話するか」
「え?でも先生忙しいんじゃ…」
邪魔しないでよ!と内心で思う。
「まだ朝早いし、大丈夫!」
そう先生は言って、ガハハと豪快に笑った。
◆
「はぁ~…結局告白できなかったわね」
放課後。自分の席で突っ伏しながら呟く。
結局、朝は先生が邪魔で告白ができず。
その後も、タイミングを見て告白しようとしたけど…なかなか1人になることがなくて。
「こうなったら放課後…と思ったけど、花嶋さんどっか行っちゃったし」
ぐうっ、とお腹がなった。
「このクッキー食べちゃお…」
ラッピングを開け、クッキーをサクリ。
「はぁ。花嶋さんにあげたかったわぁ…」
そう1人で呟いていると。
「美味しそうだね」
声がしてその方を見ると、そこには花嶋さんが立ってた。
「荻原君の手作り?」
「え!う、うん」
「1枚もらっていい?」
「も、もちろんよ」
花嶋さんはそう言って、クッキーを1枚食べた。
「おいしー!荻原君私のお嫁さんにならない?」
「やだもー!からかわないでよ…え?」
「本気…って言ったら?」
そう言った花嶋さんの頬が、夕焼け色に染まっていた。