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9.君と僕達はsoul mate

呪いを解くタイムリミットまであとわずか。

そんな六花に声をかけてきたのは

幼なじみだと言い張る陽キャ、梨桜だった。


関わりたくない六花だったが

彼女の強引な勧誘により

昼ごはんを共に食べることになってしまい……

この歌、聞き覚えがある気がする。

かすかに聞こえてくる鼻歌に、何の歌かわからないもやもやを抱えることしかできなかった。

屋上に向かう階段を昇っていく最中でも、彼女は色々な人に話しかけられる。

そりゃあもう、色々な人に。


一年や二年、そして同級生達。誰に対しても変わらない態度で接する長谷部さん。

話しかけられることはないものの、憧れのようなまなざしを向けられている久保薗さん。

こんな光景を見せられる私の身になってほしいっていうか、こんな人たちに友達になってなんてとても言えたもんじゃない……


「お待たせ、ほたるん! 例の子をお連れしやした~!」


「おっ、意外と早かったな。待ってたぜ、梨桜、楓」


ドアを開けると、柵の方で一人、手を振っていた。

オレンジ色のショートヘアに、すらりと伸びた手足。

私より遥かに背が高い、男性だった。

ネクタイの色から同じ学年だと見て取れる。

首には赤い宝石があしらわれたチョーカーをしてあり、私が見ただけで、彼はにかっと笑ってみせる。

こんなイケメン、うちの学年にいたのか。そんなことを考えながらも、ついつい彼をじっとみつめてしまって……


「初めまして、だよな。あたしは須賀蛍(すが ほたる)。梨桜と楓から話は聞いてるよ。よろしくな」


「ど、どどどどうも……今泉六花です……」


「あはっ、六花ちん緊張しすぎ! 大丈夫! こぉんな格好してっけど、ほたるんうちらと同じガールズだから♪」


「へぇ〜そうなん……え、女の人……!?」


「あはは、まあ一応な」


言われてみれば、まつ毛が少し長い気がする。声も高め……に聞こえなくもないし。

びっくりした。男性用の制服着てるし、てっきり……

女子で「かっこいい」が似合う人なんて、本当に存在してたんだなぁ……


「よぉし! ほたるんの挨拶も済んだことだし、飯食うぞい~~んもぉお腹ぺこぺこ〜」


「お、今日は弁当作ってきたんだな? 梨桜」


「さすがほたるん、お目が高い! 本日は梨桜ちゃんが作ったスペシャルなお弁当ですぞ~いつまでも買い弁だと栄養偏っちゃうからね!」


「それ、ただ金欠なだけでしょ?」


「ぐはぁ! な、なかなかやるではないか選手楓よ……」


その場に座った3人がお弁当箱を広げる。

卵焼きや、ウインナー、それぞれ多種多様な具が、弁当箱に敷き詰められていた。

同じ弁当なのに、なぜか他の人のはおいしそうに見えてしまうのはなんでだろう。

それに比べて私は、普通というかなんというか……


「六花ち~ん? そんなにうちの弁当見てどーし……ははーん? お主さては、梨桜印のお弁当が食べたいのかね?」


「えっ、あ……すみません、そう言うつもりは……」


「よろしい! ではお主のおかずとわしのおかずを交換じゃぁぁぁ!」


言い返す暇も与えず、彼女はものすごい速さで私の弁当から卵焼きを取ってしまう。

一瞬にして卵焼きがあった場所には、からあげが置かれていた。


「いっただきまぁす。うひょぉ~~~お・い・し❤︎」


「ちょっと梨桜、また勝手なことして今泉さん困らせちゃ……」


「楓っぴもほたるんも食ってみ?? 超うまいから!」


「え、ほんとか? じゃああたしの卵焼きと交換ってことで」


そう言うが否や次は須賀さんが私の卵焼きを取り、自分のと交換してくれる。

彼女も彼女で、うめぇなこれ! と大袈裟な声を上げていた。

私からしたらもう、何が何だかわからなくて……


「……そこまでいうのなら私も交換しようかな……今泉さん、どれがたべた……? 全然食べてないけど、どうかしたの?」


「あ、いえ、その……おかず交換とか、したの初めてで……」


「えっ、そうなのか? なら貴重な体験だな! 一個といわず、あたしのも食べていいぞ!」


にかっと須賀さんが笑いながら、自分の弁当に手を付ける。

そんな様子を見つつ、私も長谷部さんが置いたからあげを一つ口にする。

同じようなからあげだというのに、今まで食べたどのからあげよりも、とてもおいしく思えた。


「初めてのおかず交換がうちらとは、感慨深いねぇ。六花ちんの記憶に、うちらの名前刻んじゃったんじゃない!?」


「はは、大げさだなあ梨桜。そういや今泉さんは、普段はどんな子達と食べてるんだ?」


「……私、友達とかいなくて……いつも一人で食べてるんですよねー……」


こんな時にうまく嘘を付けたら、どんなにいいだろうと思う。

わざわざ自爆するようなことを言ったのは、彼女達と距離をおこうと思ったからだ。

この人達と私じゃ、天と地くらいに差がある。


だから今日で、最後にしよう。

この人達のためにも、私と関わらない方がいい。

やっぱり、無理なんだよ。17年も一人だった私が、友達を作ることなんてー……


「そっか、でもこれからはぼっち飯じゃなくなるねん」


突然思いもかけない言葉が聞こえて、へ? と声を上げる。

何を言ってるんだこの人は、といわんばかりの瞳をむけてもなお長谷部さんは、にんまりと笑ってみせた。


「六花ちんの友達は、もう目の前にいるじゃん♪ うちらとお昼食べたり、遊んだり……これからでも全然遅くないっしょ!」


「で、でも私、そこらへんに生えてる木と同じ、っていうか……あなた達のような人気者と凡人の私が釣り合うわけ……」


「誰が六花ちんを木とおんなじって決めたの? そんなの友達になってみなくちゃわかんないじゃん! 少なくともうちは六花ちんのこと、友達だって思ってるけど?」


この人は、本気で言っているのだろうか。

学校生活を送るたびに不安で、憧れていた「友達」の関係。

それを、たった一言でこんなにいとも簡単に……


「それでも、私には無理です! だって私はっ、今まで本当に友達が……!」


「今までいなかったんなら、今から!! 作ればいい話!!! でしょ? お二人さん♪」


「まあ、出会ったばっかで何が分かるんだって思うかもしんないけどさ。あたし達だって同じ普通の人間だぞ? 人気者って言うほどでもないし……あたしは友達になりたいぞ! 今泉さんのこと、もっと知りたいし!」


「私も、蛍と同じ意見かな。少なくとも、ここで断っても、梨桜は簡単には引き下がらないと思うけど」


久保薗さんが呆れたように、少し笑っている。

えへへと照れたように頬をかく長谷部さんをしょうがない奴、といって須賀さんが笑いかける。

そんな光景に、私はどうしようもなく言葉がでなかった。


……私は今、夢を見ているのだろうか。

今までずっと、ずっと憧れていた。

行動しようにも自分からじゃ全然動けなくて。つまらない意地とプライドが何かを邪魔して。

気がついた時には一人が当たり前で。

呪いをかけられて、何もかもがうまくいかなくて、友達なんて作れる気がしなくてー……


「お、おい梨桜? 今泉さん、泣いてないか?」


「え~~またまたそんなこと言……うえ!? マジで!? ほんまや!」


「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いて……だ、大丈夫、今泉さん」


待ち望んでいた、リア充への一歩。

今までの苦労が報われたような気がして嬉しくてこぼれてくる涙を、私は止めることが出来ない。

あまりに私が泣くから、3人が心なしか慌てているようにも見える。

あんなに強くて、かっこいいこと言ったくせに。なんだか、どうしようもなく暖かく思えて……


「……六花って、呼んでください……こんな私ですが、これからよろしくお願いします」


今泉六花、十七歳。高校三年生の春。

こんな私を友達と呼んでくれる、そんな素敵な人に、出会いました。


(ツヅク!!)

と、いうわけで、

これにてお友達が揃いました〜!


まあフルネームが明かされた時点で

多分この子達が友達になるんだろうと

予想されてた方もいるんでしょうけどね。


個人的に今回のキャラはみぃんな好きで、

すごいこだわりぬいた名前です。

言われなきゃわからないくらい細かいので

あとでまた説明します笑


次回は4日更新!!

呪いからの解放……!?

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