8.学園ものあるあるその② 陽キャは一癖も二癖もありがち
呪いのタイムリミットまであとわずか。
そんな中、宿題を手伝ってくれると
委員長・楓が話しかけてくれる。
しかし六花はその一歩が踏み出せず
友達になることができない……
その時、やってきた一人の女性が
六花を見た途端に大声を発し……?
「い、いたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
珍しい物を発見したかのような、大袈裟すぎる声が教室中に響く。
なんだなんだと周りの人達が、私たちを見てるのが分かる。
それはこっちのセリフだよ、とつい言いたくなりそうになる。
周囲からの目線だけで勘弁してほしいのに、彼女はどんどん私の方に近づいてきて……
「あんた!! 今泉六花だよね!?!?」
気がつくと、目の前に彼女がいた。
ばんと机を叩いた音にびっくりしつつも、咄嗟に
「えっ、あ、はい」
とその問いへの返事をする。
「やっぱり!! やっと会えたぁぁ。うちだようち! ほら、ひがん保育園で一緒だった長谷部梨桜だよ!」
この人は、さっきから何を言っているんだろう。
こんなに主張が強い人、私の記憶の中には存在しない。
そもそもこんなに目立ってるような人なら、かすかに覚えていてもいいはず。
それでもわからないとなら、私のやることは一つ。
「えーーっと、すみません。人違いじゃないですか?」
正直に知らないと答えるだけ。
「嘘っ、だって今の泉に六の花ってかいて六花でしょ? 絶対そうだって! 覚えてないの?」
「全然心当たりが……同姓同名の別人じゃないですか?」
私がこんなに違うと言っても、彼女はえーー、うーーんと唸りつつ、全然認めようとしない。
すると、しびれをきらしたかのように久保薗さんが、彼女をサッと遠ざけてくれた。
「ちょっと梨桜、いきなり来て騒がしすぎ。用がないなら帰って」
「えっ、ひどっ。うちは貴方様をお迎えに上ったというのよ~?」
「別に、私頼んでないから」
「あらやだ! なんて子なの!」
彼女の言葉を聞いてもないように、久保薗さんは私にごめんねと小さく謝る。
りお……確かにこの人は、そう呼ばれていたし、そう名乗っていた。
もしかしてこの人、クラスメイトが話してた久保薗さんと対等に話せる「りお」さんなんじゃ……
「こほん、えー失礼つかまつった。改めてうち、長谷部梨桜ってんだ。多分だけど、保育園が一緒だったのはぜっったいほんとだと思う! 家帰ったらみてみて!」
「まあ……覚えてたら……」
「そーだ! 今度一緒にお昼食べよーよ! 梨桜ちゃんのとっておきをご馳走してあげる!」
え、何これ。どういう状況?
だってこの人、溢れんばかりの陽キャだよ?
そんな人に食事に誘われるとは何事??
こんな目立つような人となんて、私がいていいわけ……
「ちゅーわけで、後日お迎えに参りますので! 楓っぴ、またあとでねん♪」
断る暇も与えないとばかりに彼女は、ほいなら~といいながら去ってゆく。
一気に静かになった教室の中、久保薗さんは小さく「ごめんね」と呟いたのだった。
それからというもの、私は何もなく平穏に過ごしていた。
私が一線置いてることもあってか、久保薗さんからはあれ以来話しかけてくることはなかった。
クラスメイトも隣の席、とかのよしみで話す程度。友達関係とは言い難い距離を保っていた。
一人でいるせいなのか、御影さんの視線が気になりはしたけど。
彼から特別話しかけられることもなく、何も行動を起こせぬまま呪いを解くタイムリミットまであと四日。
もうさすがに無理だ、お母さん達に申し訳ないな。
死ぬ覚悟をし始めだした、そんな時だった。
「ハローー!! ロッカ、イマイズミ! 約束を果たしにきたZe☆」
彼女が再び私の前に現れたのは。
にこにこ笑っている彼女からはなんの悪意も感じられず、純粋に誘ってくれていることは目に見えてわかる。
が、そんな彼女に対して私が取る行動は、もちろん一つ。
「約束? 一体、何の話ですか?」
知らないふりをしてすっとぼけるのみ。
「え~もううちのこと忘れたの~? 悲しみ~~今日くるから伝えててって、楓っぴに言ったのにぃ」
「私、知りませんけど」
「もぉ、六花ちんのそゆとこ……嫌いじゃないぜっ」
まるで前から私のことを知っていたように話すな、この人。
いくらタイムリミットが近いとはいえ、正反対すぎる陽キャと仲良くなるなんて私には到底無理。
人を選んでる場合じゃないなんてこと、わかってるはいるんだけど……どうも私、こういう明るすぎる人って苦手なんだよなぁ……
自分勝手そうだし、トラブルに巻き込まれそうだし、あとはえーっと……
「あっ、そーだ! アルバム! 見てくれた? うち、いたでしょ?」
こんなふうに、無理矢理にでも関わりを持たそうとしてるところ、とかも苦手だな。
幸い、物の管理はすべて親に任せているので……
「……保育園の頃の物、ほとんどどこにあるかわかんないので……見てないですけど」
「ガーーーーーーン! マジかぁ、そっかぁ〜ええい、かくなる上は、うちの開かずの扉といわれている物置から探し出すしか……!」
「梨桜? こんなとこで何してるの」
彼女の後ろから、教科書を抱えた久保薗さんが不思議そうに首を傾げている。
ちょうどいいところに、と思ってしまった。
彼女がきてくれれば、少しはこの人が大人しくなってくれるかも。
しかしそう思ったのも束の間、長谷部さんがまた声を上げて……
「おお、きたね楓っぴ! ほたるんとうちら四人で! ランチタイムすっぞ!!」
「え、今日? 明日やるって言ってなかった?」
「あり?? そだっけ? まあいいじゃん、細かいことは!」
「せめて今泉さんの都合を聞いてから、でしょ? ごめんね、今泉さん。そういうわけなんだけど、今からどうかな?」
他の人と食べる予定があるから、無理かな。本当はそう言いたかった。
だけど、ないものをあると嘘をついたら、ばれた時が気まずくなってしまう。
でも行きたくないのは事実だし……うむむ……
「あー……あの私……」
「もぉ、話してたらお昼終わっちゃうじゃん。ほたるんも待たせてることだし、いくぞ六花ちん! 屋上へ!」
断る理由を探していた私を、思いっきり引っ張っていく。
こうなったら私は言わるがままにするしかなく、ただただ彼女に連れられて行くしかなかった……
(ツヅク!!)
早いもので、もう8話なんですね。
人物が結構でてはきていますが、
はたして物語が進んでいるのかいないのか……
もはや分からなくなってきています。
そんな中出てきた梨桜は、かなりの陽キャです。
作者的に、物語を書く上ですごく助けられますけど
実際に絡む、となると話が違ってきそうですね
果たして六花はこの後どうするのやら。
次回は31日更新。
この出会いが吉と出るか…!?