4.主人公が呪われたそうです
神様と名乗る人物から
プレゼントをもらえることとなった六花。
半信半疑のまま、届いたのはネックレスだった!
喜んだのも束の間、身につけた途端、
謎の声が聞こえてきて……
わいわいと、はしゃぐ生徒の声が聞こえる。
その話の内容は昨日のテレビ見た? とか、一限目の授業なんだっけ? とか、たわいのないものばかり。
そんな話に入ることも、混ざることもしない私はプレゼントという名のネックレスを貰って、早一時間。
これ、まっっっったくもって、とれる気がしません。
あのあと妹にも協力してもらったり、インターネットでありとあらゆる方法を調べて試してみたけどなんも変化なし。
仕方ないから、学校にまでつけざるを負えない状態だ。
幸い、うちの学校じゃ華美でなければ、アクセサリーをつけることは禁じられてない。
にしても、あれだ。どうしよう。
やっぱりあの神、偽物だったんだ。そうじゃなきゃ、外れないネックレスなんてくれやしない。
それに、あの時聞こえた、謎の声はなんだったんだろう。
呪い、とか言ってたけど……いやいや、ないない。ゲームなんかじゃあるまいし……
「みなさぁん、席について。皆さんに、嬉しい情報があります」
そんな私に気づきもせず、先生が教室に入ってくる。
すると遅れて、一人の青年が教卓の横に立って…
「紹介するわね、新しくクラスに仲間入りした黄菖御影君彼は最近この辺に引っ越してきたそうよ。黄菖君、自己紹介を」
「……黄菖御影だ、よろしく」
きれいに整えられた、少し長めの前髪。
黒髪の中に、一本だけ白色のメッシュが入っている。
短く放たれた声は、なぜかどこかで聞いたことのあるようなきがして……
「では今泉さんの隣に座ってもらいましょうか」
先生の声が聞こえた時には、彼の姿が目の前にあった。
クラスメイトの視線は、どれも彼を向いている。
そんなことを気にもしないように彼はじっと私をみていた。
漆黒に染まった瞳からは、何も感じられなくて……
「貴様が、今泉六花か………」
何も知らない、何も話していないはずなのになぜか彼は私の名を知っていた。
え、と声を漏らすと、彼はそっと耳元で
「今日の正午、屋上に来い」
とささやいた。
返事もままならないまま、私と彼が会話を交わしたことはそれっきりだった。
長い階段を、ようやく登り終える。
はぁっと一息つきながら、ゆっくりとドアノブをひねる。
向こうに広がるのは、コンクリート状の床にフェンスで囲まれた屋上だった。
そしてその中央付近に、彼ー黄菖さんがいた。
「正午ちょうどか。定刻通りだな」
「あ、あのぉ、何かご用、でしょうか~?」
「自分からつけておいて気付いていないとでもいうつもりか? こんなくだらない茶番に、僕を巻き込まないでほしいものだ」
そういうと黄菖さんは自分の腕にはめていた、腕時計に似たようなものをタッチする。
すると、そこからホログラムのような映像で人が映し出され……
『ハロー、六花ちゃぁん♪ How are you?』
なんとあろうことか、そこに映されたのはあの神だった!!!
「あ、あんた昨日の!! え、なんで黄菖さんが…」
『どうやら無事にコンタクトが取れたようだね。御影ってばひどいよねぇ、なーーんも連絡くれないんだもん』
「いちいち報告するのが面倒なだけです」
『相変わらずつれないなぁ~あー、そこにいるのは僕の連れの御影。天界人で、僕の代わりに地上にいることになったんだけど、なんとその御影! 同じくらいの歳にみえて、君より年上なんだぞぉ~?」
「……え、これ年上?」
「失礼な奴だな。それが目上の人に対する態度か?」
ああ、これはこれは失礼しましたっと……
にしても、驚いたな。この人が、天界の人だなんて。
どうみても、同じくらいの高校生にしか……
『あ、そうそう。僕からのプレゼントは、気に入ってもらえたかな?』
あっ、そうだった!
「気に入ってもらえたも何も、ただの不良品じゃないですか! 取れなくて困ってるんですけど!?」
『そりゃそうだよぉ、呪いが解けるまで取れない仕組みにしてるんだから~』
「呪いって、いったいなんの……!」
『あれ? つけた時に聞こえなかった? じゃあもっかい言うね。君は、友人を作らなければ30日後に必ず死ぬよ』
急にトーンが落ち、彼女の笑みが狂気なものに変わったようにみえた。
途端に、ぞくりと背筋が震える。
やっぱりあの時に聞こえた声は、気のせいなんかじゃなかった。
でも……でも……
『君、今まで友達がいなかったんだよね? このまま生涯孤独に暮らすのなんて、寂しいだけだと思わない? せっかく生きてるんだから、目一杯楽しまなきゃ損でしょ』
「だからって、何も呪いなんてかけなくても…」
『だって君、こうでもしないとやらないよね? だから今まで作ろうとしなかったんでしょ?』
ごもっともすぎて、ぐうの音も出ない。
にこりと笑うその神の笑顔が、今の私には悪意にしかみえない。
この人……絶対神じゃない……強いて言うなら……
「あなた、悪魔ってよく言われない?」
『え~~そんなことないと思うけど……』
「神の仮面を被った悪魔、とひそかに住民たちが呼んでいましたよ」
『ちょっと~変なあだ名つけないでよぉ~』
住民、というのは天国にいる人たちのことなんだろうか。
神様と一番関わってそうな人達が言うんだから、きっと本当に悪魔らしいことをしてるんだろうな。
現に、たった二度しか会ってない私が思ってるんだし……
『まっ、そんなわけで一度しかない高校生活。ラスト一年くらい、充実させてくださいなっ! ではでは~ご健闘をお祈りします!』
「あっ、ちょっと!」
あまりにも無責任、かつ勝手な言葉を残し、神様の姿はぱっと消えてしまう。
今まで姿を映していた時計はただの時計に戻り、ため息まじりで黄菖さんが私に
「だ、そうだ。せいぜい頑張るんだな」
とぶっきらぼうに言い放った。
「が、頑張るんだなって……黄菖さんは私の力になってくれるとかじゃないんですか……?」
「僕は呪いを解くかどうかを見極める審判の役だ。貴様なぞに力を貸す気は毛頭ない。友達を作るくらい、一人でやれ」
「一人でできてたら、こんなことになってないと思うんですけど……?」
「最初に言っておくが、このことは他言無用だ。神の存在や呪いを言ったとなれば……楽園とは言い難い生活を強いられるだろうな」
楽園って、天国のこと……なのかな。
つまりこのことを言っただけで、死んだ後も何かされるってことになるわけで……
なんだか大変なことに巻き込まれてしまったような気がする。
今まで作ろうと思っても作れなかった友達を、命がけで作らないといけなくなるなんて。
夢なんかじゃない。全部、私に起こったこと……
「それと、あと一つ……呪いをかけられたのは、自分だけだと思うな」
「……え? それ、どういう……」
「時間だ、教室に戻るぞ。それと、黄菖という名はあまり慣れない。僕のことは、下の名で呼べ」
彼ー御影さんはそういうと、スタスタと歩いて行ってしまう。
意味深な言葉をどう受け取っていいかわからない私は、彼の言われるがまま、教室に戻るしかなかった…
(ツヅク・・・)
ここから、今作の本性が明らかになるわけですが
実は色んなところに伏線を立ててました。
作品名でもある「おまけ」は「呪い」のこと、
前回のタイトルだったギフトのもう一つの意味が、
なんと「毒」なんです。
そして神の名前、リーリエ・ノワールは
日本語にすると、百合と黒。つまり、黒百合です。
黒百合の花言葉は呪い、という意味みたいで……
どうでしょう、皆さん気づきました?
正直ここまで凝ったのは、私自身初めてなので
様々な観点から、たくさん考察してくれると
すごく嬉しいです。
次回は15日更新。
呪われた六花のとった行動は!?