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33.この作品に恋愛フラグが存在するって言ったら、信じる? 信じない?

冬休み前。

六花達はセンター試験の前に、

クリスマスを共に四人で過ごす。


楽しいひとときを過ごした六花は一人、

センター試験を乗り越えるため、

壁に立ち向かう!


冬です。1月中旬になりました。

皆さん、いかがおすごしでしょうか。


「そんでさぁ、その後ぉ……あ、今泉さん。おはよう……大丈夫? 顔死んでるけど」


「はは………うん、大丈夫。気にしないで……」


「センター明けだもんね〜お疲れ様」


冬休みも明け、本格的に寒さが続いていく中、私は無事にセンター試験を終えた。

正直、無事になんて言っていいのかわからないくらい自分では手応えがない。

冬休みを勉強というものに棒を振った割には難しい問題ばかりで、解くのに一苦労なものが多かった。


これで私の人生が決まったも同然なのに、こうもやったかいがないのは虚しいものである。

カウントダウンもお正月も部屋で勉強ばかりで……本当どれだけ嫌になったことか……

問題を持ち帰れたことだし、楓に分からないところでも聞きに行こうっと。

クラスにいないってことは、梨桜達のところに行ってるのかな……?


「ね、ねえ今泉さん。疲れてるとこ悪いんだけど……ちょっといいかな?」


そんなことを思っていたらふと、ある人に声をかけられる。

振り返ると、そこには一人のクラスメイトがいた。

最近ようやく顔と名前が一致しつつある私は彼女をみて、すぐにピンとくる。

確か志麻さん達とよく一緒につるんでる、阿部真里さん……だったような……


「知ってたら、教えてほしいんだけど……今泉さんって御影君と仲良いよね? これ、渡してくれたり、しない?」


なぜここで、彼の名前がでてくるのだろう、と思ってしまう。

綺麗に包装された箱を私に差し出しながらも彼女は頬をぽりぽりかいていて、なんだか照れ臭そうに目もあまり合わない。


確かに私は御影さんとクラスメイトではあるが、決して仲がいいわけではない。

ただ、呪われた者と呪いを見届ける者ってだけだ。

何も知らない人には御影さんと仲がいい、というふうに捉えられるのかな……


「え、えーっと、私御影さんと特別仲がいいってわけじゃない、というか……そういうのは、自分で渡した方がいいと思うけど……」


「そ……っか。やっぱそうだよね〜……なんかごめんね!」


「なんか、あった、の? 私でよければ、話聞くけど……」


こうして話したことない人にも声をかけれるようになったのは、梨桜達と仲良くなったおかげかもしれない。

文化祭で楓と共に回ってくれた志麻さんや羽島さんと話してから、他のクラスメイトにも普通の会話くらいはかわせるようになった。

それがきっかけで曖昧だった顔や名前も覚えられてる……

私ってやればできるんだな……自分からやらなかっただけで……


「冬休み中にばったり会ってさ。私が困ったところを助けてくれて……そのお礼にお菓子でも渡そうかなって。ほら、あたし家庭科部だからそういうの、得意だし!!」


「へぇ、いいんじゃない? 御影さん好き嫌いなさそうだから、なんでも喜んでくれそうだけど」


「そうなんだけど、渡そうにも勇気がでなくて……さ。御影君ってクールでかっこいいけど、どこか近寄りがたいっていうか……こういうの、迷惑なのかなとか考えちゃうんだよね……」


そういいながら、阿部さんは不安そうに顔を俯かせてしまう。

御影さん、かぁ。

確かに御影さんってよくわからないことが多いよな。

呪いのことくらいしか、まともに会話したことないし。

しかも私たちとは違う、天界の人……なわけだし。

そのことを阿部さんに話すのもあれだしなぁ……


「そういうことならまっかして!! まりりんのためとならば、たとえ火の中水の中! 御影っちに渡しに行ってやろうじゃないの!」


聞き慣れた声がする。

なんともあろうことか、阿部さんの後ろから梨桜が姿を現した。

彼女の不意な登場に驚いたのか、阿部さんはうわぁっとのけぞり、


「梨桜!!! いつからそこに!」

と、大きな声を上げた。


「いやぁ、六花ちんの顔拝みに来たんだけどさぁ、なーーんか面白い話しとるなぁって思ってきちゃった❤︎」


「梨桜……阿部さんと顔見知りなんだ……」


「まりりんとは一年の頃に同じクラスだったからね! 毎年、アフなんたらゴールドって花を花壇に埋めててさ! それがめちゃ綺麗なんよぉ〜!」


「アフリカンマリーゴールド、ね……盗み聞きなんて、梨桜らしいなぁ」


聞かれたことを恥ずかしく思いながらも、若干呆れているようなため息を吐く。

さすが梨桜と顔見知り、なだけあって彼女の性格も分かっている……ってことだろうか。

梨桜ってやっぱり誰に対してもこんな感じなんだろうな。羨ましいような……そうでもないような……


「そんな御影っちですがぁ、さっきお友達連れて職員室に行くのをみかけたよ? せっかくだしぃついていってやりなよ、六花ちん☆」


彼女がニヤリと笑う。

助けを求めるようにみる阿部さんの瞳が私に向けられたとき、ようやく逃げ場がなくなったと確信した。



白い息が、空気中に舞う。

階段を三階分駆け降りただけなのに、息が荒くなるのだから日頃の運動不足を感じてしまう。

本当、頼り甲斐ないなぁ。私って……


「なんか、ごめんね。付き合わせちゃって」


「きにしないで。梨桜に言われなくても、何か力になろうとは思ってたから」


御影さんにお礼を渡しに行きたい。

そんな阿部さんと一緒に私は、御影さんを探しに職員室まで向かっている。

正直みかけた梨桜が行けばいいのに、なんて思ってしまったけど梨桜は、


「最初に話を振られたのは六花ちんの方でしょ? なら六花ちんがいいでしょ! 実際御影っちと話してるの、六花ちんが多いわけだし」


と、反論できない意見を返されてしまった。

確かにそうかもしれないけど、盗み聞きしていた梨桜も梨桜だと思うのは私だけだろうか。

まあ、物を渡すだけだし……なんとかなる……のかなぁ?


「いやぁ、にしてもびっくりだわ〜御影のことだから内定もらったと思ってたら、なんも受けてないってさ」


声が、聞こえる。

正面からやってきていたのは、御影さんとよくつるんでいる男子二人だった。

確か……二渡君と、藤木君だっけ。

彼らより少し遅い歩幅で、後ろを歩く御影さんがいることも確認できた。


「御影、本当に大丈夫なのか? センターも受けてないって言ってたけど……」


「問題ない。僕にはもうここにいる理由がなくなった、ただそれだけだ」


「それさっき先生にも言ってたけどさ〜意味わかんねぇよ〜話おわんねぇうちに帰ろうとするし〜ってあれ、今泉と阿部じゃん」


目があってようやく私達を確認したのか、よっと挨拶してくれる。

御影さんも私と目が合うと、怪訝そうに顔を顰めてみせた。


「おはよう、二人とも。どうかしたのか?」


「あ、ごめん、話してる時に……御影君に、なんだけど……」


阿部さんがそういうと、御影さんを前にと背中を押してくれる。

それでも彼は前に出ようともせず、その場で顔を顰めたままだった。


「この前、助けてくれたでしょ? そのお礼にマカロン作ったんだよね……」


「え、阿部すげー! マカロンって作れんの!?」


「ま、まあ……御影君が好きかどうかわかんないけど……よかったら……」


「必要ない。あれはただ、近くを通っただけだ。人助けにすぎん。話は終わりだ、失礼する」


何を考えているのか。

御影さんは手を出そうとすらしなかった。

差し出された彼女の気持ちを突っぱねるように、私達の間をすり抜けていってしまう。

彼の冷たい言葉と態度に納得がいかない私は、つい、彼の腕を掴んでしまって……


「そんな言い方ないでしょう。阿部さんは、御影さんにお礼をしたいって、その一心で……」


「それが必要ないと言っているのだ。その菓子に特別な意味があるのだとしたら、僕には彼女の気持ちには答えることはできない……貴様には、僕の言っている意味がわかるはずだ」


「お、お礼で受け取るくらい、別にいいじゃないですか……」


「僕は罪をおかした身だ。死してもなお、罪を重ねた僕に……受け取る資格はない」


小声で聞こえたその言葉に掴んでいた腕の力をつい、緩めてしまう。

それを振り解くと、彼は行ってしまった。

なぜ緩めてしまったのか、なぜちゃんと止めなかったのか、そんなの自分が一番わかっている。

その時見た彼の横顔が、いつにもまして悲しく、そして苦しそうに見えたのだー……


(ツヅク・・・)

どうも、約一ヶ月時期をすっ飛ばしました確信犯です。

堂々と悪いことをしていてなんですが、

ここにきてモブキャラ、阿部真里さんが初登場します。

実は彼女も、にわかぁな恋愛フラグ(マカロンにはあなたは特別な存在という意味があります)も、当初予定していませんでした。

ですが、禁断の恋って萌えるよな、なんて思っていたら

気が付けば書いてました。すみません。


御影さんは私にとって、

脇役と言えないほどの大きな存在なので、

物語にどう絡めるか今でも模索し続けておりますが……

友達には実質これが第二の物語でしょ、

なんていわれました。判断は皆様にお任せします笑


次回は24日にできたらいたします。

御影の言葉の真意とは……

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