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25,5.井の中の蛙大海を知らず feat.久保薗楓

季節は秋。

文化祭でクラスメイトと打ち解けようとする楓に

力を貸す六花。


一人で抱え込む楓に六花は喝を入れ、

仲良くなる一歩を踏み出す……

☆楓Side☆


「かえでちゃんって何誘っても、ご本読んでばっかりでつまんない。あっちで遊びに行こ〜?」


小さい頃から、一人でいることが多かった。

みんな外で遊んでいるのも気にせず本を読んだり、小学のお受験のための勉強をしたり。


一人浮いている私なんかに、近づく人はいなかった。

厳しい親の影響で勉学は常に優秀を求められ、規律良い生活を送るために物心つく前から門限に縛られ……

気がついた時には誰一人、私と遊ぶ人なんていなかった。


「かえで〜! もう字を読み書きできるのか? すっげーな!! この絵本、あたしに読んでくれよ!!」


唯一、蛍だけは私に話しかけてきてくれた。

きっと家が隣同士という、幼馴染のよしみだったのだろうと小さいながらに感じてしまって。

一緒にいるつもりは、全然なかった。


「………わたしといると、ほたるちゃんまで仲間外れにされちゃうよ……?」


「なんで? かえで、すっげー寂しそうにしてるじゃん。そんなこと言うなよっ」


「わたしが? さみし、そう?」


「かえでが他の子と友達になれるまで、あたしがそばにいるから! だから、大丈夫だよっ」


その頃から蛍は私にとってヒーローのようで、初めてできた友達だった。

それから小学校に行っても、中学校に行っても私自身変わることない。

それでもみんなが私を見る目は「嫌な感じ」ではなく、違う目に変わりつつあった。


「久保薗さんってほんと頭よくってすごいよね〜この前の模試、一位だって!」


「マジ? そいやうち、久保薗さんに告ろうとしてる男子みかけたかも!」


「頭も良くて顔もいい! 羨ましい限りだよね〜」


成績優秀、容姿端麗。

気がついた時には誰もが一度は思う、「憧れの委員長」になっていた。

自分たちとは違う、まるで高嶺の花のよう。


言葉だけ聞けばきっと、誰もが言われたい褒め言葉の一つだと思う。

それでも私にとっては"一人だけ違う、別世界の人間だ"と言っているように聞こえてー……


「へいっ、ちょいとそこのお嬢ちゃんっ! まっすぐ帰らんで、うちとそこらで遊ばない?」


だから、彼女は少し想定外だった。

彼女ー長谷部梨桜は、隣のクラスだったと言うのに見かけない日はないと言うくらい様々な場所を行き来していた。

どのクラスにも知り合いがいて、どの先生にも目をつけられていて。

正直あえて関わるのを遠ざけていたほど、彼女の存在は耳に入っていた。


「私、急いでるの。悪いけど、あなたと遊んでる暇は……」


「そういえばさぁゲーセンが新しくできたらしいんだけどぉ、委員長さんってゲーセン知ってるのぉ?」


「………それくらい、知ってるし………」


「じゃあ何の略か言ってみ?」


「…………」

「ほぉらやっぱり! あんな楽園を知らないなんて、絶対もったいないよ!! ついてきて! 大丈夫、そんなに時間取らないから!」


思えば、彼女はいつも強引だった。

誰に何と言われようと私に話しかけ続け、私にちょっかいを出し続け。

しまいには、蛍まで巻き込んで一緒に遊ぶようになって。


気がついた頃には一緒にいるのが、当たり前になっていた。

ただでさえ有名人だった梨桜は、あの委員長と話せるすごい人だと、さらに有名になって……


「長谷部さんって、有名になることが目的で私に近づいたの? だとしたら、少し迷惑なんだけど……」


「ん? なわけないじゃん! 隣のクラスの委員長はつるみにくいって聞いてさ? どんな奴かと思って話してみたら、全然イメージと違うんだもん! あんた、色々損してる。その顔、もっとみんなに見せた方が友達、増えると思うよ?」


梨桜の言うことはいつも、痛いところをついてくる。

ただふざけているように見えていたけど、実はみんなのことをよくみていることが話していてわかった。

やはりいざ話してみると、イメージだけでは気がつけないたくさんのことを知れる。

だったら、私も……いつか、梨桜のように……


『君はラッキーガールに選ばれたんだよ! 特別に、僕からすんばらしいプレゼントをあげる♪ これをつければ、君は明日から……いや今日から! 新たな自分に生まれ変われること間違いなし!』


高3に上がってすぐ、あの人に会った。

その人は神だと自分で名乗った。

胡散臭くて、どうにも信じられなくて。

そもそも神様が本当にいるのかと、疑って。


それでも私は、イヤリングを受け取ってしまった。

理由は、自分でもよくわからない。

ただ神の言う、新たな自分になれる気がして……


「久保薗楓、周りに植え付けられたイメージを否定し、友人を作れ。その呪いをとかない限り、貴様は永遠に今のまま。今以上に邪魔が入り、貴様と共にいる者までいつか……離れていくぞ」


自分にしては、情けないくらい嵌められたと思う。

別に呪われたからと言って、自分を変えようとは思わなかった。

実際私は、前より男の人が寄ってくるくらいで身体への被害はない。


そんなことよりも隣で同じ呪いに苦しんでいる、梨桜や蛍の方が気がかりで仕方なかった。

共にいれなくなるのなら、せめていられる今だけでも二人の力に……


「楓は、自分から行動するのをためらってるだけなんだよ。あの頃の、私と同じ……でも、行動しなきゃ何も始まらない。一歩踏み出すだけで、何か変わるかもしれないんだよ……大丈夫。もし誰かに嫌われたりしても、私も梨桜も蛍も、嫌いになったりしないから!!」


3年生の春、クラスに馴染めないでずっと一人だった転入生の彼女をみた時、自分と重なる何かがあった。

つけていたアクセサリーから察していたが案の定呪われていて、私よりずっと一人でなんとかしようと頑張っていて。


似ていると、思っていた。

それでも彼女ー六花は私より先に勇気を出して、声を出そうと決めてくれて……


「委員長〜今日は一緒に回れて楽しかったよ〜ありがとう〜」


「私、委員長ってこういうの苦手なのかと思ってた。でも、委員長ってそんな顔で笑うんだねっ!」


「わかる! 今まで気づかなかったのすげー悔しい! ねえ、今度お昼とか一緒に食べたり、しない? なんか、話し足りなくて」


やっと出せた、文化祭の勇気。

志麻さんと羽島さんが笑顔でそう言ってくれたのを聞いて、やっと吹っ切れた。

私に足りなかったのは、自分を変える勇気だけじゃない。

みんなと話す、勇気。


「もちろん。私も志麻さんと羽島さんのこと、もっと知りたいって思ったから」


もう、逃げない。

イメージなんて、自分の手で壊してしまおう。


何事も怖がらない梨桜や、いつも背中を押してくれる蛍、そして私のために同じくらい勇気を振り絞ってくれた六花に誇れる自分になるためにもー……


(ツヅク・・・)

楓と蛍の幼馴染設定を書くことは決まってましたが

あの梨桜と楓がどうやって仲良くなったのか

それもすごく書きたかったので

結果、結構なボリュームになりました。


主人公目線だと書けるのが限られくるので、

まあ、仕方ないですよね。

その分楓のことをしっていただければいいなぁと

思っております。


次回は少し遅れますが、19日に更新します。

なんだか不穏な予感……?

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