表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/43

22,5.ありのまま、素直な"あたし"に feat.須賀蛍

呪われたことで、男になってしまう蛍を

3人は彼女の悩みを解決しようと奮闘する。


女の子らしくなりたい。


ずっとうちに秘めた彼女の想いが、

3人の後押しで、ついにー……

☆蛍Side☆


「蛍、あなたはとってもかっこいいわ。私にとって、自慢の息子そのものよ」


小さい頃から言われ続けたその言葉はまるで魔法や呪文のようで、自分はそうなんだと言い聞かされているような気がした。

親は子供を選べない、と言う言葉を聞く。

あたしにとって母さんは女だからとあたしを捨てず、ここまで育ててくれた……それだけで感謝している。

だから母さんの悲しむ顔は、みたくなかった。


「蛍ちゃん、戦隊モノ好きなのぉ? 女の子なのに? さおり達とは違って、変だよ」


あたしが変、他の人と変わっていることなんて意識しなくても気付かされた。

小さい頃はまだ周りから女子として扱われることが多く、そのたびに母が訂正をしてはわざと距離を置きたがる。

結果、母が仲良くしていた親の子供はどれも、男の人ばかりで唯一楓だけが女の子の知り合いだった。


「蛍はかっこいい、お父さんのような人になるの。誰がおかしいって言っても、気にしちゃダメ。蛍は蛍そのものなんだから」


学校の制服も、私服も有無を言わさず男子もの。

その甲斐もあって、初めて会う人には大体の確率で男に間違われる。

そんな生活が当たり前すぎて、わざわざ女だと訂正する気もなかった。

それが、あたしにとっての普通。


「ねえねえ、このアクセサリー可愛くない?」


「あ、本当だ! どこでかったの? いいなぁ〜」


ただふと、思うことがある。

あたしはどうして、みんなと違うのだろうと。


同じ女の子だというのに、可愛いと言われたことなんて全くない。

一度でいいから、ふりふりしたワンピースとか綺麗なアクセサリーとか着てみたい。


そう思っても、現実は厳しいものばかりだった。

実際あたしに似合うのは、男のものばかり。

求められるのは男としての「須賀蛍」。


『君はラッキーガールに選ばれたんだよ! こんなこと滅多にないんだから、ここは素直に喜ぶとこだよ☆』


高3に上がってすぐの頃、現れた謎の女性。

その人は神だとか名乗っていて、翌日に何故かチョーカーをプレゼントしてくれた。

最初は、こんなもの似合うわけがないとしまうことにした。

赤く綺麗な宝石がはめこまれていて、あたしなんかじゃ勿体無いと思うくらい。


それでもつけてしまったのは、どこかで似合ってほしいと思っていたからだろうか。

チョーカーをはめた自分の姿は何度見ても慣れず、叶うことならすぐにでもはずしたかった。


「単刀直入に言おう、須賀蛍。貴様自身が女で生きたいと言わなければ、呪いによって完全に男となり、もう二度と女として生きられない」


どんな方法を試しても外れず、突如やってきた御影さんに言われ、初めて神様からのプレゼントが呪いだと言うことを知った。

正直、怒りというよりは衝撃の方が大きかった。

神様って、そんなこともできるんだって。


呪いをとかなければ、母が望む自分になれる。

呪いをとかなければ、男として生きていられる。

なんて夢のような話なんだろう。

だったらいっそ、このまま呪いにかかってしまえば……


「須賀さん? 進路希望表、提出日すぎてますよ? 家のことで忙しいのはわかるけど、お母さんとちゃんと話すことも大事ですよ?」


母の望む「須賀蛍」になれる。

それは同時に、あたしが望む「須賀蛍」ではないことを意味することを呪われたから実感した。


小さい頃旅行の時に見て、憧れた客室乗務員。

その職に就くにはそもそも、女性でなければならない。

だからあたしには、どうすることもできなくて。みんなに事情を話すのが怖くてー……


『無理なんて勝手に決めないで! 蛍はちゃんとした女の子なの! ずっとそのことで悩んでいたことなんて、私が一番知ってる! 呪いにかけられたからって、そんな理由で諦めちゃダメ!』


『蛍は私なんかより十分可愛いよ。だから、自信持って。自分の気持ちに、嘘はつかないで』


『女の子は誰だって可愛くなれる。うちがそのことを証明してあげる♪』


そんな勝手なあたしを、彼女達は許してくれた。

あたしのことなのに、自分のことのように聞いてくれて、自分のことのように悩んで。


幼い頃からずっと一緒だった楓はもちろん、六花も梨桜もあたしのことを思って、行動してくれた。

3人といると心が救われたような、女でのあたしを否定しないでいいんだと思えた。

だから、あたしはー……


「ごめんなさい、母さん。俺……あたしは、やっぱり女の子としていきたい。あたし、客室乗務員になりたいんだ。妹の面倒も、バイトも、家のこともちゃんとする。だから、勝手な私を許してくれませんか」


初めて吐露した、母への気持ち。

不安だったあたしに寄り添うように、3人も頭を下げてくれた。

それだけでどこか満足できて、とても気持ちが楽になれてー


「……蛍はずっと、ずっと我慢していたのね……なのに、私はそれに甘えて………ごめんなさい……ごめんなさい……蛍………」


母がないて謝ってきた時、思った。

あたしは何もせず逃げてただけだったんだなって。


言っていれば、もしかしたら本当はもう少し早く分かり合えたかもしれない。

言っていれば、少しでもちゃんと向き合えたかもしれない。

母さんと、自分自身とも。

そのきっかけを、与えてくれたのはー……

「はは……とりあえず一件落着、かな?」


「ほぉらね! やっぱ大丈夫だったっしょ!?」


「あー、怖かった。蛍のお母さんが優しい人で助かった……」


「よかったね、蛍」


笑いかけてくれる友達、そしてあたしの思いをちゃんと聴いてくれた母がいてくれたからこそあたしは前に進み続ける。

男としてではなく、女の須賀蛍としてー……


(ツヅク・・・)

と、いうわけで蛍の物語でした。


事情が事情なので、

そんな簡単にうまくいかないという

意見もあるだろうとは思いますが

大事なのは、想いをぶつけること。

そこに焦点を置いた結果でございます。


これから蛍がどう成長していくか、

どうか、見守ってくれると嬉しいです。


次回は18日更新。

待ちに待ったあのイベントが!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ