表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/43

18.私をどこかに連れてって♪

夏休み。

六花は初めての夏祭りを

三人と過ごすことになる。


門限がある楓のために

線香花火を楽しんだ四人の夏は

まだ、始まったばかりー

太陽の眩しい光が、夢の中だった意識をあっという間に引き戻す。

扇風機から吹くそよ風は、涼しいと言うよりどこか生暖かい印象に思えた。


夏休みに入って、もう半日は経つ。

毎日遊びまくろうぜ! なーんて野望をたてていた梨桜だったが、先日の夏祭り以来4人では一回も会っていない。

それもそのはず、なんていったって私達は受験生だ。


遊んでいられるほど成績は良くないし、宿題だってコツコツやらないと終わらない。

こんなだらだら過ごしていると、友達ができる前と全く変わらない……そんなの、頭ではわかっている。

だからこそ誰か、遊びに誘ってくれたりしないかな。なんて、らしくない期待を寄せてしまう。

自分から声をかけてみればいいのでは、なんていわれそだけど……友達ゼロだった私には、そんな勇気がなくって……

せっかくできた友達なのに迷惑がられたり、嫌われたりしたら……


そんなことを思っていた矢先、ピンポンと家のチャイムが鳴る。

そういえば妹から今日宅配便が来るから、かわりに受け取ってほしいとか言われたっけ。

一体何を頼んだんだか。

重い腰を上げ、ハーイと返事をしながら玄関のドアを開けると……


「宅配便でーす、今泉晶さんのおたくは……ってあれ? 六花?」


宅配業者の格好を身にまとい、段ボールを手に待っていたのはまさかの蛍だった。

なんというか、それはそれはもう様になっているの一言で……


「びっくりした……まさか蛍が来るとは……」


「あたしだって驚いたよ。同じ苗字だなーとは思ってたけど、まさか六花んちだったとはなあ。ってことは、この晶ってのは……」


「妹なんだ。今日私一人だから、私が受け取るよ。蛍はもしかしてバイト?」


「まあそんなとこだな。あ、ここにはんこ押してくれ」


言われるがまま、持ってきていた印を押す。

ほいっと荷物を私に渡すと同時に、彼女の携帯が鳴ると悪い、といって後ろを向いた。


「もしもし? どうした、母さ……お袋」


相手はお母さん、だろうか。

気のせいかな、一瞬呼び方を変えたような……


「あー、玉ねぎ? 帰りでよければ俺が買ってくるけど。……おう、わかった。じゃあ、またあとでな」


……ん? 今、俺って言わなかった??

蛍は確か、いつもあたしって言ってたような……


「そうだ、六花。今度、みんなで海行こうって話がでたんだ。予定空いてる日とか、あるか?」


電話を切るが否や、彼女が私ににかりと笑う。

まるで、何事もなかったかのようにする彼女の笑顔を見ていると、なんだか聞くに聞けなくて……


「海? またなんで海……暑いんだし、プールでもいい気がするような……」


「夏って言ったら海に決まってるだろ! プールもいいけど、晴れたとこで泳ぐのすっげー気持ちいいぞ?」


さすが体育会系、考えがまるで違う。

海、ねぇ。なんともリア充すぎるイベントが、次から次へくるもんだ。

海なんてもちろん今まで友達がいなかったから行ったことないし、そもそも海自体に行こうとしなかった。

まさか本当にそっちからきてくれるとはなぁ。誘ってもらってるわけだし、行ってもいいってことだよね……?


「私はいつでも空いてるから、みんなに合わせるよ。蛍も行くでしょ?」


「あー、あたしは海には行くけど……ちょっと野暮用でな。とりあえずいつでもいいんだな、梨桜にそう言っとく! じゃあ、またなっ!」


「あ、うん。バイト頑張って」


私がそう言うと嬉しかったのか清々しい笑顔を向け、颯爽と去っていく。

その後、梨桜からいつ海行くかのメッセージが来たのは、わずか5分後の話だった……



「波が……うちを呼んでいる……」


「あっつ……すごい人だね~」


「ここ、毎年こんな感じなんだよね。はぐれないよう気をつけてね、六花」


その数日後。私達は海にやってきた。

真っ白なマキシワンピースに、レースのガウン、リボンがついた帽子を被った楓が日焼け止め塗る? と声をかけてくれる。

かたや白いTシャツの裾を結び、ヘソを堂々と出し、ショートパンツを纏った梨桜は、何故かサングラスまでかけていて……


「いやぁ、それにしても六花ちんと海に来れるとは思わなかったなぁ〜やっぱ、うちの日頃の行いがいいって証拠だねっ☆」


「たまたま今日が六花も空いてて、梨桜も空いてたってだけの話でしょ」


「んもぉ、楓ちゃんはすぐそういうこと言う~せっかくの海なのに、テンションさがるようなこといわないでよ〜」


「ま、まあまあ2人共その辺に……そういえば蛍は? 野暮用がどうって言ってたけど」


「あそっか、六花ちんにはまだ言ってなかったね。こちらへどぞ~?」


そう言うと彼女は海の家、とかかれた店の方へ足を運んでいく。

女子達が何故か群がっているその中心にいたのは……


「ほ~~~たるんっ♪」


「らっしゃーーい! おっ、梨桜! それに楓に六花も!」


ご存知、蛍だった。

海の家、と書かれたエプロンを身につけた彼女の姿はやはり違和感ないくらい似合っていた。

焼きそばをへらでひっくり返したり、ソースを上からかけたりする様の一つ一つを女子達が釘付けになって見ていて……


「……もしかして、これもバイト?」


「ここの人と、蛍の親が仲良いみたいで。毎年お手伝いを頼まれるんだって」


「へえ………なんかここ、人手少なくない?」


おそらくこの女性客は、ほとんど蛍目当てなのだろう。

それでも家族連れや、旅行の観光に来てる人だってここによることはある。

どこを見てもドタバタしているような気がして、とても気安く話してて大丈夫なように見えなくて……


「はっはーん、なるほどねー。わかっちゃいましたよー、うち」


そんなことを思っていた矢先、梨桜がにやりと笑って見せる。

すると彼女は置いてあった料理の皿を持って……


「接客を任せたら右に出る者はいないといわれたこのうち、長谷部梨桜がっ! 海の家の看板娘になってしんぜよう! ほたるん、これ持ってくからどこか教えて!」


「おっ、ほんとか!? 助かるよ、梨桜!」


「え、ちょっ、店の人に一言言わなくていいの!? 初心者の私達がやったら、逆に迷惑じゃ……」


「ああなった梨桜は誰にも止められないから。私達も、やれるだけやってみようか」


言われるがまま、楓からメニューを受け取る。

かくして私は、初めても同然なバイト体験をすることになってしまったのだった……


(ツヅク!!!)


今回で蛍のバイト姿も初登場ですが

個人的に似合いそうなものを選んだ結果です。


性格的に楓は塾の講師とか合いそうですよね。

六花は……コールセンターとかでしょうか?


梨桜は多分何をやらせてもいい感じに

やってくれそうなので、考えるまでもないですね笑


次回は12日更新。

みんなでひと汗かきますよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ