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10.プルーフ of "ふれんど"

神様に呪いをかけられ、

友達ができずにいた六花の前に現れたのは

陽キャ・梨桜だった。


そんな彼女を筆頭に蛍、楓とお昼をともにする。


距離を置こうとしていた六花に、彼女達は

「友達」として光を差し伸べてくれて……


友達なんて、今までいなかった。


「ねえ、明日空いてる? 雑貨のセールやってるんだって!」


「いいよ〜カフェの新作メニュー、飲みたいなぁって思ってたとこなんだ〜」


「そうなの〜? じゃあそこも行っちゃおっか!」


授業が終わる金曜日は寂しく、そして悲しくもなる、私にとって憂鬱で仕方ない日。

友達と呼べる人たちは皆、週末の休みにかけて遊びの約束をする。

それが羨ましくもあり、寂しくもあった。


何もない土日、部屋でぼーっとすることしかできない土日、時計の進みが一番遅く感じる土日ー………

夏休みとか、休みが長くなる日は特にそう感じる。

それでも何か行動をすることもなく、できるわけないと諦めて、そんな自分に嫌気がさすばかりで。

そんな日常が、ずっと続くと思っていた。

彼女達に出会うまでは。


「六花っち!!!! 明日暇!? 暇だよね! よかったら一緒に遊び行かねっ?」


放課後になってすぐ、彼女は私の元を訪ねてくる。

相変わらずの勢いに若干嫌気がさしつつも、気づかれないように振る舞ってみせる。


「なんで暇って前提なんですか。急に来られても迷惑なんですけど」


「だってさぁ、せっかくの週末でっせ! 仲良くなった記念にぃ、どっか遊びに行こーよっ!」


「どっかって、どこですか」


「そだね~~てきとーにお店行ってブラブラするとか? うち、おニューの髪飾りほしいんだよね~」


3年3組、長谷部梨桜さんは、知らない人はいないと言うほどの陽キャだ。

一番最初に私のことを友達と呼んでくれた人物でもある。

しかしながらこのノリについていける気がしなく、隣のクラスだからあまり関わることないんだろうなぁと少し安心していたけど……どうやらそうでもないみたい。


「おいおい梨桜、この前もそういって買いにいかなかったか? どんだけ買うつもりだよ」


「そりはそり、こりはこり♪」


そんな彼女に遅れてやってきたのは、彼女の友達でもあり私を快く受け入れてくれた二人。

一人は須賀蛍さん、3年3組。男性用の制服をまとっているが、れっきとした女の子。

その外見と頼りになる性格で、女子生徒のファンも数多くいる……とクラスメイトが話していたのを聞いた。


「あ、ちなみに二人にも行ってもらうからね! この期に及んでドタキャンはなしだから!」


「別にその予定だったけど……買うからには校則違反にならないのを選んでよ? 梨桜のつけてくるのって結構ギリギリだから」


そしてもう一人、久保薗楓さん、3年2組。同じクラスであり、委員長を務めている秀才。

クールな性格な割に抜群のプロポーションに、男女問わず注目の的なんだとか……


……と、まあこんな感じで、かなりの兵に囲まれております。我ながら信じられません。

とはいっても、本当に友達と思われているかは実際わかっていない。

口で言うだけじゃ簡単だし、そもそも初めてのことだからどこから友達っていっていいのか分からない。

だから今は、御影さんに呪いを解いてと自信を持って言えるような、何かが欲しくて……


「……わかりました、土曜ですね。予定開けときます」


「ほんと!? やったー! じゃあうちのアドレスかいとくから、追加したらメッセ送って? グループ招待するから♪」


次から次によくわからない単語が出てきたような気がする。

何がなんだか把握してもない私とは逆に、長谷部さんはにんまり笑ってみせた。



時計の針が一つ、また一つ進んでゆく。

それを横目で確認しながら、にじみ出る汗をぬぐう。


「お姉ちゃ~ん? 十時まで、残り十分だよ~?」


「え、もうそんな時間? ちょっ、どうしよ。これでいいと思う? 晶!」


「なんでそんな念入りに選んでるの? もしかして、デート?」


「違うってば。ただ、初めてだからわかんなくて……」


今泉六花、ただいま絶賛大ピンチ真っ最中であります。

軽いノリで誘われた、彼女達と遊びに行く日。

彼女のペースにのせられるあまり忘れてしまっていた。

ぼっちだった私が誰かとお休みに出かける、なんて人生で初めての出来事だということに。


家族以外の連絡先の追加なんて初めてで、つい浮かれて、全然寝れなかった。

正直何を着て、どういう顔で会ったらいいか何もわからない。

本当にこんな私なんかが、行っちゃってもいいんだろうか……


「お母さん、変なとこない? これで大丈夫かな?」


「大丈夫よぉ、十分かわいいわ。それにしても六花にお友達ができるなんて……長生きするものねぇ。今日はお赤飯炊いて待ってるわね。お話、いっぱい聞かせてね」


「お、大袈裟だよ……」


「お姉ちゃ〜ん、もう時間だよ〜」


「うぇ!? ほんとだ! じゃあもうこれでいいや! いってきます!」


「いってらっしゃ〜い、楽しんでね〜」


母の声に手を振って挨拶しながら、荷物と携帯を片手に慌てて家を飛び出す。

それと同時に、バイブとともにメッセージがくる。

送り主は須賀さんで、


『楓と合流! 六花~場所わかるか~?』


と、書いてあった。

今行きますと手短に打ちながら、全速力で走る。

どうしよう、遅刻するなんてありえないって縁を切られたりしたら。

やっぱり私とは釣り合わない、なんて言われたら……


「お、きたきた! 六花~~!」


走りながら見えてきた待ち合わせの場所には、そんな不安をかき消すように、笑顔で手を振ってくれている須賀さんがいた。

その横には久保薗さんもいて、二人の姿を見た途端、なんだか安心してしまうような……不思議な感じがして……


「お、おはようございます、須賀さん。久保薗さん」


「ああ、おはよっ」


「髪、ぼさぼさだけど……走ってきたの?」


「あ……えっと、家が近くなもんで……」


レーストップスのワンピースを着る久保薗さんに、ダメージジーンズにトレーナーをかっこよく着こなす須賀さん。

同じ女子とは思えないほど、極端なコーディネートの違いだと正直感じてしまった。

二人共元がいいから、はたから見たら男女のカップルのようにさまになっている。

心なしか、周囲の視線も感じるし……


「す、すみません、思ったより準備に時間かかっちゃって」


「気にしないで。私達も今来たとこだから」


「そーそー! それに、まだ全員そろってないしな」


呆れたように須賀さんが言ったことで、私はやっと気づく。

彼女―発起人である長谷部さんがいないことだ。

てっきり言い出しっぺだから、一番目に来ているんじゃないかと思ったんだけど……


「この場所を指定したの、長谷部さんでしたよね? 電車が遅れてる……とかですかね?」


「いやぁ、それはないと思うなぁ。梨桜だし」


「梨桜のことだから、多分……」


「待たせたなっ! 諸君!!!!」


すると、聴き慣れた声がどこからか降ってくる。

辺りを見まわしても、その声の主らしい人は見合たらなくて……


「愛と正義と平和を守りしヒーロー、梨桜ピンク! ここに見参っ!」


ジーンズ生地の上着の下に見えるロゴが入ったTシャツ、ダボっとしたズボン、そして桜のヘアゴムで止められたサイドポニーテール……

言わずと知れた彼女ー長谷部さんだった。

水が噴き出る噴水の台に、仁王立ちしながら私達を見ている。

彼女の声とその存在感は当然のように、周りの人たちの注目の的になっていて……


「はぁ………その前に何か言うことはないの」


「ヒーローは遅れてやってくる!! ってやつですぞ、楓シルバーよ!」


「勝手に仲間に入れないで」


「あっははは!! いいなぁ、楓シルバー!! あたしは何になるんだ?」


「ほたるんは情熱の赤!! 蛍レッドだね!」


「おー! 蛍レッドかぁ! かっこいいな!」


「ちょ、ちょっと蛍まで……」


そんなこと関係ない、とばかりに笑っている長谷部さんに乗っかる須賀さん。

それに呆れているかのように久保薗さんは、額に手を当ててため息をついている。

3人の様子を見ていると、なんだか自然と笑ってしまいそうで……


「よっ、六花っち! おお、トレンチコートを着こなすとはなかなかですなぁ。心配しなくても、六花っちには六花ホワイトとして共に戦ってもらうからねん☆」


「あ、ありがとうございます……あ、あの、髪留めが欲しいって言ってたから、良さそうな店探してきたんですけど……」


「え? お店??」


そう言いながらさっと携帯を彼女に渡す。

それを横から眺めるように、須賀さんと久保薗さんが覗き込んで……


「うっわ、六花真面目だな! わざわざ調べてきたのか!?」


「わ、私、遊びに行くのとかも初めてだから、どうしていいかわからなくて、とりあえず……」


友達と遊びに行くならどこがオススメ。

そういうサイトを、しらみつぶしに探していた。

……実際寝れなかったのはそのせいもあるんだけど……

こうでもしないと落ち着かなくて、嫌われないようにするのに必死で……


「ここから近いところ中心に探してくれたんだ……すごいね……でも今度からはこんなことしなくても、大丈夫だよ」


え?


「んーーーーどれも気になるけど、いつもの場所でいっかな。よし、電車乗るからついてこーい。六花ちんにとっておきの場所、教えてやる!!」


そういうと彼女は携帯を私に返し、先頭を切って歩き出す。

そんな長谷部さんを見ながら須賀さん達が小声で、


「梨桜の奴、予定とか行く場所を決めても、その通りにはうごかねぇんだよな」


「私も六花と同じタイプだったんだけど……行き当たりばったりの方が楽しいって梨桜が聞かないから、やるのやめたんだ。本当、自由だよね」


な、なるほど……さすがの陽キャってところか……

こんなに準備してきた自分が、なんだかバカらしくなってくる。

それが、彼女のなせる技……なのかもしれないけど。


「ほらそこ〜何か突っ立ってるの〜? 我に続かんか~い!」


気がつくと結構前にいた長谷部さんが、私達に向けて手を振っている。

やれやれとばかりに二人がついていくのを、私もゆっくりと後を追った。

かくして私にとっての初めてのお出かけが、幕を開けたのです!!


(ツヅク!!)

今回のサブタイトルは

友達の証明という意味なのですが

呪いを解くまでのタイムリミットの割に

次回までは友達とは、みたいな話になってます。

やっぱりすぐ友達できた〜とは

ならないんじゃないかなぁと思いまして……


個人的に今作はキャラクター像はもちろん、

私服まで結構調べて、書いております。

皆さんが想像しやすくなっていたら嬉しいです。


次回は8日更新。

初めてのお出かけ、スタート!

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