98 クルト君がかなり上達したところから
本日は複数話投稿です
順番にご注意ください
王宮のお昼時間前 馬場にはストイックな音が響き渡る
ーバシッ ーバシッ
「どうだ!かなりスピード出る様になっただろう」
クルト君は私にいいボールを投げる様になった
「本当ですね 悔しいですが腕が痺れてきました!」
子供の成長は早いなぁ
クルト君がぴたっと止まって
「わ 悪い 痛くしたか?」
ああ 優しい子になったなぁ
「大丈夫ですよ でもちょっと休んで お昼にしましょうか」
「うん 今日は何だ?」
今日はどうかな
「もしかしたら 気に入らないかもしれません 私の故郷の食べ物なんですが」
なんと おにぎりができたのだ!
あれこれ試したところ水の配分と鍋の蒸らし時間を上手く調整できて ふっくらと炊き上がったご飯
出来上がり時には泣きそうになったよ
ただ 海苔がない 残念
中身は安全策を要して 豚コマ醤油味にぎりと 鳥ササミマヨネーズにぎり
邪道だが 今はまだいいのだ!
熊笹の様な葉っぱを巻いてクルト君に渡す
「おにぎりって言います 中に具が入っていて 葉っぱは食べなくていいものです
口に合わないかもしれないので ひと口食べて無理なら言ってください」
クルト君は
「ムギの故郷の食べ物だろう? じゃあたぶん好きだ」
はむっといい勢いで食べる 信用し過ぎです
モグモグモグモグモグモグ...モグ
「ど どうですか?
お水ありますよ? あ 出しますか?」
ゴクン
続いてアムッと食べる
モグモグモグ...
「ウマヒホ」
え?なんと言った?
ゴクン!「美味いぞと言った」
続けてどんどんいく ああよかった
「安心しました ちょっとここでは独特な食材ばかりなので」
私も食べる 塩気がちょうど良い
たくあんが欲しいが ピクルスでも十分だ ああ 食は幸せを運ぶなぁ
次は梅干し作ろう...
おにぎりは どこに行っても うまいもの
ムギ 心の俳句
そして食べ終わりになってから
ドッジボール大会の話になった
「クルト様 来週の月曜日に 団員の方とドッジボールのミニゲームしませんか?」
なんと何人か応じてくださったのだ
クルト君は顔を輝かせて
「本当か!? やる、絶対やる!」
「お昼時間前に集まって 3人対3人です
ただ 最初は普通に投げ合いですが もしかしたら途中で外野ルール投入するかもしれません」
「いいな!だってまだ誰もそのルールでやってないんだろう?」
「そうですね 今度こそちゃんとしたギャフンを言わせましょうね」
ごめん 教えた私が言うのもなんだが その言葉はたぶん言わない
「よし 楽しみになってきた!」
クルト君がふと真顔になって
「なあ ムギ」
「はい なんでしょう」
「僕が ドッジボールゲームで 大人の団員達を当てれたら 僕を認めるか?」
「そうですね 立派だと思います」
まあ そうは言うても 子供だが
認めるってなんじゃい
「じゃあ 認められたら 僕と婚約してくれないか?」
目が 点になります
「僕は ムギが好きだ 父上にはそう伝えてある 10年待っててよ 立派な尊敬される人になるから」
...言葉が出ない
でも茶化してはいけない
軽くかわしてもいけない
子供だからこそ すごく真剣なんだから
「クルト様」
クルト君は真っ直ぐに眼を逸らさない
「私はクルト様が好きですし 尊敬もしています 将来は素敵な男性になられると思います」
クルト君の眼が大きく開く
「ですが 私にはもっと好きな方が居ます その方と婚約する事になりました お気持ちに応えられなくて ごめんなさい」
クルト君は固まる
「...ムギは そいつの事が 僕より好きなのか?」
「はい」
「それは 誰?」
「バルディン瘴特団団長様です」
「...あいつか」
そのまま
「今日はもう帰る」
...傷つけたかな でもいつか立ち直れるから大丈夫だよ
もう此処には来ないかもね
さて来週のミニゲームは中止かな
ーーーーー
そう思った翌日
リッツの世話中にクルト君はやってきた
「ムギ」
「クルト様!」
「来週のミニゲーム ちゃんとやるからな」
「え? やるんですか?」
「バルディン団長に絶対来いと言っておけ」
「...わかりました」
そのままクルト君はぱっと走り去って行った
うわぁ 背中が泥だらけだよ
何か特訓でもしてるのか
やれやれと私は団長室へ報告に行った




