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88 クルト王子がやってきたところから

「ムギは居るか!?」

翌日朝食後 いつもの馬場ではなく 別邸の勉強室にクルト君がやってきた


「クルト様 お久しぶりです 昨日戻りました」


「何故すぐに僕の所に来ない?」


いや だって おかしいでしょう

「えーと いろいろ残務がありましたし クルト様の居る場所は知りませんしね」


「そ そっか でも 無事でよかった

凄く心配したんだからな」


「はい ありがとうございます おかげさまで怪我なく戻れましたよ」


「...それは嘘だろう 使い鳥の知らせで父上や宰相達が慌ててたのを知ってるぞ 聖女が瘴気に襲われたって」


まあ そうですね

「怪我ではなく意識がなかっただけなので 嘘はついてませんよー」

そういえば頭を打ったから厳密には嘘だけど


「言い方がズルいぞ 今はなんともないんだな?」


「はい 元気です」


「しばらくは休むのか?いつ王宮に来る?」


「そうですね 今日の会議が終わったら家に戻ります 王宮には週の半分くらい出勤予定ですかね」


「来る日を書いておけ 馬房に行くから」


「...いいですけど あまり抜け出しちゃダメなんじゃないですか?」


クルト君は鼻でフンと意気込んで

「大丈夫だ 心配するな」


いえ 心配なぞ何もしてませんが

「そろそろドッジボールもミニ試合でもしたいですね 何人か声かけてみましょうか」


クルト君は興奮気味で

「いいな!僕もだいぶ上手くなったし」


「じゃ団員に聞いておきますね」


「分かった 頼む」



ーーーーーー


午前中の会議はほぼ報告会

東都市の現在の状況を説明する


対策本部長のダウィード様が

「気になるのは 瘴気がまた生まれるという事です 対策の立てようがないのだろうか?」


カーライル様が

「ボビト族の聖獣守神が云うには 空間の歪みが人為的に作られてるのではないかと


つまり 空間魔法士 及び時空間魔法士が関わっているのでしょう


国内の魔法士でその様な動きをしていないかの確認はできますが

国外となると 諜報活動では限界があります」


ファルウェイ様が

「国に認識されていない 無資格の魔法士もいるからの 探し出すのは容易ではないだろうの」


え 資格制度なの?

私 やばいじゃん

罰則 あるかしら


これに関してはあまり進展のある話にはならなかった

とりあえず考え得る各場所に探査魔法が使える魔法士が向かうとの事


後は休暇後の遠征予定だ 人の居ない辺鄙な場所が多いらしく 小規模との事


次の会議は2週間後くらいという事で終了となった


...という事で やぁ 帰るぞー!

ただ 侍女さん達の

「せめてお昼は召し上がってください!」

の引き留めに ご飯食べてから帰る事にした


これがちょっと間違いだったのかもと後で後悔した 早く去っていれば...

昼後すぐに ヴィットーリオ国王陛下がファルウェイ様と宰相様を伴って別邸までやってきたのだ


別邸応接室にて


陛下の迫力 ドーン!じゃらん!

宰相様 ドーン!バーン!

ファルウェイ様 シャン!

私 ちまっ


なんで来るんだ しかも服装が豪勢 威嚇かよ


陛下は優しく

「ムギ殿 この様な服で申し訳ない 午後に重要な謁見があってな その前に話があったのだ」


ファルウェイ様も

「ムギ様 そんな気を揉まなくとも 大丈夫でございますよ 陛下は基本 お優しいですから」


宰相様

「ファルウェイ殿 言い方が悪いな 陛下が誤解されるだろう」


ファルウェイ様は ふぉふぉふぉと笑う



それで一体用件はなんなのだ

とも言い出せず

ずっと黙ったままでいた


切り出したのは宰相様

「オホン 先日 瘴特団のカーライル・バルディン団長から 貴女との婚姻許可申請が提出されまして」


うわわ そう聞いてはおりますぅ

顔が照れる 強ばる


「我々としては 許可を出す前にムギ様の意志の確認をと思いまして」


ソウデスカ ゴクロウサマデス


ファルウェイ様は

「まぁ念の為ですな ただバルディン団長は今まで浮いた話も無かったですし

それもムギ様を慕う素振りも無さそうに見えましたがの 晴天の霹靂というやつで」


陛下が

「ムギ殿は バルディン団長と想いあっているのだろうか?」


おいおいおいおい

若い(?)小娘に親父どもが詰め寄ってそういう話を聞くなぞ もっての外

デリカシーを学んでこい!


という事は言わず

小さく「はい」と言う小心者の私


陛下は残念そうに

「そうか...私はもし良ければ クルト第二王子との婚姻も提案しようかと思ったのだがな」


「え?」思わず目が点


「そ そんな 離れすぎてます」

身体年齢10歳差

実年齢22歳差ですよ!

ついでに身分も差があります!


「クルトから言い出したのだ ずいぶんと気に入られたみたいだが」


クルト君 何を狂ったと?

「く クルト殿下の 今の年頃のよくある気の迷いだと思います」


陛下はふと笑って

「まあ どちらにしろ無理そうだ

私としては それがダメなら 私の側室でもどうかと提案したかったんだがね」

ニコッ


全員「「「!?」」」


宰相様「へ 陛下?」


ファルウェイ様「...ムギ様も罪な方で」


その時 私自身は別の考えに至った

逆に納得した

「...恐れながら陛下 私は政治的に利用はされません」

権力者が聖女を囲い込む形はいちばん安心するのだろう 取り込むのだ

側室とは召喚前世界ではただの恋人役だ

何人いても時の権力者には痛くもない

金はかかるけど


陛下はやれやれと言った体で

「仕方ない それは諦めよう

だが貴族との婚姻に際してムギ殿にはそれなりの地位がなければならない

女男爵の地位を持ち領地を治めてもらうか 王宮にて今後も国の自治に協力してもらうか

どちらか選択してもらえば 結婚許可を出すこととしようではないか」


敵も去るもの引っ掻くもの

ただではいかないか

さて 今それを選ぶ事は難しい


「返答は少しお待ちいただけますでしょうか...すぐには 決められません...」


陛下は

「もちろんだ 心が決まったら返事を

ああ そろそろ我々は出ようか ムギ殿 邪魔をしたね」


ほんとだよ

「いいえ お越しいただきありがとうございました」


宰相様が焦って

「ああ あとひとつ

申請書に カーライル・バルディンと聖女チュ?ツ?ムギ・コジマと書かれているのですが これは」


「はい 私のフルネームです 名前を偽ったつもりではないのですが 呼びづらいようなので つい」


「「「え?」」」


「申し遅れました

ツムギ・コジマ と言います」

ぺこりと挨拶


3人とも 呆気に取られてますね


「チュムギ」

「いえ ツムギです」

「テュムギ」

「...ツムギです」

「トュ?」


っふふ やはりおかしい 笑いが込み上げる

「ああだからもういいんです、通称ムギで」

クスクス

「正式書類の時だけ書いてくだされば」


宰相様が

「そ そうですね なるべく言えるように頑張りますが」


おっと笑いすぎたかも

「お気になさらないでください」


その後はやはりぶつぶつと

チュとテュが練習されながら去っていった



ーーーーー



その後廊下にて 廊下で歩きながらの護衛兵の視点


宰相

「...陛下 打ち合わせでは ムギ様の意志の確認のみではなかったですか」


陛下

「ああ 思いつきで言ってみた 土地か役職を与えれば ムギ殿はこの地を離れ難くなるだろう?彼の地に戻る事も諦めやすくなる

バルディン団長への援護射撃みたいなものだ」


ファルウェイ

「それで結婚を諦めたらどうするんですかね?」


陛下

「バルディン団長が許さんだろう

あれはしつこい獣だ 獲物は逃がさんよ」


宰相

「それにしても 陛下の側室とは 最初はムギ様に本気なのかと」


ファルウェイ

「ですが さすがムギ様 陛下の真意を見抜いてましたな ほほほ」


陛下

「それだけじゃないぞ 聖女でなくとも 後ろ盾が無くとも あれは可愛がりたくなる」


ファルウェイ

「...ムギ様には 早めにご結婚いただく方が 国の安定かもしれんの」


宰相

「ですな 許可証はムギ様のお返事後すぐに出せるようにしておきます」

ツムギ モテモテ~


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