82 まだ温室に居るところから
最初は口を軽く付けるところから
それでもうっとりしてしまうのに
徐々に角度を変えて何度も何度も繰り返す
ふと 意識が外に向いた
「あ あの バルディン様」
「カーライルだ」
それ以外の呼び方は 許さない と言った強さだ
「か カーライル様 人が来るかもしれないです」
バルディンーカーライル様はいい笑顔で
「大丈夫です さっき鍵は閉めたから」
なにい!計画犯か!
呆れ顔の私を 抱きあげてベンチに座り また口に食らいつく
肉食動物に捕食されてる気分 長い
息をするタイミングで
「の 喉が...」
置いてあった籠に手を伸ばして 体を離そうとした
カーライル様はそれを許さず
私を抱えながら籠のボトルを取り
色男が片手でボトルを開ける姿がかっこいい しかも利き手じゃあないのに!
自分の口にオレンジ水を含む
ありゃ 飲まれちゃった
と思ったのに そのまま
口付けて冷気を失ったオレンジ水を私に流し込んだ
「んんんんんんー!!」
ごくん
「可愛いです」
「...もう!いじわる!」
「そんな言い方だと もっとやりたくなる」
私は攻撃力ほぼゼロの なけなしの武器を出してみる 少し睨んで
「覚悟してください
次は 私が貴方を泣かします」
カーライル様は今度は顔を思いっきり崩して
「っは!ははっははは!」
堪えない笑い どんだけウケとるんじゃ
「た 楽しみです プククククッ!」
笑いが収まってから
カーライル様は話を切り出した
「明日 ご予定が無ければ 市内に一緒に出かけませんか?
私がいるので 護衛はなしですよ」
お イイね!
「ちょうどお土産を見てみたかったんです!是非お願いします!」
「一応デートですからね」
そ...そうだよね 2人ならそういうよね どっちの世界でも経験不足でござんす
「...すみませんがこちらのデートのやり方がわかりませんので 教えてくださいね」
カーライル様は楽しげに
「では10時くらいにお迎えに参ります
軽装でいいですよ」
そのまま軽くバードキスして
エスコートされながら 自分の部屋に戻った
今までの事は 現実だろうか
夢みたいで 足元がふわふわしてる
とりあえず明日の服を選ぼう うん
そして明日のために早く寝よう
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朝からそわそわしながらバルディンーええとカーライル様を待つ
うわーなんか初めてのデートなんて 久しぶりだ
今はウキウキワクワクの楽しい時期
多少浮かれるのは許して欲しい
お仕事も終わったしね!
時間通りにドアがノックされる
「はいっ」
開けるとそこに柔らかな顔の カーライル様
「ツムギ殿 おはよう よく眠れましたか?」
わあ カーライル様の笑顔が眩しいぃ
「はい お待ちしてました」
馬車に乗って都市中心部へ
最初は私の買い物から
カーライル様が
「何か見たいものはありますか?」
私はいろいろ狙ってる物がある
ここは海辺に近い となると
「ええ 何か日持ちのする食品とか乾物が見たいです」
カーライル様は目が点になった
「...意外ですね 普通は宝飾品などを見たがるかと思いました」
一般的にはそうかもね
「今は 食べ物に興味がありまして 昆布と鰹節などがあれば 故郷の味が出せると思うんです」
カーライル様はちょっと考えて
「聞いた事の無い材料ですね それでは市場に参りましょう」
市場は海辺だけあって魚系の物が多い
私はかなり興奮してふらっと気ままに店を巡った
魚を買って帰れないのが残念と言ったら
カーライル様が魚を調理してくれる市場内の店を探してくれた
やはり店では生魚のままではダメらしい でも白身魚の揚げ物は揚げたてでとても美味しいかった
店のおじさんに
「すみません 鰹を発酵乾燥させた塊と昆布を乾燥させた物を扱っているお店を知りませんか?」
おじさんは
「聞いたことないねぇ 乾物店だったら向こうの方に固まってるけど」
「ありがとう 行ってみます」
カーライル様は出番なしだ
でも移動の際にエスコートしてくれる こそばゆい
「あの デートの移動時は 必ずエスコートするものですか?」
あ 間抜けな質問だったかも
「そうですが 御婦人が途中で手を離してもいいのですよ 見たい物があった時とか ようは女性のための付き添いですから」
「離すタイミングが難しいですね...
そして男性はずっと気を使わなくちゃいけなくて 大変じゃないですか...」
プッと笑われて
「ずっとではありませんけどね そのうち慣れますよ」と言われた
目的地の乾物コーナーは
いろいろなものを扱っていた
店員さんに形状を説明したら
「似たようなものはこれかな 輸入品だから高いけど あまり使い方わからんので売れないんだ」
あった!鰹節だ!体が震えるほど嬉しい
そこにあるものを全部購入して 他にも
鮭とばとかアタリメ 乾燥ホタテなど 飲兵衛が好みそうな物が集まった
...これは日本酒か焼酎だな と思っていたら 近くの店に 米酒が置いてある
試飲させてもらって かなり日本酒に近いものを買って それを土産とする事にした
私はいい買い物ができて 大満足である
ふと カーライル様を蔑ろにしてるのではと心配になった
オロオロしたが 特に問題なかったようだ
「すみません お待たせして」
「大丈夫ですよ いい買い物できたみたいですね 顔が輝いている」
「っはい!今度作った物をよかったら召し上がってくださいね」
「是非 招いてください
そろそろ昼だ お腹すいてますか?」
さっき魚を食べてますけど
「大丈夫です 食べれます」
「レストランを予約しました 魚介続きですが イカ料理が美味いらしいです」
「お供します」
「ははは その言葉だとそちらが付き添いの従者みたいですよ?」
「ええと ではなんと言えば」
「笑って エスコートのための手を出してください」
なるほど
「言葉だけじゃないんですね」
エスコート 難しいー
食事は上品なレストランでとても美味しかった ちなみにワリカンにはできず
カーライル様曰く「紳士の義務」だそうです 解せぬ
エスコートマナーは作者の考えるルールです
従者のイメージですね




