76 ナルディ様が目覚めたところから
本日は複数話投稿します!話の順番にご注意ください
朝方にナルディ様は昨日のうちに目が覚めたと聞いてほっとした
彼は目が覚めた後も体調が優れない様子らしい
瘴気浄化の作業は他のチームが薄い部分を行うとの事で
私は強制休暇を取らさせられた もう大丈夫なんだけどなぁ
サルティオ様とアナは別の隊と合流してるのに ぶちぶち
なので魔法の勉強を兼ねて明日どのようにあの大量の歪みを安全に修復できるかを考えた
またあの瘴気食らっては堪らない
その最中に
ドアがノックされた
「はい?」
開けると 凄まじく顔色の悪い ナルディ様が立っていた 今にも死にそうな表情だ
「ナルディ様? 大丈夫ですか?」
部屋で休めばいいのに でもとりあえず戻すよりここでヒールかけた方が良いかも
「とりあえず こちらに座ってください!昨日の浄化が足りなかったのでしょうか?血の気がありません」
ナルディ様は言われるがままに椅子に座る 私がヒールをかけようとしたら ビクっとして
「いえ 既に治癒士にヒールはかけてもらってますので大丈夫です 瘴気ももう残ってません」
ナルディ様は死刑宣告されるような表情で
「まずは御礼と謝罪を
私の命を救っていただき ありがとうございました 詳細は人から聞きました
また同行の際にいろいろな不尊な発言をして 申し訳ありませんでした」
とんでもない
救ってもらったのはこちらだ
「助けてもらったのは私です こちらこそ御礼申し上げます それに 指示に従わなかったのは私ですから」
謝ることなんて何もないですと言った
ナルディ様は
「しばらく意識のない間 瘴気は私の中で暴れまわってました その最中 突然私の中に貴女が現れて 瘴気を飛ばしてくれたのを感じました」
あれ 覚えているの?
っつー事は
「ムギ様は 私の欲望をご覧になられましたか?」
「え?ええと」
目がおよーぐ~
「...やはり そうですか あまりにも現実感があったので そうではないかと」
なんと言ったらいいものやら
ナルディ様は自嘲気味に
「男が男を好きになるなんて あってはならない事です」
そんな事はないだろう
ナルディ様はぐっと喉を鳴らして
「お願いです この事は誰にも言わないでください もしお約束できないなら」
小さな鋭いナイフを持ち 首に押し付けた
「私はこの場で自害します」
わわあわわわあわあわ!!
「待ってください!そんな事で死ぬなんて!」
「そんな事ではありません 知られるくらいなら いっそ」
「馬鹿ですか!いいじゃないですか 好きになっちゃったんだもの!」
「え...?」
「いいですか、誰がどんなものを好きだって 他の誰かが否定するのは もってのほかです!余計なお世話なんです」
勢いよく続ける
「こちらの世界では知りませんが 私の故郷の国では 同性でのカップルだって居ますし 結婚だって認めてるところもあるんです 少なくとも私は貴方がバルディン様を愛していても 絶対否定しません」
否定どころか 一部発狂するくらいBL好きな人も居るけどな!
ナルディ様は信じられない様な顔で
「そんな世界があるのですか...
ですが エイダールにおいては 同性での愛は罪なのですよ
もし知られたら 生きてはいけない」
ふう そういう国に生まれた人は本当に不幸だ
「向こうの世界では私は歴史を勉強したのですが 時の権力者や聖職者の指示や 時代の流れなどで 同性愛を禁忌にした事が確かに多くあります
ただそれは その当時 上に立つものの都合が悪いからこそ禁忌にされただけです
国や地域によっては同性愛を推奨する事もあったんですよ
でもその事実は一般的に隠されるか 消されるんです
だから向こうでも偏見や差別は確かにあります でも私は その人がその人らしく生きられないのは間違ってると思います」
言いたい事は言えたが
なんか自分が偉そうな事言ってるなと思った 実際にそういう友人がいたわけではないんだけど
「そう...なんですか
とても心強い気持ちです ただ」
ただ?
「なんでしょう」
「お伺いしたい かの世界では私のような者は どの様に生きてるのでしょうか?」
う?うーんと テレビとかの情報を思い出す
「そうですね いろいろな人が居ますよ 仲間を見つけたり 友人を作って理解してもらったり 行政に働きかけたり 皆 自分の居場所を作る努力をしています ただ一生隠す人も居ると思います 私も詳しくはないのですが」
「同じ気持ちの者など いるのでしょうか...」
あーもう うまく言えないけど
「あのですね!
私があなたの友人になります!
私があなたを理解者になります!
いえ完全には無理だろうけど
だから あなたの居場所がもし他になかったら 私と一緒にいればいい
もしこの国に理解者が居なかったら 一緒に他の国に探しに行きましょう
旅しながら居場所を探すんです!」
ぜい ぜい
なんかやっちゃった感ある いいのか そんなこと言って
ナルディ様は 真っ赤になって主張した私を見て
「本気ですか?」
そう疑われたら逆にさっきの迷いなぞ吹き飛ばず
「ええ!本気ですよ」
「ですが、あなたはこの国の 重要な人物です そう簡単におっしゃっ」
思わずかぶせ気味に
「あーもう つべこべ うっさい! 私がそうするったらするんだ!」
あ やべ 言葉
顔を あ の形にしてしまった
汗がたらり
「...ムギ様 もしかして それが素ですか?」
「......そうです 普段は取り繕ってるだけです」
お互い じーと見て 同時に っぷっと笑う
ナルディ様が
「ははっ ひでぇな 騙された」
私も
「あっは そっちだって 言葉遣いはお互い様じゃん」
では提案を
「ナルディ様がもし嫌だったら無理強いはしないよ
ただ友達になろうよ どう?」
「ああ 俺のことは ロベルでいい」
「じゃ私は 様なしで」
「殺されないかな」
「誰に?」
「......言えないな」
「時と場合を考えながらでいいよ」
「ああ そうする」
よかった 顔色が良くなってる いや元々白いからわかりづらいんだけどね
ちなみに気になったので聞いてみたのだが
「ねえロベル なんでこの間は ちょい突き放した態度だったの?」
「ああ...バルディン団長が ムギのことばかりだったから 嫉妬してた」
んん?
「それは ホームシックとかで心配させて たから だと 思うけど さ」
「それだけじゃねえよ 俺の長年の恋心 なめんな」
長年かーこじらせてるなー
「もし 万が一 億が一 そうだったとして そんな女と 友達でいいの?」
「いいさ」
「そっか」
なんか 照れる
「ちなみに異性間の友人では ハグはあり? 別に恋愛とかじゃないんだけど」
「...普通はしない 家族間くらいだ」
「そっか じゃあやめとく」
一応その国の文化は尊重しましょう
いえ 私も普段ハグとかしないんだけど
なんか 外国人の友人だとついそれもありかな なんて
「じゃ俺 もう戻るわ」
「うん 明日からまたよろしくね」
ドアを開けにいくため 彼に背を向けた
その時 後ろから
フワッと柔らかくハグされた
「...ありがとな」
「お?おう」
よかった うまく まとまって
受け入れてくれる人がいる 受け入れた事で救われる人がいる それがとても嬉しい
ロベル・ナルディ君は25歳くらいの設定です
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