73 瘴気に攻撃を食らったところから〈バルディン視点・アナ視点〉
本日は複数話投稿します!
ちなみに主人公が気絶しちゃったので視点が変わります
最初はバルディン視点です
続いてアナ視点に続きます
〈バルディン視点〉
ツムギ殿に同行できない歯痒い思いをしながら 全体を指揮する為に 集合地点にて各チームの様子を確認する
定期的に撃たせるため 各隊に信号弾を渡す 生存確認の為だ また各隊の所在地を見る為でもある
今のところどの隊も問題ない やはり飛び抜けてツムギ殿の隊が進んでいるな
今日は歪みを見つけるための作戦なので 実際に歪み修復は無理にやらないよう通達済みだ
朝の軽い挨拶時はぎこちなく
「おハヨウ ゴ ゴざいマス」と肩張った声
ああ この分なら大丈夫そうだと安心した
だがツムギ殿は無理をするのではないかとハラハラしながら信号弾の方角を注視してしまう
午後 魔力切れをした魔法士達は既に戻っている
最後のツムギ殿の隊はいつまでやるのだか そろそろ戻りはじめて欲しい
と その時
「団長!赤い信号弾が上がりました!!」
赤い信号弾は緊急事態の知らせだ
何があった!?
「各隊の余力のある魔法士!他団員は直ちに集合! すぐ海岸沿いを南下して 信号弾の場所へ向かう!!」
そして目の前に居るティランミーノに
「すまん副団長 ここを頼む 俺が迎えに行く」
ティランミーノはやれやれという顔で
「必ず無事にムギ様を」と言う
当たり前だ
ちょっとした軍団になって 地響きをあげながら海岸線を馬で南下する
程なく彼らの道を見つけて辿る
砂浜の海辺に横たわる2人 それを見て心底肝が冷えた
「何があった!!」
「団長!申し訳ありません!ムギ様が!」
アリアンが泣きそうな顔で説明する
「ムギ様に破裂した瘴気が襲いかかった後 ナレジェ様が瘴気の中から ムギ様を取り出してここまで戻ってきました
頭を打ってられるので 動かすのは良くないと判断し 信号弾にて救援を要請
ナレジェ様は瘴気の影響でか そのあと倒れました」
すぐに魔法治療士に2人の治療をさせる
ツムギ殿の頭部の怪我は治療が済んだ
ナレジェの方は怪我はないという事
だが 意識は戻らない
瘴気が影響しているか
すぐに2人を馬車に乗せて東都市へ戻った
お願いだ 何事もなく目を覚ましてくれ
〈アナ視点〉
ムギ様が倒れられてから1日経過してしまいました 未だ目が覚める様子はありません
魔法士団員達が代わりがわり 治癒魔法や浄化魔法をかけておりますが 特に効果が無いようです
私はずっと側に近くに居たのに 守る事が出来なかった
瘴気に侵されたのが私だったらよかった
何があってもムギ様は無事でいなければならない それは聖女だからだけでは無い
同僚のサルティオは 自分も一緒に居て守れなかった 一人が悪いんじゃないと 慰めてくれます
お願い 誰か この方を 助けて
ッパン!
「アリアン しっかりしろ」
顔に平手打ちされました 目の前にはバルディン団長
「よく考えろ 今お前には何が出来る
嘆くだけでは何も好転しない
こんな時ムギ殿なら どうするか考えろ そして最善の行動しろ」
一瞬腹が立ちましたが 目が冴えました
そうだ ムギ様なら諦めない まず 自分の最善を尽くすんだ
まずはムギ様の体を確認し 体調管理する 熱はないか 冷えてないか
水分を取らせる為に 口に濡れた布を含ませる 体の血を巡らせる様に手足を擦る
それを侍女全員交代でできるように
ムギ様が起きた時に心配しないように
そうして2日目の午後に差し掛かった時間に バルディン団長とセラーレオ様が連れ立っていらっしゃいました
他にも何名か団員が入ってきました
バルディン団長は恐ろしい顔で
「これから ボビトの聖獣守神を呼び出す 恐ければ外に出ていろ」
とんでもない どんなに怖くても ムギ様の側に居るに決まってる
そしてセラーレオ様がムギ様の左手に着けているブレスレットに魔力を注いでいます
バルディン様がブレスレットに触れて
「ボビトの聖獣守神 コーディアよ ツムギの名を借りて 御身を所望する ー此処に来てくれ」
しばらく魔力のせいかブレスレットは波打ち そして光った
その時窓の外に大きな獣が!
大きい 黒いバッファローだ これが 聖獣守神 以前見た獣だ
その通常よりも大きな獣が しゃべる
『我が友人の名を騙って 呼び出したのは誰だ 事によってはー容赦しない』
バルディン団長は窓からベランダに出て 礼を取り
「呼んだのは 私にございます 瘴気特別対策団長 カーライル・バルディンです 以前祭壇にてツムギ殿の同伴護衛を致しました」
聖獣守神は
『ああ お主には見覚えがある して何用ぞ』
バルディン団長は臆する事なく
「ツムギ殿が瘴気に襲われ 意識が戻りません 我々に取れる手段は見つからず 聖獣守神コーディア殿に縋るため 呼び出しました」
聖獣守神は
『...なるほど 相分かった 友を助けよう
だが我はそこへ入れぬ チュムギを外に連れて出よ』
確かにムギ様の部屋には入れないだろう
我々はベッドごとムギ様をベランダに運んだ
聖獣守神はムギ様をクンクンと嗅ぎ周り
『お主ら 余計な事をするでないぞ』と言って
大きな口を限界以上に開けた 口がありえないほど裂けた ーっなんて恐ろしい!
そしてムギ様を 丸ごと 食べたのだ!
「いやああああ!!」
サルティオが私に駆け寄る 私はムギ様を助けようとするが 止められる
聖獣守神は全身で咀嚼している様に見える 誰も動けない 誰もが真っ青だ
そしてムギ様を食べた獣はしばらく咀嚼を続けて
体を振るわせた後 ペイッと黒い塊を吐き出す
『これに触るな 結界に瘴気を閉じ込めた 処置はチュムギにさせよ』
そのあと凄まじい空気を吐き出しながら ゴボゴボッっと何かを出そうとする
ームギ様だ!顔が見える 無事だ!
そのまま聖獣守神の唾液と共にベランダに吐き出された
皆急いで駆け寄るーが先に着いた団員何名かがぴたっと止まる
何故なら 白いワンピースネグリジェに包まれたムギ様は 唾液で濡れて身体の線があらわになっていた
まるで海から上がってきた女神のように 美しい
「だ だめぇーっ!!」
急いで毛布を持って駆け寄る
団員の皆 視線を外すが顔は赤いー後で殺す!
毛布を包ませたムギ様はバルディン団長にてベッドへ戻された
「聖獣守神コーディアよ 感謝する
団員で他に瘴気に襲われた者はどうしたらいいか 教えてほしい」
聖獣守神はめんどくささそうに
『チュムギに聞け もうできるはずだ』
そして続いて言う
『...お主らにひとつ面白い事を教えてやろう』
『瘴気はむき出しの陰の感情を好む チュムギは瘴気に食われぬよう 派手に戦っておったぞ』
「?どういう事か」
『チュムギは ある感情に蓋をしておったな それを瘴気から守っていた』
「何を...守っていたのか」
『怒りや悲しみだ この世界に連れてこられた時の』
「「「「「「!!!」」」」」」
誰も何も言えなかった
「我々は...どうすれば...」
絞り出すように
『我は教えてやっただけだ ただチュムギは 絶対口にしないだろうからな
お主らがチュムギをこの世界に引き留めるならば知るべきであろう ただ 何をする事もない』
「何故」
『何故なら チュムギは事象に関しては恨むが 誰にも恨みもない』
「なんですって...? 両立するのか そんな事」セラーレオ様が言う
『それがチュムギの面白い所よ 今はお主らを家族のように愛し始めておる 無意識だがな』
クハと聖獣守神が笑う
『ボビト族からの願いだ 人よ チュムギは世界に戻る道をいつか見つけるだろう その時 こちらの世界を自分から選べるようにしてやってくれ』
バルディン団長が
「その言葉 しかと賜った」
皆がそれに同調したようだ
だが私にはムギ様にとっての幸せをどう捉えるべきか 苦悩していた
なかなか怒りを完全に無くすのは大変です
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