70 まだ面接が終わらないところから
バルディン様は
「話は変わりますが 私は辺境子爵の次男坊でして 爵位は兄が継ぎますので
私は軍に入隊しました
父母は仲も良く 兄は妻子供もいまして 楽しい家族なんですよ」
?本当に話が飛ぶな
「ツムギ殿にもご兄弟がいらっしゃいましたね? どんなご兄弟なのですか?」
?わからない 何が言いたいのか
「そ そうですね
兄は糸と言いまして すぐ上の優しい兄です よく一緒に遊んでくれました
弟は冬織って言って歳は離れてるけれど 可愛くて元気な弟です
仲は良いですね」
「そうですか ではご両親はどんな方でらっしゃいますか?」
わけわからない けど 答える
「父は工務店ー建物を作ったりする会社なのですが その工務店に勤めてて 忙しそうだったけれど なるべく早く帰ってきてくれて たくさんかまってもらいました お酒をよく飲んでましたね
母は主婦ですが 織物工芸家なんです だから私達の名前も織物に関係したものなんです
母はいつも元気で 子供達が振り回されるくらいでした」
懐かしい
今も2人楽しく言い合いしてるのだろう
「名前に意味があるんですか?」
「あ はい 私のツムギ は絹織物の事なんです」
「良い名前ですね ご両親にとても愛されていらっしゃる」
そう 私はとても愛されていた
あ やばい うるっとくる
「そ そうですね 良い両親でした」
バルディン様は黙って聞いてますが 私がたまらず
「あ あの 結局何の御用件だったのでしょうか?」
バルディン様はニヤっとして
「言ったでしょう 泣かしに来たって」
いやいや パワハラしにきたんですか?
「...そんな簡単には泣きませんよ」
「いえ 貴女は泣く事を覚えた方がいい」
バルディン様何故か私の両手首を掴む
障害物が何もないので ノーガードでした
「ご家族に会いたいですか?」
っっっぐっ
「それは...でも 無理...ですから」
顔はしかめるけれど 少し俯くけれど そんなんで泣くもんか
優しい顔のバルディン様は
「私は 貴女のご家族に言いたい事があります どうか代わりに聞いてください」
ど どんなこと?
でも はいとも いいえとも 答えられない
構わず手を掴んだまま バルディン様は言う
「あなた方の大切な娘を こちらの国難に巻き込んでしまって 本当に申し訳ない
あなた方が会えない分 私達はツムギ殿を愛してゆきます
ツムギ殿は賢く素晴らしい女性です
彼女を産み 育んでくれて ありがとう あなた方ご家族に最大の感謝を申し上げます」
ーたすん
や やだ
涙 出てくるな
止まれ 泣くな
だめだ 俯いてても 出てしまう
もう数滴 下に落ちちゃってる
せっかく我慢してたのに
「...バ バルディン様の...」
「馬鹿 バカ ばかぁ」
手を自分に引き寄せて泣き顔を極力隠す
でもバルディン様の力が強すぎて ほとんど隠れられない それも腹立つ
バカバカバカバカ
「う...っぐ...うぅ ふっぐ...」
「ツムギ殿」
「ううっひ...は はな...っぐ して...」
「ダメです 離しません」
決壊した涙腺は もう止まらない
えぐえぐと泣きじゃくる自分に呆れ帰る
30歳過ぎた女の泣き方じゃない
きっと顔はぐしゃぐしゃだ 鼻水とか出てる 絶対
かなり力尽くで椅子から落ちるようにしゃがみ込む 流石にバルディン様は手を離す
でも立ち上がれない そのまま膝を抱えるように泣いた
バルディン様は気を遣ったのか毛布を上からかけてくれた 少しは人の目から隠れたので安心すること すぐ
「ひあっ?」
身体ごと持ち上げられバルディン様の膝に抱え込まれた
抱えられた恥ずかしさはあるはずなのに 私は目の水が止まらなくてそれどころじゃなかった
まるで赤ちゃんをあやしてるみたい
大きな体にすっぽりと収まってしまった
「会いたいですよね わかります 会えない寂しさは 少しでも俺たちに埋めさせてください」
ぶわっ 涙が か 加速する
「バルディン様の」
「はい?」
「バカ」
「はい」
「あほ」
「はい」
「いじわる」
「はい」
「おたんこなす」
「?なんだかわからないけれど はい」
しばらく流れるままに泣く
恥ずかしさとか もうどうでもよくなっていた 彼の胸が心地良くて
そのままに居たかった
今は人に触れる安心感をしばらく味わいたかった
後で猛烈に恥ずかしさで後悔する事は分かってはいるけれど
やっと泣いた




