7 コーディア様に会うところから
『チュムギー起きてー』
『おはよう〜 祭壇に行くよー』
うーんボビト達よ 乙女の顔を集団でペチペチするのはやめたまえ
しかもまだ外は薄暗い 夜が明けるのにまだ時間あるんじゃない?
「おはよう ずいぶん早く出るのね 支度すぐするからちょっと待ってて」
『コーディア様は朝しか会えないのよー』
『僕らは花を持って歩くから チュムギは果物を持って着いてきて!』
周りがまだ暗いため 道が不安だったけれど 昨日摘んだ白い花はうっすら発光して ボビト達が持つと飛行機の夜間航路の様に見えて綺麗だ
小一時間程歩いた所に滝があった ここが祭壇のようだ
大きな窪みのある岩の中央に持ってきたお供え物を並べる そこから少し離れた土の上に皆で座って待つのだそうな
ボビトのひとりが突然歌い出した
シンプルで短い曲 何を言ってるのかはわからないけど綺麗な歌だわ
繰り返し歌う際は2人続いて歌う それを3人、4人とどんどん増えていった
全員が何度目かの歌を歌う最中 奥から大きなー私の身体の何倍もの牛が 祭壇の前まで悠々とやってきた
見た目は焦げ茶色の牛だけど顔の周辺は立派な長毛で覆われ 立派な角を持っている
バッファローかな 瞳は荘厳で優しい
ボビト達は歌を止めて恭しく礼を取った
え そういうお作法はちゃんと前もって教えてください
周りに合わせるように頭を下げる事数秒後 牛ーいやコーディア様は口を開いた
『皆 息災か 何やらいつもとは違う様だが ボビト族が人間を連れてくるとは珍しいものだな』
『コーディア様 ご機嫌いかがでしょうか』
『ボビト達はコーディア様のおかげで安全に生活しております』
『今日は我等の客人 チュムギを連れてきました』
『チュムギは困ってます どうかチュムギをお助けください』
コーディア様は私の方を向く とても優しい瞳
『ふむ チュムギとやら お主はこの世の者では無いな?匂いが違う
...何処からか呼ばれた様だが 何が望みだ?』
一瞬ふと答えに窮した
私の望みと言われたらそりゃ元の世界に戻る事だけど まずは若返りを止める事が先決だよね
「はい 一番の望みは 自分の世界へ帰る事です ただその前に
私は意図せず自身の時を戻しているようなのです ボビト達にコーディア様に助けを求めるようこちらに参りました」
『面白い事もあるものだな 私は其方を元の世界に戻す事はできない 私にできる事は時戻しの術を一時的に止めるだけだ』
やっぱりね だと思った
異世界小説もので帰還は呼んだ人じゃないとできないっぽかったもんね
最悪は...いやいやそこは考えたくもない
「はい それだけでも充分でございます
哀れな異人の為にお導きください」
『ではボビトよ 私の毛を切るが良い
それで腕輪を作り チュムギの左手に付けるのだ』
『かしこまりました!』
「え 切らなくても良くないですか?」
ついうっかり荘厳な場所なのに間の抜けた発言してしまった...
『ではどうするのだ?』
いやコーディア様の毛並みの感じだと...たぶん切らなくてもいける気がする
私はバッグから携帯用ブラシを取り出してコーディア様に近寄った
「不快でしたら仰ってください 折角の綺麗な毛並みが鋏でバッサリは台無しなので... 」
私は丁寧にコーディア様の毛を梳き始めた コーディア様はちょっと驚いた顔で そして徐々に目を細めてはなすがままにされていた
思った通りだ もっさりと抜け毛が取れた 昔飼っていた実家の飼い犬の毛の抜け替わり時期と同じ いやそれ以上の毛が取れた 首周りの一部だけなのに
『クハハハハ なかなかいい経験だ 人間に毛繕いされるとはな
意外にも気持ちが良いものだぞ』
「よかったです もうこんなに取れました ありがとうございます」
『どうせなら背中部分もやっていけ 取れた毛は何かの役に立つだろうて ちょうどこそばゆかった所だ』
まさかのリクエストですか
お気に召していただけて結構ですが こそばゆいってことは...
頂戴した抜け毛は手持ちの石鹸で洗っても良いですかねぇ
と心の中で貰った後の手順を考えてしまいました
広告の下にある星を押して評価いただけると 嬉しいです!
ブックマークいただけても やる気がみなぎります!