62 遺跡発掘されたところから
東領地の遠征準備も着々と進んでいる最中 瘴特隊の魔道士 セラーレオ様は 見事な銀髪をなびかせながら 私を呼びに来た
「こんにちは セラーレオ様」
「ムギ様 出ました、聖女に関する遺物が出てきました!」
おおー旧エイダール聖女のか!
「すごいです! どんな物が出たのですか?」
「恐らく聖女様の私物です ただ文字が読めないため不明な物もありますが
手記のようなものがありまして 是非ムギ様に解読いただきたいのです」
それは確かに私にしかできないな
「はい すぐ参りましょう」
話変わって
先日 雨季の間でも 魔道士のチーム編成で 最初のスピナの森に 追加の浄化をする為に行った
セラーレオ様の多種多彩な魔法にはとても驚いた
私は攻撃魔法はほぼないため
彼は火魔法で一瞬で野犬の群を追い払ったり(殺さぬ様に手加減してたらしい)
眠りの魔法でやり過ごしたりとしていた
ちょっと羨ましい
スピナの森は前の遠征時に消しきれなかった瘴気を減らすのが目的
王宮には聖魔法使いは3名のみ
ただしMP値が3人分を合わせても 私の数値に及ばないため
ピュフィリケーションで浄化を行うも スピナの森全部は浄化できなかった
それでもだいぶ薄くなったかな
私も歌の浄化魔法で応戦したので 完全とは言えないが森は正常化したと思う
遠征に行った時 セラーレオ様とはだいぶ距離が縮まった
以前は私がファルウェイ様に怒りをぶつけた時に隣で一緒に怒られてしまったから
しばらくうまく話せなかったらしい
その節は 申し訳ない
話戻って
遺跡発掘現場は 王宮城内の旧聖堂にある
今は祈りの場として使用しないでいる
そのため ありとあらゆる床が掘られた状態だ
「出てきた遺物はこちらです まとまって箱に入れられてました」
詰所の机の上には 大きめの陶器の箱 多少破損はしてるが 良い状態だ
中を開けてもらうと
A4のノート メガネ 文房具などが上にある
中のものは明らかに 聖女こと田辺結衣さんの私物だろう
学校の教科書やカバン 制服などが入っていた かなり傷んでいた
「召喚された時 学生だったんだ...」
セラーレオ様は記録をしながら
「そうなんですか 年齢は召喚当時 いくつくらいだったのでしょう...」
学生証があったためそこを確認
学生証の女の子は愛らしい子だ
「高二なので...16歳か17歳ですね 可哀想に...」と思わず漏らして反省
セラーレオ様は罰の悪い顔に
「すみません えーと
ここにあるものは確かに召喚者の物ですね
おそらく見るべきはこのノートですね 日記なのだと思います」
なにぶん古い物なので 慎重にページを捲った
読んだ時はかなり予想外な内容だった
ーーーーー
【召喚初日】
私 気がついたら異世界に召喚されちゃったみたい!
なんか魔法陣みたいなところに瞬間移動してて 超びっくり!
何か私の事聖女とかって言ってて
何なの〜って感じ
【召喚2日目】
ここの人達ってすっごい美形が多い!
しかもなんか恋の予感がします~
でもお仕事で「瘴気」?とか言うのを何とかしろって
わけわかんない
でもイケメン騎士様がいろいろ教えてくれるならいいかなって思う
ーーーーー
ーーパタン
あっ軽いな!思わず閉じちゃったじゃない
微妙な顔つきの私にセラーレオ様は
「ムギ様 どうかしましたか?」
どう言ったものか
「えーと さっき可哀想と言いましたが撤回します 何か楽しそうな生活を送っていたみたいなので...」
セラーレオ様は微笑んで
「そうですか 申し訳ないのですが記録のために翻訳が必要でして
もう少しお付き合い願えますか?」
そうですよね はい 頑張ります
ーーーーーーーー
田辺結衣ー前聖女の日記を手に取って記録を残すことになった
ただ...あの文章のまま声に出すのも恥ずかしかったので もう適当に要約したものを話した
「...えーと 召喚日から15日目はと」
【修行つらたん(T ^ T) でも光魔法全部できた!】
「...魔法の勉強が 大変だと
でもすぐに光魔法を習得できたみたいです」
セラーレオ様は
「しかし 15日目でそこまでできたと言うのが凄まじいですね」
「そうですね 魔法習得に関して特別能力が高かったようですね」
どうも情報が断片的で不明な部分があるが この田辺結衣は天才肌のタイプである
理屈はわからないけど できた みたいな感じかな
そしてどんどん読み進めていく
【瘴気の浄化(?)って完全にするには 何か特別なコトしなきゃダメなんだって イミフ
聖女にしかできないって 光魔法を同時に世界中に届けろって? 無理ゲーじゃね?】
「...瘴気の完全浄化について書かれてます それは聖女のみの術のようですね
光魔法を全世界へ同時に届けること...」
次のページを読み進む
【私 超すごいんだけど!
体が光ってばーーーってなって 全部浄化できちゃった!体が消えるかとマジ思った!
バイバイ瘴気!あーもう超ー疲れた】
「光魔法で聖女が発光して その光で浄化が済んだようです
体が消えそう...? どういう意味だろう」
しばらく進んで
【北の国で住めなくなった小人さん達がいた なんだっけこーゆー生き物
ホビットとか映画で言ってたっけ?
可哀想だからエイダールに連れてきちゃった
住む所も私の土魔法で地下に秒で作ったわ!喜んでたヨ】
「...!たぶんボビト族について書かれています
元々北の国に住んでたのを聖女が連れてきたそうです 土魔法で地下住居を作ったと」
ボビトはホビットが変化したものだろう
しかもボビトは地下から出入りする
そうか 聖女繋がりで好意的だったのかも
その後の話はほぼ恋愛談である
段々と読むのが辛くなってきたが
まぁお幸せでよかった
セラーレオ様は
「同じ聖女でも 全然違うみたいですね」
さすがに全部読んでて疲れた
「まぁ...私より全然若いですし 前向きというか 明るくて社交的な性格だったみたいですね」
ただ 最後まで幸せだったのが本当に良かった
帰れる様な情報は書かれていないが 幸せに結婚までしている
どうにも自分と共感ができなくて
はぁとため息が出た
【作者からのお知らせ】
58話が2方向へ分かれます。パラレル版は恋愛要素少なめです。
違う方向へも舵を切ってしまいたくなり 同時にパラレル作品を投稿することにしました。
よろしければそちらも読んでいただけると嬉しいです!
https://ncode.syosetu.com/n0111gz/
召喚聖女は逞しく パラレル ~聖女なんてごめんです!~




