57 浄化が終わったところから
そんなこんなで向こうから ボビト達が走ってきた
『チュムギー 終わったー?』
『あっチュムギ 髪形が変わったー』
『短いのもかわいいー』
いつもと同じ調子のボビトには救われるなぁ
「ありがとうっボビト コーディア様とゴブリン達は大丈夫?」
『コーディア様は今お休み中』
『コーディア様が 6日後くらいに祭壇で待ってるってー』
『ゴブリンはみんな気がついたよー』
「そう よかった」
ボビト達の後ろからおずおずとゴブリン達がやってくる
隊員皆さんが警戒モードに
これ皆さん 殺気は閉まってください
『あ あの チュムギ さま』
『ごめんなさい たくさんいじわるして』
『僕たち あまりよく覚えてないのだけど たくさん悪いことした』
『助けてくれて ありがとうございます』
全員でわーんと泣きはじめた 見た目が カエルの大合唱か
「いいの みんな瘴気のせいなんだから 元に戻って本当によかった」
ニコッと笑う
『チュムギ様の髪の毛を集めました』
綺麗に布に包まれた髪があった
『いつかチュムギに恩返しに行きます』
恩返しは別に期待しないよー
ボビトに向かって
「じゃあ来週にボビトの森の入口に居るわね また朝早く祭壇でしょう?
ボビトは迎えに来てくれるかしら?」
『『もっちろーん!』』
『じゃまた来週ー』
手をフリフリして分かれ 残すは我々 瘴特団のみになる
「じゃあ皆さんひとりずつ治療しますね」
大きな怪我は無いようだけど 咬み傷やら引っ掻き傷が多かった
私は感謝をしながら丁寧にヒールをかけて回った
「申し訳ないのですが来週早朝 ボビトの祭壇に行かなくてはなりません
うまくいけばその日の午前中に王都に戻れると思いますので あともう少しお付き合いください」
バルディン様が
「承知しました 後はお任せください」
助かります 頼れる上司です
「今からなら夕方中には戻れるでしょう 強行になりますが 対策本部にはバレずに済ませる事ができます ムギ殿は大丈夫ですか?」
本当はHP値MP値共にギリギリだ
「はい 早く帰りましょう」
全員無事でよかった 本当に無理させてしまったと思う 皆にお礼をしなければ
全員無事にその日のうちに戻る事ができて アナとポティロン様が私の家に留まり 他の方は帰宅していただく事となった
私は戻ってから早々に床についてしまった
ただ アナが離れで寝るのは忍びない為母屋の仮ベッドで休んでもらう事を指示した
だって アナが男の人と同じ部屋で寝るのはまずいでしょ
夜中 ふと目が覚めた
外の空気を吸いに 熟睡のアナを残して寝室を出る
ふと左の離れに灯がついていたのに気がついた ポティロン様が表で座って見張ってるのかな
ん?あんなに大きい人だったっけ
いえ瘴特隊はみんな大きいですけど 肩周りがもうひと回り大きい気がする
よく見たら バルディン様だった
どうしたんだろう 団長様自らが見張り番なぞするんか!?
コーヒーを2人分とクッキーをお盆に載せて 庭から離れに向かった
穏やかにバルディン様がこちらを見て言う
「どうなさいましたか」
団服ではあるもののラフに着崩している
「どうじゃありませんよ 今日はお帰りになられたんじゃないですか?」
「ポティロンは疲れが出ていたので 帰らせました アリアンも相当なんじゃないかな」
「そうですね 横で熟睡してます」
「貴女は大丈夫ですか?」
「はい 早めに寝たんですけど 緊張が残ったのか目が覚めてしまって
よかったら コーヒーどうぞ」
バルディン様は嬉しいのか顔が笑う
「良ければ少し雑談でもいかがですか」
「はい もちろんです
今回は本当に申し訳ありませんでした」
ざ 雑談じゃないが 一応謝っておきたい
「いえ タイミングが悪くて瘴特団を出せなかったのはこちらの不手際でもあります
ただ貴女は無茶をしますから 目が離せないです」
「...ご迷惑おかけしてます」
「おそらく今回の始末は 隊員以下で内密に処理できるでしょう
隊員が戻ってきて チームを作って 来週のタイミングで一泊野営
貴女が神獣と話をして帰る それで終了した形で誤魔化せるかと」
す 素晴らしい
「そうなればありがたいです」
「ところで気になったのですが」
「はい?」
「ボビトや聖獣 ゴブリンまで貴女のことを『チュムギ』と呼んでいましたね」
ああ 舌が長すぎるからね
「そうなんです 「つ」が訛ってしまって」
「え?」
ああそうか 説明してなかった
「実は私の名前 ムギとは少し違うんです」
「...本当は なんと?」
「つむぎ と言います 警備隊で名前を言ったら 皆さん揃って「つ」が上手く発音できないみたいで
そのまま愛称で ムギを通してました」
今更ながら滑稽さにクスクス笑ってしまった
「テュムギ」
「いえ つ むぎ」
「チュ ム ギ」
同じ発音をするのでやはりおかしい
クスクスクスクス
「つーむーぎーです」
バルディン様は椅子に深く座り直し
落ち込みます 皆で訓練しなくては」
それは珍風景だ 厳つい雰囲気で「つ」の発音訓練をするなんて
「あはは やめてください 人に会うたびに妙な空気になります もうムギで定着しましたからそれでいいですよ」
「ではせめて私だけでも 2人の時は」
ん?なんだその言い回し
2人の時はそんなにないだろう
ちょっとぐるぐるしてたら
バルディン様はひとりで「つ」の練習をぶつぶつとしていた
「無理しなくていいですよー」
「いえ あと少しでできるような気が すみませんがヒントはありませんか?」
真面目か!
「...口笛吹く感じですかね 窄めて 息を細く出す?」
口の形を実際に窄める
「つぅー」
バルディン様もこちらをじっと見て
口笛の形になる
2人正面向き合った状態に
...あり?
変な空気に
んでもってバルディン様
ちょっと今顔怖くなってます
そしてそんなに凝視しないで
ゴトン!バタン!アナがドアを開けた
「隊長!!ムギ様が消え!」
「ハイ!ここに居ます!」
さあ寝ましょう
なんだか落ち着かないけれど
「お お休みなさいませ」
早々下がって 無理くり 寝た
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