51 第3回目遠征予定組みするところから
午前中の会議では次の遠征日程が決まった
この国の雨季がそろそろ始まるという事もあって 1ヶ月ほど先へ延びるらしい
次の遠征は長くなるため 準備に時間もかかる
その間は最初に行ったスピナの森のその後の対処や 瘴気浄化の研究を急ぐこととなる
ただその間は休みも多く取っても良いようなので瘴特団の一部は帰省する人もちらほらいるとのこと
私も休んでいいのかなー
と言ってもどこかに行きたいところがある訳でもなく 雨だしのんびりしようかなぁとも思う
少しウキウキです
さて 今日もジルド君が飽きもせずやってくる
ちょっと横柄だけど 自分の弟の姿に重ね合わせてしまい なんだか可愛く思ってしまう
そんな彼が今日はボールの投げ合いではなく
私の作ったラップサンドのようなものを食べている
「なぁ ムギ お前は誰か結婚相手は決まってるのか?」
子供とはいえ何つう質問だ!居るわけない!
「い いいえ いませんよ」
ジルド君は
「父上がな そろそろ婚約者を決めると言っていて
公爵家の令嬢との見合いの場が設けられると言っていたんだ」
おお なるほど そんな年頃でお相手が決められるのね
彼は私の作ったラップサンドを頬張りながら
「別に婚約が嫌な訳じゃないが ムギもいつかは結婚して 王宮からいなくなるのかなと思った」
結婚の予定はありませんけど 王宮からいなくなる可能性は高いです
「そうですね 私はどうも結婚とか恋愛とかが遠くに感じるので どうなるかよくわからないです」
ジルド君はいいことを思いついたように
「じゃあ ずっとここにいればいい!だって ムギがいると王宮も楽しいし」
って君は東の領主に戻るんでしょうよ
子供だなぁ つい笑ってしまう
「ふふふ ジルド様はそのうち東の領地に戻るんでしょう?
そしたら寂しいけれどお別れですよね」
ジルド君は あれっ という顔をして
「い いや じゃあ 一緒にムギが来ればいい! 僕の侍女になれば問題ない!」
「それはちょっと」
「何でだ
だって僕の侍女になればずっとそばに居られるし ムギも結婚しないでも楽しいだろう?
ムギはその方が幸せになれるに決まってる!
ここで下働きなんかしなくったって ずっとずっと贅沢できるんだぞ!」
あ
これ 矯正しないとあかんヤツだ
思わず 右手の中指と親指で輪っかを作りーーーデコピンッ!
「っいっってぇ!!!」
安心しろ 峰打ちじゃ なんちゃって
「下働きなんか とは何つー言い草ですか 下働きだって立派な仕事ですよ
第一 なんで偉そうに言うのですか」
ついでに人の幸せを決めつけてはいかんぞ
ジルド君はちょい涙目で
「だって 給金は払ってるから 実際偉いんだぞ!」
「ジルド様がですか?」
「それは...父上だけど...」
「じゃあ偉いのはジルド様じゃなくて ジルド様のお父様ですよね」
「...」
お茶を一杯含んでから
「ジルド様のお父様は 私はよく存じませんが 素晴らしい領主様ですか?」
「当たり前だ みんな父上の事は尊敬してる」
「じゃあ きっとお父様は使用人さん達に感謝をきちんとしている方なんでしょうね」
「?どう言うこと?」
「ただお金をくれる人は 尊敬されません
働きの苦労を労ってくれる人や 理解してくれる人が尊敬されるんですよ」
もうひと口飲みながら
「ジルド様が彼らの仕事をたいしたことないと 感謝しない人なら
お屋敷で働く人達はジルド様を尊敬しなくなるでしょうね」
悔しそうなジルド君
「それは 嫌だ 僕も父上みたいに尊敬されるようになりたい」
「そうなってくれたら 私も凄く嬉しいですね」
ジルド君 しばらくグググとしながら
苦しそうな一言を捻り出すように
「うん ...わかった」
あああもう 素直で可愛いすぎ!!
ジルド君の頭をグリグリ撫でくりまわして
「よくできました 頑張ってくださいね!」
照れながらジルド君
「......感謝って具体的には何をすればいいの」
私はニコニコで
「簡単ですよ まずは『ありがとう』って言えばいいんです!」
「ムギ」
「はい?」
「...ありがとう」
あーもーあーあー可愛くて仕方がない!!
キュンキュンする!!
そんなタイミングで 後ろから
「殿下?何故こちらに?」
と バルディン様が目を丸くさせている
でんか?電化?
でんかとは?
あ そういえば レッスンの時間かも
でも でんかって...
「バルディン様 こちらは東領主の御子息ジルド様...ですよね?」
バルディン様は何言ってんの?的な顔で
「いえ こちらのお方は
ヴィットーリオ・エイダール陛下の第2王子
クルト・エイダール殿下です」
え ええ えええ えええええ!
王子ー!?
あんぐりと表情が固まってしまった
なんとなく察したバルディン様が
「東領主の子息であるジルド様は 先日王宮へいらっしゃいましたが 御歳30を越えられております...」
残念そうに私を見る
「...ジ クルト様 嘘ですか」
もうクルト君でいいや
クルト君は
「その方が都合がよかったからだ」
悪びれない態度で言う 体勢も整えたようだ 可愛くない
更に
「王子だって分かったらムギは相手してくれなかっただろう?」
ああ その通りさ とも言えず
「ぎゃふん!」
クルト君は納得したように
「なるほど ぎゃふんとはそういう使い方か」
給与も感謝のうちではあるのだが 感謝があるだけで 続くこともあるよね(ムギ)
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