35 王陛下と宰相に会うところから
乗馬の楽しい気分から 王陛下との謁見場所へ バルディン様が私をドナドナする 子牛の気分
「失礼します陛下 ムギ殿をお連れしました」
「入れ」
入ってすぐ会釈状態で挨拶をして
「何かご用がございましたでしょうか」
ヴィットーリオ王ー陛下はとても柔かに
「２人とも先日の調査遠征はご苦労だった 早速成果を挙げられたとの報告を聞いている」
「「恐れ入ります」」
「今後もまだまだ遠征が続くとは思うが 本格的に遠征が始まる前に ムギ殿の披露を執り行うべきかと思ってな」
.........待った 要らない事を
私にはそういうことは断固やりたくない理由があるので どう断ればいいか必死にその場で考えた
まさかこんなに早く持ち出されるとは思わなかったので 今理由が整っていない
「ムギ殿を聖女である事を国内に示して 貴女に不自由のない様にするのが良かろうとな」
押し切られる前に言うしかない
「恐れながら発言をよろしいでしょうか？」
「勿論だ」
「私は披露をする事を好みません ですので辞退させていただきたく存じます」
そこに居る全員が私を注視した
陛下は
「遠慮をしているのでなければ受けて欲しいのだが ...何か理由あってのことだろうか」
私はまず最初に言える事から
「私はご承知の通り異世界から参った者ですが この国とは全く違う文化 価値観で育ちました ですので聖女としての身分はこの身に過ぎるもの
その価値観の違い故 私は私がこの国の今までの形と変えてしまう可能性があると考えてます
そんなー危うい者に聖女という名誉を与えるのは危険だと思われませんか？」
しばし沈黙が走る
横にいる宰相という人が
「しかし ムギ殿はそう仰っても 国に害を為そうとは思われないだろうと 聞いております
貴女は一般市街でも王宮内でも非常に礼儀正しく、謙虚で働き者であると高い評価です
私自身はじめてお会いしましたが 聡明で むしろこの国の発展に尽くしていただける方とお見受けします」
それは嬉しい事だ 今までの事が間違ってないのね
「ありがとうございます とてもうれしいです
私も皆さんに良くして貰っております
なのでこの国のルールはできる限り守っていきたいと思っています
それに瘴気の問題も力になりたいと思います」
「貴女が望むのであれば窮屈な思いもさせません 基本的に自由にして良いのですよ」
自由？
一瞬 よろめいたが 息を吸う
ううん この人たちの言う自由と私の求める自由はたぶん別物だろう
「ひとつ 私の世界の昔話をしましょう
あまりこの国にそういった話しを持ち込みたくないのですが」
そして空気を吸って言葉を紡いだ
「あちらの世界には魔法は存在しないのですが とある信仰心の強い少女が神から啓示を受けて 危機に瀕した国を何度も奇跡で救いました
いよいよ国が完全に力を取り戻す時 突然 神の気まぐれか少女は奇跡の力を発揮できなくなります 彼女が信仰を無くしたわけではないのに
力を無くした少女はどうなったと思いますか？」
誰も答えない
「味方の国民に失望され裏切りで敵に引き渡され 殺されました 邪悪な魔女として
悪いことに仲間の王すらも彼女を助けませんでした」
息を呑む音がする
「大きな力を持つ者はその力を失ってからはかなりの確率で不幸に落とされます まるで罪を犯したかのようにです
私の能力もいつどうなるのやらわかりません
私は 不条理に殺されたくないのです」
ああ言ってしまった 不興を買うかもしれないけれど 後悔は...ちょっとあるけど
陛下が口を開ける
「...どうやら我々が浅慮だったようだ 貴女の考えを尊重したいと思う
...許せ」
そう言って陛下は頭を少し下げた
私含め周りがザワっとする
あわあわ この騒めきは... 王族って謝っちゃダメなんじゃ！？
「あああ とととんでもありません！謝ることなど何もなくて 私が異世界人で頑固だだけで............っへっっぶしん！」
噛んだ上に、汚いくしゃみまで...！リッツの毛のせいだ なんて間の悪いことをおおおお
「ご、ごめんなさいっ！」
たちまち顔が赤くなっていく もうどうしたらいいのやら
そこで「ッブ！クククク」と笑いが隣から
バルディン様が 笑ってる
そして陛下も顔を手で押さえながら笑い堪えてる...
宰相さんも文官の人もほぼ爆笑のご様子
これは逃げるが勝ちかも
「バ バルディン様！御前から下がりましょうか！」
「承っ知しましった」
まだワロとるか
勢いよく頭を下げて退出する
陛下が
「ああ ムギ殿 また別邸に行く 貴女と話すのは面白い」
嫌ぁぁごめんですー！
ムギの言う 奇跡で国を救う少女って
誰だかわかりますかね？
ちゃんとモデルはいるのですが…
誰もわからなかったらどうしよう
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