婚約破棄ですって、じゃあ傷心旅行ですわね!
ようやく婚約破棄!
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「アリス。本日この時をもって、君との婚約を破棄させて欲しい」
アリスの冷ややかな目に当てられたプライスは気まずそうにその話題を切り出した。
少し肌寒い風を感じながらホールから聴こえてくるワルツに耳を向けながらシャンデリアの光を受けるプライスとその横に引っ付くペディア・シャグラスを一瞥した。
「プライス様、言ってくださいませ」
「あ、あぁ。すまない、僕は…君ではなく、ペディアを愛している。」
すりすりと猫のようにプライスの腕にひっつくシャグラスはこちらを見て勝ち誇った顔をしている。妙に鼻につくなその顔は。
しかしコイツ、まさかバルコニーに呼び出して婚約破棄してくるとは。
そう、今まさにペディアとプライス、そしてアリスがいる場所はバルコニーだ。
そしてプライスはおそらくペディアに背中を押されたのだろうが、昨日の事もあり怖くて私の顔を直視できないというところだろうか。
目線が全く合わない。
最後まで腑抜けだったわね。
「私は構いませんわ。ただしご自身でそのお話を国王陛下になさってください。
では、要件は以上ですね?」
パチン、とわざと音を鳴らして扇子を閉じる。
ニヤニヤと勝ち誇った顔をしてるそこの小娘に投げつけていのを我慢し、プライスが言葉もなく頷くのを見て踵を返す。
行先はそう、勿論、彼らの元。
□
「傷心旅行よ!!!!!!!!」
バァン、という音が響くほどに扉を開ける。本来やっては行けないことだ。おそらくペディア・シャグラスがやってたら私はキレ倒しながら飛び蹴りをしていた。
だがまぁノックしたら「どうぞー」と間延びした声が返ってきたし、見てる人もいないし良いだろう。
「あらまぁだいぶ元気になって帰ってきたわね」
「ちゃんと婚約破棄されてきましたか?」
「されてきたわ!さぁ!旅行よ!」
「傷心をつけなさい一応」
舞踏会には一応休むための部屋が設けてある。
その部屋を男2人で借り、そうそうにダラダラしていたハラメスとヴェディハットを叩き起すような声音で突撃した。
昨日のあの後、ハラメスの「じゃあ本当にうちにきなさいよ」の一言で旅行が確定した。
丁度今日の舞踏会は長期ホリデーに入る前に開催されるもの。つまり明日から3ヶ月ほどの長期に渡る休みになるのだ。
「ホリデー期間中に舞踏会に招かれても変な噂だらけでしょ?じゃあホリデーはうちの国で遊んでいきなさいよ。傷心旅行とか言っとけば良いじゃない。」
そのハラメスの言葉にヴェディハットと私は「行く!」と即答した。熱砂に囲まれた国は昔からとても興味があったから嬉しい。
先程すぐに部屋に戻り、兄に手紙を出した。
うちはもう父親がそうそうに引退し、年の離れた兄がシアトル家の主としてバリバリ働いているので一言「婚約破棄されて悲しいので友人の国へ傷心旅行に行ってきます」としたためておけばホリデーで帰ってこないのを心配されることもないだろう。
ハラメスの国に着いたらまた手紙を出せばいい。
「ねぇ魔法の絨毯とかあるの?ランプがあるのはほんと?確か土地の魔力的に精霊が見やすいのよね?」
「辺り一面砂漠って本当ですか!?なんでも水が貴重だとか!貴方が氷魔法なのも関係ありますか!?」
「落ち着きなさい!明日を待ちなさいよ明日を!」
ぎゃあぎゃあと楽しみを隠せずハラメスに群がる私とヴェディハットを押さえつけながらハラメスも楽しそうに宣言する。
「うちの国を楽しみなさい!きっと驚くわよ。こっちじゃ見れない1面の砂漠と綺麗な星空。あなた達に見せたいもの沢山あるんだから!
じゃあ明日の朝支度して部屋にいなさい、うちのが迎えに来るわ」




