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婚約破棄されそうですわね

21時にもう一個上がります。

ブクマ、励みになりますありがとうございます

シャグラス男爵令嬢が珍しく自分から私に突っかかって来たのは本来なら彼女が入る事は許されないサロンでの事だった。

ヴェディ達と合流するまでサロン付近にある庭で時間を潰そうとしたところまさかの登場である。


「まぁ……何時もとは全然雰囲気が違いますのね、シャグラスさん。貴女お得意の涙目は如何しましたの?」


そしてこの娘が何時もと違うのはすぐ分かった。

何時もはプルプルと震えながら涙目になりそれでもいうことは言う、というのが男のツボなのか割とわざとらしくそれをやってる節もある。

男には好評でもこちらは壺で殴りたいレベルに腹立つので辞めて欲しかったのだがまさかふたりきりの場所で辞められるとは思わなかった。


「当たり前です。もうアリス様は怖くないもの。プライス様は言ってくださいました。

私のことを愛している。って。

いいんですか、アリス様。そうやって怒ってばっかだとプライス様にすら見放されちゃいますよ。」



アリスはすぅっと目を細めながら扇子を口元に当てた。その姿はペディアや他の者から見たら結構な威圧感のある姿である。

しかしアリス、内心全く威圧感なんてものはなかった。



ちょっとまって、色々突っ込みたいこと多すぎない?


プライス様の事を突っ込むべきなのか

婚約段階の女性がいるのに他の女性を口説いた婚約者に突っ込むべきか

プライス様“ にすら ”見放されるっていうワードに突っ込むべきか


ツッコミ所満載すぎて一瞬言葉もなかった。


しかしこれで動揺する姿を見せるのはアリスのプライドが許さなかったので大げさに溜息をつき、呆れを前面に出した表情を作る。


「……怒りを通り越して呆れすら覚えますわ。もう何処から正せばいいかすら分かりません。」


「正すってなんですか。全部本当の事です。プライス様は確かに愛を説いてくださいましたし、周りの方ももうアリス様と一緒にいないじゃありませんか。アリス様、もう一度言います。もう怒らないでください。プライス様もアリス様が怒ってられることを悩んでいますし、私は私でちゃんとやります。このままだとアリス様本当に一人になっちゃいますよ。」



そもそもお前が全ての原因だろ!?と思わなくもない。アリスだって進んでこの女と関わりたくなかった。

確かにアリスとそれなりに仲良くしていた面々はもうアリスと共にいない。一々目くじらを立てる女より全てを許容して貴族として接しない彼女の方に行ったのだろう。


そう言えば彼らはペディアは貴族じゃなくて自分個人と接してくれたんだと言っていた。男のツボってよくわからない。



「やらねばならぬ事をやって1人になるのでしたら、大いに結構。ですがこういう時にいう言葉はこれじゃありませんわね。


身の程を知りなさい小娘。貴方は地位、学力、年齢全てにおいて私を下回るのですよ。貴方の行動は無礼極まりない。

そもそも私は貴方にファーストネームを呼ぶことすら許した覚えはありません。貴族の中にいるのなら貴族らしくふるまいなさい。私は貴方にそう言いましたわ、ペディア・シャグラス。

ですが貴方が優しく教えようと厳しく教えようと直らないから何度も言ってるのですよ。

ちゃんとやりますから?


今でさえちゃんと出来ていない小娘が何をほざくのです。戯言を叩くのもいい加減になさい。」



しかし流石のアリスもここまで馬鹿にされては黙っていられなかった。

婚約者には後で確認をとるとして今はこの娘に少し八つ当たりをしたくなってきた。

八つ当たりというかそんなに言うならお前の言う通りにしてやろうか。という気分だ。


声を低くし、少し胸を貼り低身長のペディアを下に見ながら左を腰に、右手を胸に添えアリスの持つ容姿を全て“ 威圧 ”へと結びつける。


上品に化粧を施された顔は睨むわけでも微笑むわけでもなく、ただ無。

まるで無機質な陶器人形に見つめらるようななんとも言えぬ怖さを感じたペディアは少し後ずさった。


「言葉も無いようで結構。貴方は随分と私の発言を捏造するのがお好きのようね。そして何を言っても泣く、私が行動をしてはビクビクと怯える、声をかけただけで泣かれた時は私どうしようかと思いましたわ、ねぇ?


こういう泣いて喚いて自分は頑張ってるのに怒られて可哀想と叫ぶ方をなんて呼ぶんでしたか。あぁ少し思い出せないわ。

シャグラス様はご存知?こういう人間をなんて呼ぶのか。」


わざとらしく頭に手を当てて思い出すふりをしながら目線だけをペディアへ向ける。

ペディアは背筋が冷えていくのを感じながらなけなしのプライドを保ち、アリスを煽るように答えた。


「学力も何もかも私より上なんですよね?なんで学力が下の私に聞くんですか?」


「あらやだ、それはそうね。私ったら。

そうよね、貴女に聞いたってわかるはずもありませんわね。


昔から厄介な人程自分がなんて呼ばれるか気にしないって言いますものね。 」



面白そうにコロコロと笑いながら扇子で口元を隠しながら近付き、コツ、コツとわざと音を立ててペディアを壁へと追い込む。


「あぁ、思い出しましたわ。そう、私とした事がなんで忘れてしまってたのかしら。」


その声はまるで蛇のようにペディアへと絡みつき、首を締めた。

人を拘束するかのような重い、ねっとりとした声。

今まで味わった事もない重圧感にペディアは軽く混乱していた。


あれ。この人って貴族のプライドばかり高くて、普段怒ってばっかで、婚約者に見捨てられた可哀想な人じゃなかったっけ、何でこんなに怖いんだろうこんなの何時もの独りぼっちの可哀想な人じゃない。

普段バカにしながら怒って来た煩いアリスからは想像が付かないほど目の前の女性は恐ろしい。

まるでメドューサのよう。


何時もは怒られながらも独りぼっちの癖に。と心の中で見下せる余裕をもてたのだ。


しかしまだペディアは気付かない、目の前の女性がどれほど恐ろしいかを。


「こういう方を悲劇のヒロインって言うのよね。

ねぇシャグラス様、貴女悲劇のヒロインみたいね。あぁそう、これよ。貴方にピッタリの呼び方だわ。」



「っ馬鹿にして!!!」



「あらなんで怒られたのかしら。怖い怖い。駄目よシャグラス様。悲劇のヒロインなら怒らずに「なんでそういう事言うのですか」って涙ぐんでぎゅっとスカートを握りしめる所でしょう。ほら、早くスカートを握りしめたらいかが?


全く、そんな事も分からないなんてやはり教養というものが無いのね。昔の小説を読めば悲劇のヒロインなんて沢山いるわ。貴方と将来を約束した方は王権からは遠いけれど仮にも王族様。

読書位しなきゃ駄目よ、シャグラス様。」



ふふっと笑ってペディアと目を合わせれば顔を真っ赤にして唇を噛み締めていた。

恥ずかしいのか怒りなのか分からないが顔が真っ赤な様子をアリスはまた「林檎みたいで可愛らしいわよ」とからかう。ペディアは完全にアリスを怒らせてしまっていた。


今までは情けを掛けていたのだがアリスももう我慢ならない。

ここでアリスがまた何時ものように行ったところでコイツは付け上がるだけだ。と感じたアリスはもう腹をくくることにした。


「そうやって私の事をバカにしていられるのも今のうちですよ。

分からないんですか?貴女なんて私がプライス様に一言いえば明日にだって婚約破棄されますよ。」


「あらあら、別に私は構わないわよ。

あの男が欲しいなら持っていきなさいな。


その程度で私が貴方に怯えると思って?」


ぐっと震える声を抑え、反論してきたジャグラスは顔は真っ赤、手はドレスを握りしめまさに小動物のようだ。

少し加虐心が湧いた気がするがそっと心の奥にしまいドレスを翻す。



「ごきげんようジャグラス様。

1つ、お忘れにならない事ね。


貴方が私に何をしようと、貴方が私より優位に立つ事は有り得ないわ。」



笑いながら睨みつけてみればキッとペディア・ジャグラスの眉も釣り上がる。

ただしアリスは先程のシャグラスの発言でとても、というかかなり気になってることがあった。急いでこれは確認しなければ、とサロンへ走りたい気持ちを抑え、堂々と、そして優雅に歩みを進めた。

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