頭痛の原因とは
4話の婚約破棄まで友人たちをお楽しみください
「あらあら、いつ私がシャラグス家を蔑むような発言をしまして?シャラグス男爵令嬢、ココ最近あなたを見てきましたけれど貴女少し勘違いが過ぎるようね。人の発言をしっかりと聞き入れ理解する努力をなさい。」
少し言い方がキツかったかもしれないが正直なところこの小娘をぶん殴りたいレベルにイラついているのでこれでも優しくしているのだ。
周りにこんなにギャラリーがいなかったら多分殴っていた。
「仰ったじゃありませんか!男爵家程度の家ならばマナーがなってないのも仕方がありませんが少しは貴族らしくなさいって!恥ですよって!確かにアリス様のような公爵家から見たら義父も義母も下に見えるかも知れません!けれど優しくて素敵な人達です!」
そしてこの娘何がタチ悪いかというと発言を捏造するのだ。
頭血が登ると勝手に発言に付属品をつけ始める。
「私は貴方がマナーなど分からない。社交界など言ったこともないと仰ったから“ 男爵令嬢でしたらあまり社交界に出ないのも納得です。それならば仕方ありませんが貴方は今貴族としてこの学院にいるのです。ならばしっかりと学びなさい。貴方の評判は男爵に付いて回るのですよ。貴方だって進んで恥をかきたくないでしょう”。と言ったのです。そして私はこの前も言ったはずですわシャラグス男爵令嬢。声を荒らげるのははしたない、と。」
キッと私を涙目で睨みつけるペディアは余程私が口出しするのが嫌なのだろう。
何かと私の発言を捏造して言いふらすので最近は私が庶民から引き取られた男爵令嬢如きが貴族学院に入ったことが気に入らなくて突っかかってる公爵令嬢扱いだ。
「まぁまぁ、落ち着いて。アリスもそんなにきつく言わなくても、ね?」と2人の間に割って入ってきたのはアリスの婚約者であるプライスの幼馴染、ナインロッドだった。まぁ彼も彼女の味方なので大方涙目になったペディアを見てられなくなったのだろう。彼を皮切りにペディアの取り巻きが彼女を囲む。
その取り巻きにはアリスの婚約者も幼馴染もよく話していた者達で構成されていた。ただただアリスは呆れるばかりである。
これが婚約者とは情けない、と踵を返したところでアリスはしっかりと見た。涙目ながらに独りのアリスを嘲笑ったペディアの口元を。
「で、どうだったんですか?」
「頭が痛いわあの馬鹿婚約者。」
「やだ、まだ婚約破棄してなかったの?」
貴族学院の離れにあるサロンの一室でアリスはとても大きなため息をついた。
その横にいるのは金髪碧眼、まさに王子様を描いた容姿の持ち主とこれまたアジアンビューティと言える褐色黒髪の女口調をした男性達である。
「アリス、いい加減婚約者殿の方に注意を入れた方がいいのでは? 流石に甘やかしすぎと言いますか……」
「そうね、私もそう思うわ。さっさとあのお綺麗な顔に扇子ぶん投げてやりゃ良いのよ。大体婚約者放ったらかしで女にかまけた挙句その女をデレデレに甘やかしてるってどういうこと?馬鹿なの?」
口々にプライスを酷評していく彼らはこう見えても両隣国の王子と大規模商家の跡取りである。
王子様フェイスであるヴェディハットも、褐色アジアンビューティなハラメスも、女子生徒に四六時中追われる身なので毎回ある程度の爵位を持たないと予約どころか入ることすら出来ないサロンに逃げ込み使用人たちまで追い出して2人で今日は疲れたのあの令嬢には気を付けろだの情報交換ないしお喋りをしている。
まぁ王子と言ってもヴェディハットは王権からはかなり遠いそうだが。
そしてさっきの一連で気分を害したアリスは突然そこにお邪魔した。
ほんとに突然だったというのにムスっとした顔で入ってきたアリスに椅子を貸し、お茶を出し、お菓子を出してくれた彼らには感謝しかない。数少ない誑かされなかった友人達なのだ。
「正直本当に扇子叩きつけてやりたいのよ。はぁぁぁ……、疲れるわ……あのじゃじゃ馬どう乗りこなしたらいいのかしら……」
額に手を当てて顔に疲労の色を滲ませているアリスは見ていて少し痛ましい。
本来ならアリスは悪役令嬢というよりは陶器人形のような女性なのだ。
透けるような薄い色の金髪に白い肌、折れそうな程細い腰に長い手足、爪まで磨かれた彼女の長い指は動かしただけで人を魅了するようだった。
ペディアが庇護欲を煽るならばアリスは征服欲を煽る。どちらにしても美人なのだ。
「それにしても貧乏くじよねぇ。あんな男の婚約者な上にじゃじゃ馬っ娘の面倒迄見なきゃなんだもの。」
「アリス、微力ではありますが私達も協力いたします。だからどうか一人で抱え込まないで。なんでも言ってくださいね」
そう言って彼らはthe王子様フェイスをふんだんに使ってアリスを慰めた。
キラキラと周りにエフェクトがかかるレベルの王子様スマイルのヴェディハットもアジアンビューティで端麗なイケメンスマイルのハラメスもいずれ権力者になる者という点では同じだと言うのになぜこうも違うのか。
「貴方と同じ王族なのになんでプライス様ってああなのかしら。ただ私とそりが合わなかっただけかしらね?」
そう、アリスの婚約者であるプライスも王権から少し遠い王族なのだ。
だがそのプライスはこの2人に比べるとなぜああも情けなく見えてしまうのだろう。
「それで、これからどうするの?もう私の名前出してもいいのよ?あの馬鹿王子だってほかの女に構い倒してるんだもの、アリスはアリスで私と仲良くしましょ?ね?」
そういってスッと私の腰を抱いてくるハラメスは流石一夫多妻ドンと来いの熱砂有数の大規模商家の跡取りである。
隙あらば口説いてくるが最近はそれも仲の良い相手にしかしない冗談だと分かってきた。
「ハラメス。その手を離しなさい焼きますよ」
「そうよハラメス。さっさとこの手退かさないと貴方ヴェディハットに焼かれるわよ。さっきの授業で軒並み練習台が焼き払われたの見てたわ私。あの焼き加減はウェルダンね。肉汁すら許されないわよ。」
「なーんでこの子私が口説いてんのに顔を赤らめるどころか呆れ顔な上に焼き加減の話になるのかしら。あと剣しまいなさいよヴェディハット。」
アリスにはこういう風にじゃれ合える友達も数少ない。そもそもアリスはこんなにボロを出すタイプじゃなかったがこの2人に当てられてしまった。アリスの口が悪くなったのもこの二人のせいな気がしなくもない。
そしてヴェディハットは炎を纏うの剣を鞘に収め、またハラメスとギャーギャー騒ぎ出していた。
「まぁそれはそれとして。もう婚約破棄にまで持ってっちゃったら?あんなのと結婚してもきっと貴方が大変なだけよ。」
「貴方は勇敢で美しい。私はまだ覚えています。貴方が剣を持った私に対しても堂々と立ち向かってきたことを。あの強さを持った貴方をあんなののせいで失いたくないのですよ。」
「それはヴェディが貴族学院の事知らなかったから。本当はあの時滅茶苦茶怖かったわよ。」
そもそもハラメスやヴェディハットとの出会いもまた変なものだった。
剣技の授業で扱う高価な練習台を軽々とへし折っていく彼に教師達も頭を悩ませていたが、かと言って軒並み練習台を吹っ飛ばしていくゴリラ剣士を注意するのも容易くない。
そこで当てがわれたのが私だった。
剣を振り回す彼に「その練習台は高価だから吹っ飛すのは辞めてほしい。物は長く使ってこそです。」というのは私もかなりの勇気を持って言った。実際はすぐ聞き入れてくれるような優しい人だったけれども。
ただし聞き入れたはもらえたが力加減をよくミスる彼は未だ高価な練習台を吹っ飛ばしている。
ハラメスは意気投合したヴェディハット繋がりで仲良くなった。もともとハラメスの国に興味があった私はすぐに仲良くなれたが。
「どうにかするしかないわね。婚約者様のついでにあのじゃじゃ馬の根性も叩き直さなきゃ……」
「そぉねぇ。ま、もし婚約破棄されたら私の元へ嫁いできなさいよ。アリスなら特別扱いしちゃうわ!衣食住全部ばっちりよ!なんならアリス好みの優良物件も紹介するわ!」
「その時は私もアリスについて行きますからねハラメス。」
「あんたは来なくていわよゴリラ王子。私とアリスの邪魔しかしないでしょ」
「当たり前でしょうが!」
こうしてまた一日を終えていくのだがあのじゃじゃ馬娘の根性を叩き直すなんていう甘い考えは次の日にすぐぶっ壊れた。
「私、プライス様が可哀想です。なんでアリス様はプライス様を縛られるのです?何故注意ばかりされるのです?あんなに行動を制限されるなんて可哀想!いくら婚約者でもやっていい事と悪いことがあると思います!」
やはり引っぱたいてやろうかこの小娘